フィリピンの税制を完全解説。個人所得税(最高35%)、法人税(25%)、VAT(12%)の税率・申告方法・日比租税条約の活用法を2026年最新情報で紹介。
この記事のポイント
- フィリピンの個人所得税は6段階の累進課税(0%〜35%)、年収250,000 PHP(約664,900円) 以下は非課税
- 法人税は25%(中小企業は20%の優遇税率あり)
- VAT(付加価値税)は12%、年間売上3,000,000 PHP(約7,978,800円) 以下は免税事業者
本記事はBIR(内国歳入庁)の公式情報およびTRAIN法(2026年3月確認)に基づいています。
個人所得税(PIT)
税務居住者の定義
フィリピンに183日以上滞在する外国人は税務居住者(Resident Alien)となり、フィリピン国内源泉所得に対して所得税が課されます。非居住者(183日未満)も国内源泉所得には課税されます。
TRAIN法に基づく税率表(2023年以降)
| 課税所得(年間) | 税率 |
|---|---|
| 250,000 PHP(約664,900円) 以下 | 0% |
| 250,001 PHP(約664,903円) 〜400,000 PHP(約1,063,840円) | 超過分の15% |
| 400,001 PHP(約1,063,843円) 〜800,000 PHP(約2,127,680円) | 22,500 PHP(約59,841円) + 超過分の20% |
| 800,001 PHP(約2,127,683円) 〜2,000,000 PHP(約5,319,200円) | 102,500 PHP(約272,609円) + 超過分の25% |
| 2,000,001 PHP(約5,319,203円) 〜8,000,000 PHP(約21,276,800円) | 402,500 PHP(約1,070,489円) + 超過分の30% |
| 8,000,000 PHP(約21,276,800円) 超 | 2,202,500 PHP(約5,857,769円) + 超過分の35% |
源泉徴収
雇用所得は雇用主による月次源泉徴収が義務付けられています。年末調整はBIR Form 2316で行います。
法人税(CIT)
通常法人税率
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 通常法人 | 25% |
| 中小企業(課税所得5,000,000 PHP(約13,298,000円) 以下かつ総資産100,000,000 PHP(約265,960,000円) 以下) | 20% |
| 外国法人(フィリピン支店) | 25% |
MCIT(最低法人税)
通常の法人税額がMCIT(総収入の2%)を下回る場合、MCITが適用されます。設立4年目以降の法人が対象です。
CREATE法による優遇
2021年のCREATE法(RA 11534)により、法人税率が30%から25%に引き下げられました。PEZA登録企業やBOI登録企業には追加の優遇措置があります。
VAT(付加価値税)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準税率 | 12% |
| 免税基準 | 年間売上3,000,000 PHP(約7,978,800円) 以下 |
| 申告頻度 | 月次(BIR Form 2550M)+ 四半期(BIR Form 2550Q) |
VAT免税取引
- 農業・海洋食料品の販売
- 教育サービス
- 個人住宅の賃貸(月額15,000 PHP(約39,894円) 以下)
- 書籍・新聞の販売
VAT還付
輸出取引(ゼロ税率)を行う事業者は、仕入VATの還付を申請できます。還付手続きには120日(BIR処理)+30日(裁判所への上訴期間)のタイムラインがあります。
源泉徴収税
| 所得の種類 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|
| 給与所得 | 累進税率 | 月次源泉徴収 |
| 利子所得 | 20% | 最終源泉税 |
| 配当所得(居住者) | 10% | 最終源泉税 |
| ロイヤルティ | 20% | 最終源泉税 |
| 専門サービス報酬 | 5%〜15% | 拡大源泉税 |
日比租税条約の活用
日本とフィリピンの間には租税条約が締結されており、二重課税の防止が図られています。
| 所得の種類 | 条約上の上限税率 | 国内法の税率 |
|---|---|---|
| 配当(25%以上出資) | 10% | 25% |
| 配当(25%未満出資) | 15% | 25% |
| 利子 | 10% | 20% |
| ロイヤルティ | 15% | 25% |
条約の適用にはBIRへのTax Treaty Relief Application(TTRA)の事前申請が必要です。
日本人が知っておくべき注意点
申告義務
フィリピンで所得がある日本人は、毎年4月15日までに確定申告(BIR Form 1700/1701)を行う必要があります。eFPS(Electronic Filing and Payment System)でのオンライン申告が可能です。
日本での申告との関係
日本の税務居住者でもある場合、フィリピンで納付した税額は外国税額控除として日本の所得税から控除できます。
ペナルティ
| 違反内容 | ペナルティ |
|---|---|
| 申告遅延 | 未納税額の25% |
| 過少申告 | 未納税額の50% |
| 脱税 | 禁固6〜10年 + 罰金 |
よくある質問(FAQ)
Q1: フィリピンで日本の年金を受け取る場合、フィリピンで課税されますか?
日比租税条約により、日本の公的年金はフィリピンでは非課税です(日本でのみ課税)。ただし、企業年金は条約の適用が異なる場合があるため、個別確認が必要です。
Q2: フィリピンの確定申告はいつまでですか?
毎年4月15日が申告・納税期限です。四半期所得税の予定納税(BIR Form 1701Q)は各四半期末の翌月60日以内です。
Q3: フィリピンに住民税はありますか?
フィリピンには日本のような住民税はありません。ただし、事業者は地方自治体に対して事業税(Local Business Tax)を支払う必要があります。税率は地域により0.5%〜2%です。
Q4: 仮想通貨の利益はフィリピンで課税されますか?
BIRは仮想通貨取引から生じる所得を課税対象としています。個人の場合は通常の所得税率、法人の場合は法人税率が適用されます。
Q5: PEZA登録企業の税制優遇はどのようなものですか?
PEZA登録企業は、法人税の4〜8年間の免税(Income Tax Holiday)後、総収入の5%の特別税率(通常の法人税・地方税に代替)が適用されます。CREATE法による改正で優遇期間が変更される場合があります。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- BIR公式サイトでの税率・申告書様式の確認
- eFPSアカウントの作成と基本的な申告
- 日比租税条約の適用可否の事前確認
専門家に相談すべきこと:
- 移転価格税制への対応(関連会社間取引がある場合)
- PEZA/BOI登録と税制優遇の最適活用
- 日比間の税務プランニングと外国税額控除の計算
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