この記事のポイント

ベトナムのLLC(Công ty TNHH / 有限責任会社)は、外国人投資家がベトナムでビジネスを始める際の最も一般的な法人形態です。計画投資省(MPI)の公式情報に基づき、2026年3月時点の設立手順を解説します。

制限業種を除き100%外資での設立が可能で、法人税は20%です。設立には投資登録証(IRC)と企業登録証(ERC)の2段階の取得が必要で、合計15〜25営業日が目安です。

ベトナムの法人形態

LLC(Công ty TNHH / 有限責任会社)

最も一般的な外国投資企業の形態です。社員(出資者)は1〜50名で、外国人・外国法人がメンバーになれます。

株式会社(Công ty Cổ phần)

株主3名以上で設立。株式の発行・譲渡が可能で、将来の上場を目指す場合に適しています。

設立要件

項目要件
出資者1〜50名(LLC)。個人・法人いずれも可
法定代表者最低1名。ベトナム居住が望ましい
登記住所ベトナム国内の事業所住所
最低資本金一般業種:法定最低なし。業種別要件あり(不動産VND 200億、教育等)
外資比率制限業種以外は100%外資可能

外資規制の概要

ベトナムは投資法・企業法により、業種ごとに外資参入条件を定めています。

設立手順(2段階プロセス)

第1段階: 投資登録証(IRC)の取得(5〜15営業日)

IRC(Investment Registration Certificate)は、外国投資家がベトナムで事業を行うための投資許可証です。省レベルの投資登録機関(DPI: Department of Planning and Investment)に申請します。

必要書類:

第2段階: 企業登録証(ERC)の取得(3〜5営業日)

ERC(Enterprise Registration Certificate)は、企業としての法人格を取得するための登録です。ビジネス登録局に申請します。

必要書類:

合計所要期間: 15〜25営業日(標準的なケース)

設立後の手続き

設立費用

費目金額円換算(目安)
IRC申請手数料無料0円
ERC登録料VND 200,000約1,200円
法人印鑑VND 500,000〜1,000,000約3,000〜6,000円
法律事務所手数料USD 1,500〜5,000約225,000〜750,000円
会計事務所(年間)USD 500〜2,000約75,000〜300,000円
オフィス賃料(月額)USD 200〜1,000約30,000〜150,000円

※ 1 USD ≈ 150円、1 VND ≈ 0.006円(2026年3月時点)。

初年度の目安総額: USD 3,000〜10,000(約45〜150万円)

法人税制

項目税率・内容
法人税20%(標準)
VAT10%(標準)/ 5%(食品・教育等)
個人所得税(外国人)5〜35%(累進)
配当源泉税0%(ベトナム法人から個人への配当は非課税)

経済特区(SEZ)の優遇

工業団地やハイテクパーク内に設立した場合、法人税の優遇があります。

ASEAN他国との比較

項目ベトナム LLCタイ有限会社マレーシア Sdn Bhdシンガポール Pte Ltd
法人税20%20%24%17%
外資比率100%(多数業種)49%(原則)100%100%
設立期間3〜4週間2〜4週間1〜2週間1〜3日
最低資本金なし(業種別)なし(WP用THB 200万)RM 1SGD 1
配当非課税◎(0%)△(10%源泉)○(条件付)◎(0%)

詳細はASEAN法人設立比較ガイドをご覧ください。

日本人が知っておくべき注意点

ワークパーミットの取得

ベトナムで就労する外国人はワークパーミットが必要です。申請にはベトナム法人のスポンサー、犯罪経歴証明書、健康診断書等が必要です。詳細はベトナム労働許可証ガイドをご覧ください。

資本金の送金と払込

IRC記載の資本金は、期限内(通常90日以内)に海外から指定の資本金口座に送金する必要があります。送金記録は投資証明として重要です。

撤退の難しさ

ベトナムの法人清算は6ヶ月〜1年以上かかることがあります。税務調査が必須で、未払い税金や社会保険料の精算が完了するまで清算登記ができません。

よくある質問(FAQ)

Q1: ベトナムLLCは1人でも設立できますか?

はい、1人LLC(Công ty TNHH 1 thành viên)として設立可能です。個人でも法人でも出資者になれます。

Q2: 最低資本金はいくらですか?

一般業種には法定最低資本金はありません。ただし不動産業はVND 200億(約1.2億円)、教育業は別途要件があります。また、実務上はワークパーミット取得や信用力の観点からUSD 10,000〜50,000程度を設定するケースが多いです。

Q3: 日本の食品をベトナムで販売するビジネスはできますか?

可能です。輸入・小売業は外資100%で参入可能ですが、食品衛生登録や輸入許可など追加の許認可が必要です。また、小売業は1店舗目は自動承認ですが、2店舗目以降は経済需要テスト(ENT)が必要です。

Q4: ベトナムの生活費はどのくらいですか?

ホーチミンで月USD 1,000〜2,000程度で快適に暮らせます。詳細はベトナム生活費ガイドをご覧ください。

Q5: ベトナム法人の利益を日本に送金するときの税金は?

ベトナムでは法人から個人への配当に源泉税はかかりません(0%)。ただし、日本の個人として受け取る場合は日本の所得税・住民税の対象になります。

まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと

自分でできること: 事業計画の策定、業種の外資規制確認、現地視察・パートナー候補の選定

専門家に相談すべきこと: IRC/ERC申請書類の作成、投資構造の設計、ワークパーミット申請、税務コンプライアンス

確認すべきこと: 対象業種の外資参入条件、資本金の必要額、ワークパーミット取得の見通し

ベトナム 法人設立 LLC
※ この記事の情報は2026年3月19日時点のものです。最新情報は各国政府の公式サイトをご確認ください。当サイトは情報提供を目的としており、法的助言を行うものではありません。