ベトナムの税制を完全解説。個人所得税(PIT: 5〜35%)、法人税(CIT: 20%)、VAT(10%)の税率、申告方法、日越租税条約の活用法まで2026年最新情報。
この記事のポイント
- ベトナムの個人所得税(PIT)は**7段階の累進課税(5%〜35%)**で、日本より最高税率が低い
- 法人税(CIT)は**20%**で、ASEAN圏で競争力のある水準
- VAT(付加価値税)は10%(標準税率)、一部の業種は5%の軽減税率
本記事はベトナム税務総局(GDT)および関連法令の公式情報(2026年3月確認)に基づいています。
個人所得税(PIT)
税務居住者の定義
以下のいずれかに該当するとベトナムの税務居住者となります。
- ベトナムに183日以上滞在(連続12ヶ月間)
- ベトナムに恒久的住所を持つ(在留カードまたは賃貸契約183日以上)
税率表(居住者・給与所得)
| 課税所得(月額) | 税率 |
|---|---|
| 5,000,000 VND(約30,500円) 以下 | 5% |
| 5,000,001 VND(約30,500円) 〜10,000,000 VND(約61,000円) | 10% |
| 10,000,001 VND(約61,000円) 〜18,000,000 VND(約109,800円) | 15% |
| 18,000,001 VND(約109,800円) 〜32,000,000 VND(約195,200円) | 20% |
| 32,000,001 VND(約195,200円) 〜52,000,000 VND(約317,200円) | 25% |
| 52,000,001 VND(約317,200円) 〜80,000,000 VND(約488,000円) | 30% |
| 80,000,000 VND(約488,000円) 超 | 35% |
非居住者の税率
非居住者(183日未満の滞在)は、ベトナム源泉所得に対して一律**20%**が課されます。
所得控除
| 控除項目 | 月額控除額 |
|---|---|
| 基礎控除 | 11,000,000 VND(約67,100円) |
| 扶養控除(1人あたり) | 4,400,000 VND(約26,840円) |
| 社会保険料 | 給与の10.5%(上限あり) |
| 慈善寄付金 | 実費 |
法人税(CIT)
標準税率
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 標準法人税 | 20% |
| 石油・ガス | 32%〜50% |
| 鉱業 | 40%〜50% |
優遇税率
| 対象 | 税率 | 期間 |
|---|---|---|
| ハイテク産業 | 10% | 15年間 |
| 経済特区・工業団地 | 10%〜17% | 10〜15年間 |
| 社会住宅 | 10% | 事業全期間 |
| ソフトウェア開発 | 10% | 15年間 |
さらに、Income Tax Holiday(ITH)として、事業開始後の2〜4年間は法人税免除、その後4〜9年間は50%減税の優遇措置があります。
移転価格税制
関連会社間取引(出資比率25%以上等)には移転価格税制が適用されます。年間売上50,000,000,000 VND(約305,000,000円) 超の企業は移転価格文書(TP Documentation)の作成が義務付けられています。
VAT(付加価値税)
税率
| 税率 | 対象 |
|---|---|
| 10%(標準) | 大半の商品・サービス |
| 5%(軽減) | 農産物、医薬品、教育サービス等 |
| 0%(ゼロ税率) | 輸出品、国際運輸 |
| 非課税 | 土地使用権の譲渡、保険、金融サービス |
申告方法
| 区分 | 申告頻度 | 対象 |
|---|---|---|
| 月次申告 | 毎月20日まで | 年間売上50,000,000,000 VND(約305,000,000円) 超 |
| 四半期申告 | 各四半期末の30日後まで | 年間売上50,000,000,000 VND(約305,000,000円) 以下 |
源泉徴収税
国内取引
| 所得の種類 | 税率 |
|---|---|
| 利子 | 5% |
| ロイヤルティ | 5% |
| 技術サービス | 5% |
外国契約者税(FCT)
ベトナムに拠点を持たない外国企業がベトナムで収入を得る場合、FCT(Foreign Contractor Tax)が課されます。
| サービス種類 | CIT相当分 | VAT相当分 |
|---|---|---|
| サービス全般 | 5% | 5% |
| 建設・据付 | 2% | 3% |
| ロイヤルティ | 10% | — |
| 利子 | 5% | — |
日越租税条約の活用
| 所得の種類 | 条約上の上限税率 | ベトナム国内法 |
|---|---|---|
| 配当 | 10% | 非居住者: 20% |
| 利子 | 10% | 5% |
| ロイヤルティ | 10% | 10% |
条約適用にはベトナム税務当局への事前届出と居住者証明書(Certificate of Residence)の提出が必要です。
申告・納付の実務
個人所得税
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 月次源泉徴収(雇用主) | 翌月20日まで |
| 年次確定申告 | 翌年3月末まで |
| ファイナリゼーション(年末調整) | 翌年3月末まで |
法人税
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 四半期予定納税 | 各四半期末の30日後まで |
| 年次確定申告 | 事業年度終了後90日以内 |
| 監査報告書提出 | 事業年度終了後90日以内 |
日本人が知っておくべき注意点
税務ファイナリゼーション
ベトナムの税務ファイナリゼーション(年末調整)は雇用主が行う場合と個人が行う場合があります。複数の所得源がある場合や、年度途中の入退社がある場合は個人での確定申告が必要です。
税務コードの取得
ベトナムで所得がある外国人は、税務コード(Mã số thuế / Tax Code)の取得が必要です。雇用主を通じて取得するのが一般的です。
電子申告
ベトナムでは電子申告(eTax)が普及しており、法人は電子申告が義務付けられています。個人の確定申告もオンラインで行えます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 日本の年金をベトナムで受け取る場合、課税されますか?
日越租税条約により、日本の公的年金はベトナムでは非課税です(日本でのみ課税)。ただし、ベトナムの税務居住者として他の所得と合算される解釈もあるため、専門家への確認を推奨します。
Q2: ベトナムに住民税はありますか?
ベトナムには日本のような住民税はありません。ただし、個人事業主は事業税(Business License Tax)として年間300,000 VND(約1,830円) 〜1,000,000 VND(約6,100円) を支払う必要があります。
Q3: 外国人も社会保険に加入する必要がありますか?
はい、2018年以降、ベトナムで就労する外国人も社会保険(社会保険8%、健康保険1.5%、失業保険1%)への加入が義務付けられています。
Q4: ベトナムの税務調査はどのくらいの頻度で行われますか?
法律上は年1回の税務調査が可能ですが、実務上は2〜3年に1回程度です。ただし、FDI企業(外国投資企業)は重点的に調査される傾向があります。
Q5: 仮想通貨の取引はベトナムで課税されますか?
ベトナムでは仮想通貨の法的位置づけが未確定ですが、仮想通貨取引から生じる所得は個人所得税の課税対象とされる可能性があります。明確なガイダンスが出るまで、所得として申告することが安全です。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- GDT公式サイトでの税率・申告書様式の確認
- 税務コードの取得(雇用主経由)
- 日越租税条約の基本条項の理解
専門家に相談すべきこと:
- 移転価格文書の作成
- 税務調査への対応
- 日越間の二重課税回避戦略
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