海外に移住した日本人向けに、日本の年金制度(国民年金・厚生年金)の任意加入、海外からの受給手続き、脱退一時金の申請方法を2026年最新情報で解説。
この記事のポイント
海外移住後も日本の年金は受給できます。ただし、転出届を出すと国民年金の強制加入から外れるため、任意加入の手続きをしないと将来の受給額が減る可能性があります。また、日本に戻る予定がない外国籍の方や短期滞在者は脱退一時金を請求できます。本記事では、海外居住者が知っておくべき年金の手続き・受給方法・社会保障協定の活用法を解説します。
海外移住と日本の年金制度の関係
転出届を出した場合の影響
日本から海外に転出届を提出すると、国民年金の第1号被保険者の資格を喪失します。ただし、日本国籍を有する20歳以上65歳未満の方は、任意加入被保険者として国民年金に加入し続けることが可能です。
厚生年金は企業が加入するため、日本企業から海外に駐在する場合は原則として継続されます。一方、現地採用で海外企業に転職した場合は厚生年金の資格を喪失します。
任意加入の手続き
海外居住中に国民年金に任意加入するには、以下の手続きが必要です。
| 手続き項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出先 | 最終住所地の市区町村役場または年金事務所 |
| 届出時期 | 転出届と同時が推奨 |
| 保険料 | 月額 16,980 JPY(約0円) (2026年度) |
| 納付方法 | 国内の協力者による口座振替、またはクレジットカード |
| 対象者 | 日本国籍を有する20〜65歳の海外居住者 |
任意加入しない場合でも、海外居住期間は**合算対象期間(カラ期間)**として受給資格期間(10年)に算入されます。ただし、年金額には反映されません。
海外からの年金受給手続き
受給開始の届出
65歳になって年金を受給する際、海外居住者は日本年金機構に直接請求します。在外公館での手続きは不要です。
受給に必要な書類は以下の通りです:
- 年金請求書(様式第101号)
- パスポートの写し
- 在留証明書(在外公館で取得)または居住国の住民登録証明
- 銀行口座情報(日本国内の口座または海外送金対応口座)
受取方法の選択
| 受取方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 日本国内の銀行口座 | 手数料なし | 海外で引き出す際に手数料 |
| 海外送金(海外口座) | 現地通貨で受取可能 | 送金手数料・為替リスク |
海外送金を選択する場合、対応している金融機関が限られるため、事前に年金機構に確認が必要です。ASEAN各国への送金は通常2〜4週間かかります。
現況届(生存確認)
海外居住の年金受給者は、毎年**現況届(生存確認届)**の提出が義務付けられています。在外公館で署名認証を受けるか、居住国の公的機関が発行する在留証明書を添付します。提出を怠ると年金の支払いが一時停止されます。
脱退一時金の制度
対象者と申請条件
脱退一時金は、日本の年金に6か月以上加入した外国籍の方が、日本を離れる際に請求できる制度です。2021年の法改正により、対象期間の上限が従来の36か月から**60か月(5年)**に拡大されました。
申請条件:
- 日本国籍を有しないこと
- 国民年金または厚生年金に6か月以上加入していたこと
- 日本に住所を有しないこと(転出届提出済み)
- 年金の受給権を有していないこと
- 最後に資格喪失してから2年以内に請求すること
脱退一時金の支給額(2026年度)
| 加入期間 | 国民年金の支給額(概算) |
|---|---|
| 6〜12か月 | 約 50,000 JPY(約0円) |
| 12〜18か月 | 約 100,000 JPY(約0円) |
| 18〜24か月 | 約 150,000 JPY(約0円) |
| 24〜36か月 | 約 200,000 JPY(約0円) |
| 36〜48か月 | 約 300,000 JPY(約0円) |
| 48〜60か月 | 約 400,000 JPY(約0円) |
厚生年金の脱退一時金は、加入期間中の平均標準報酬額に基づいて計算されるため、個人差が大きくなります。
社会保障協定の活用
