ベトナムでの法人設立を完全解説。LLC(有限責任会社)とFDI(外国直接投資)企業の違い、100%外資可能な業種、投資登録証IRC・企業登録証ERCの取得手順、法人税20%、設立費用と期間まで2026年最新情報。
この記事のポイント
- ベトナムで外国人が法人を設立する場合、**投資登録証(IRC)と企業登録証(ERC)**の2段階の取得が必要。設立まで合計15〜25営業日が目安
- LLC(有限責任会社)はベトナムで最も一般的な法人形態。制限業種を除き100%外資での設立が可能
- 法人税率は標準20%。優遇地域・業種では10〜17%の軽減税率あり
- 2026年3月時点の最新情報。詳細はベトナム計画投資省(MPI)公式サイトをご確認ください
📌 この記事はベトナム計画投資省(MPI)および投資法2020年、企業法2020年の公式情報(2026年3月22日確認)に基づいています。
ベトナム法人設立の全体像
ベトナムは2020年に投資法(Luật Đầu tư)と企業法(Luật Doanh nghiệp)を同時に改正し、外国投資の手続きを大幅に簡素化しました。日本からの直接投資(FDI)は2024年に約70億ドルに達し、ベトナムは東南アジアでも最も日系企業の進出が活発な国の一つです。
FDI(外国直接投資)とは
FDI(Foreign Direct Investment)とは、外国の個人・法人がベトナム国内で出資・経営に直接参画する投資形態を指します。ベトナムの投資法では、外国投資家が出資する企業を「外国投資企業(FIE: Foreign-Invested Enterprise)」と定義し、国内企業とは異なる手続き(IRC取得)が求められます。
LLC(有限責任会社)とは
LLC(Công ty TNHH / Limited Liability Company)は、ベトナムで外国人が法人を設立する際の最も一般的な形態です。出資者は1〜50名で、出資額を限度とした有限責任を負います。
法人形態の比較
| 項目 | 1人LLC | 2人以上LLC | 株式会社(JSC) | 駐在員事務所 |
|---|---|---|---|---|
| 出資者数 | 1名 | 2〜50名 | 3名以上 | なし(親会社) |
| 外資100%可 | ○ | ○ | ○ | — |
| 株式発行 | × | × | ○ | × |
| 営業活動 | ○ | ○ | ○ | ×(調査・連絡のみ) |
| 将来の上場 | × | × | ○ | × |
| 設立難易度 | ★★☆ | ★★☆ | ★★★ | ★☆☆ |
日本との違い: 日本の合同会社(GK)は社員1名から設立可能で登記のみで完了しますが、ベトナムのLLCは投資登録証(IRC)+企業登録証(ERC)の2段階手続きが必要です。
外資規制(ネガティブリスト)
ベトナムの投資法では、以下の分類で外国投資を管理しています。
投資禁止業種(全面禁止)
- 麻薬関連物質の製造・取引
- 特定の化学物質・鉱物の製造
- 人体臓器の商業取引
- 売春関連事業
条件付き投資業種(外資比率制限あり)
| 業種 | 外資上限 | 備考 |
|---|---|---|
| 通信サービス | 49〜65% | サービス種別により異なる |
| 銀行・金融 | 30% | 1金融機関あたり |
| 航空運送 | 34% | ベトナム航空法に基づく |
| 広告サービス | 制限あり | WTOコミットメントに基づく |
| 物流サービス | 制限あり | 段階的に自由化中 |
| 教育・訓練 | 制限あり | 合弁が必要な場合あり |
100%外資が可能な主要業種
- 製造業(電子機器、機械、食品加工等)
- IT・ソフトウェア開発
- 貿易(輸出入業)
- コンサルティング
- 不動産開発(条件付き)
⚠️ 2020年投資法附属書IV(Phụ lục IV)に227業種の条件付き投資リストが掲載されています。自社の業種が該当するかは、必ず計画投資局(DPI)で事前確認してください。
設立手続き(6ステップ)
ステップ1: 投資登録証(IRC)の申請
申請先: 省・市レベルの計画投資局(DPI: Department of Planning and Investment)
必要書類:
- 投資申請書(所定フォーム)
- 投資家の身元証明書(パスポートコピー、法人の場合は登記簿謄本)
- 投資プロジェクト提案書(事業計画、投資額、雇用計画)
- 財務能力証明書(銀行残高証明、直近2年の財務諸表)
- 事務所賃貸契約書(または仮契約書)
処理期間: 15営業日
費用: 無料(政府手数料なし)
ステップ2: 企業登録証(ERC)の申請
申請先: 省・市レベルの事業登録局(Business Registration Office)
必要書類:
- 企業登録申請書
- 定款(Điều lệ công ty)
- 出資者リスト
- IRC(ステップ1で取得したもの)
- 法定代理人の身元証明書
処理期間: 3営業日
費用: 無料(政府手数料なし)
ステップ3: 印鑑の作成
2021年以降の企業法改正により、法人印鑑のデザインは企業が自由に決定できます。公安局への届出は不要になりました。
費用: 500,000 VND(約3,051円) 〜1,000,000 VND(約6,102円)
ステップ4: 銀行口座の開設
ERC取得後、ベトナム国内の銀行で法人口座を開設します。主要銀行は以下の通りです。
- Vietcombank: 国営最大手。外資企業の取扱実績が豊富
- BIDV: 国営。日系企業との取引多い
- Techcombank: 民間大手。オンラインバンキングが充実
- HSBC Vietnam: 外資系。英語対応◎
ステップ5: 税務登録
ERC取得後30日以内に税務局へ登録が必要です。ERC番号がそのまま税番号(MST: Mã số thuế)として使用されます。
ステップ6: 社会保険登録
従業員を雇用する場合、社会保険局への登録が必要です(雇用開始から30日以内)。