ASEAN諸国との協定状況
日本は複数の国と社会保障協定を締結しており、年金加入期間の通算が可能です。ASEAN諸国との状況は以下の通りです。
| 国名 | 協定状況 | 期間通算 |
|---|---|---|
| フィリピン | 発効済み(2018年〜) | あり |
| インド | 発効済み(2016年〜) | あり |
| タイ | 未締結 | なし |
| マレーシア | 未締結 | なし |
| シンガポール | 未締結 | なし |
| ベトナム | 未締結 | なし |
| インドネシア | 未締結 | なし |
協定締結国に移住する場合、両国の年金加入期間を通算して受給資格を判定できます。例えばフィリピンの場合、フィリピンでの年金加入期間と日本の加入期間を合算して10年を満たせば、日本の年金受給資格を得られます。
詳しい税制面の影響については、日本の税負担とASEAN各国の比較も参照してください。
日本人が知っておくべき注意点
任意加入しないリスク
任意加入せずにカラ期間のみで受給資格を満たした場合、受給額が大幅に減る可能性があります。例えば、20〜40歳の20年間加入し、40〜65歳の25年間が海外在住のカラ期間だった場合、満額の約44%しか受給できません。
確定申告との関係
海外居住者が日本の年金を受給する場合、日本の所得税(20.42%)が源泉徴収されます。ただし、租税条約を活用すれば、源泉徴収税率が軽減される場合があります。「租税条約に関する届出書」を所轄税務署に提出してください。
海外移住前のチェックリスト
- 年金手帳・基礎年金番号を確認する
- ねんきんネットで加入期間と見込額を確認する
- 任意加入する場合は転出届と同時に届出する
- 国内の協力者(納付代理人)を指定する
- 海外転出時の手続き全般を確認する
よくある質問(FAQ)
Q1: 海外移住しても日本の年金は受け取れますか?
はい、受け取れます。海外に居住していても、受給資格期間(10年以上)を満たしていれば、65歳から日本の年金を受給できます。受取口座は日本国内の銀行口座または海外口座を指定できます。
Q2: 任意加入と脱退一時金、どちらが有利ですか?
日本国籍の方は脱退一時金を請求できないため、任意加入の検討が基本です。外国籍で日本に戻る予定がない方は脱退一時金が有利な場合もありますが、長期的には年金受給の方が総額で有利になることが多いです。加入期間が10年以上ある方は、脱退一時金を請求すると受給権を放棄することになるため、慎重に判断してください。
Q3: 社会保障協定がない国に移住する場合、二重加入になりますか?
協定がない国(タイ・マレーシア・シンガポールなど)に移住する場合、現地の社会保障制度と日本の年金制度に二重で加入する可能性があります。ただし、日本の国民年金は転出届提出後に任意加入となるため、加入しなければ二重加入は回避できます。
Q4: 海外で年金の繰上げ・繰下げ受給はできますか?
はい、海外居住者でも繰上げ(60歳〜)・繰下げ(66歳〜75歳)の選択が可能です。繰下げ受給の場合、1か月あたり0.7%増額されるため、75歳まで繰り下げると最大84%増額されます。
Q5: ねんきんネットは海外からも利用できますか?
はい、ねんきんネット(nenkin.go.jp)は海外からもアクセス可能です。マイナンバーカードまたは基礎年金番号でログインし、加入記録の確認や各種届出の電子申請ができます。ただし、一部の手続きは書面での郵送が必要です。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- ねんきんネットでの加入記録確認
- 任意加入の届出(市区町村窓口)
- 現況届の提出
専門家に相談すべきこと:
- 脱退一時金と年金受給の損益比較
- 租税条約を活用した源泉徴収税率の軽減手続き
- 海外不動産所得がある場合の確定申告との兼ね合い
年金制度は法改正が頻繁に行われるため、移住前に日本年金機構の最新情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士に相談することをおすすめします。
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