設立費用の目安
| 項目 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| IRC申請 | 無料 | 政府手数料なし |
| ERC申請 | 無料 | 政府手数料なし |
| 印鑑作成 | 500,000 VND(約3,051円) 〜1,000,000 VND(約6,102円) | デザインにより変動 |
| 事務所賃料(デポジット) | 5,000 USD(約795,166円) 〜15,000 USD(約2,385,496円) | ハノイ・HCMCの場合 |
| 法律事務所費用 | 3,000 USD(約477,099円) 〜8,000 USD(約1,272,265円) | 代行手続き一式 |
| 合計目安 | 8,000 USD(約1,272,265円) 〜25,000 USD(約3,975,827円) | 事務所賃料含む |
最低資本金
ベトナムには原則として法定最低資本金はありません。ただし、以下の業種では最低資本金が設定されています。
| 業種 | 最低資本金 |
|---|---|
| 不動産業 | 20,000,000,000 VND(約122,040,000円) (約800,000 USD(約127,226,480円) ) |
| 銀行 | 3,000,000,000,000 VND(約18,306,000,000円) (約120,000,000 USD(約19,083,972,000円) ) |
| 教育訓練 | 2,000,000,000 VND(約12,204,000円) 〜(種別による) |
💡 実務上のアドバイス: 最低資本金の規定がなくても、事業内容に見合った資本金を設定しないとIRC申請が却下される場合があります。一般的に、IT・コンサルティング企業でも最低10,000 USD(約1,590,331円) 程度の資本金が推奨されます。
税制の概要
法人税(CIT: Corporate Income Tax)
| 項目 | 税率 |
|---|---|
| 標準税率 | 20% |
| 優遇税率(ハイテク産業・特定経済区) | 10%(15年間) |
| 優遇税率(ソフトウェア開発等) | 10%(永久) |
| 優遇税率(社会住宅等) | 10% |
| 中間優遇税率 | 17%(10年間) |
免税・減税期間:
- 最大4年間の法人税免除
- その後最大9年間の50%減税
日本との比較: 日本の法人実効税率(約30%)と比較すると、ベトナムの標準20%は約10ポイント低い水準です。さらに優遇税率が適用されれば10%まで下がる可能性があります。
付加価値税(VAT)
- 標準税率: 10%(2026年は8%の一時引き下げ措置が一部品目で適用)
- 軽減税率: 5%(食料品、医薬品、教育サービス等)
- 非課税: 農業、医療、金融等
個人所得税(PIT)
外国人従業員の個人所得税は累進課税で、最高税率は35%(年収VND 8,000万超の部分)です。ベトナムに183日以上滞在する場合は居住者として全世界所得に課税されます。
日本人が知っておくべき注意点
投資証明書の「出資期限」
IRCに記載された出資スケジュール通りに資本金を払い込まないと、IRC取消しのリスクがあります。日本からの送金は銀行手続きに時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを設定してください。
土地使用権
ベトナムでは土地は国家所有であり、外資企業は「土地使用権」のリース(最長50年、延長可能)で利用します。工業団地への入居が一般的です。
労働許可証(Work Permit)
外国人がベトナムで就労する場合、労働許可証(Giấy phép lao động)の取得が必要です。法定代理人であっても原則必要で、申請には無犯罪証明書(本国発行)等が必要です。
移転価格税制
ベトナムは移転価格税制を厳格に運用しており、関連者間取引がある場合は移転価格文書の作成が義務付けられています。日本の親会社との取引がある場合は特に注意が必要です。
他の選択肢との比較
ASEAN主要国の法人設立比較
| 項目 | ベトナム LLC | マレーシア Sdn Bhd | シンガポール Pte Ltd | タイ Thai Ltd |
|---|---|---|---|---|
| 外資100% | ○(制限業種除く) | ○ | ○ | △(要BOI承認) |
| 最低資本金 | なし(実務的に必要) | 1 MYR(約40円) 〜 | 1 SGD(約124円) 〜 | 5,000,000 THB(約24,227,000円) 〜 |
| 法人税率 | 20% | 24% | 17% | 20% |
| 設立期間 | 15〜25営業日 | 1〜3営業日 | 1〜2営業日 | 3〜4週間 |
| 設立費用 | 3,000 USD(約477,099円) 〜 | 2,000 USD(約318,066円) 〜 | 2,500 USD(約397,583円) 〜 | 3,000 USD(約477,099円) 〜 |
よくある質問(FAQ)
Q1: ベトナムで日本人が一人で法人を設立できますか?
はい、1人LLC(Công ty TNHH 1 thành viên)として設立可能です。出資者は個人でも法人でもOKです。ただし、現地にベトナム人の法定代理人を置く必要はなく、外国人が法定代理人になれます(労働許可証は別途必要)。
Q2: 駐在員事務所と法人の違いは何ですか?
駐在員事務所は設立が簡単(約1〜2週間)ですが、営業活動・収益活動ができません。市場調査や連絡業務のみが認められます。実際にビジネスを行う場合は法人設立が必要です。
Q3: 外資規制に該当するか確認する方法は?
投資法附属書IVの「条件付き投資業種リスト」(227業種)を確認してください。自社の業種コード(CPC / ISIC)が該当するかは、計画投資局(DPI)の窓口で事前相談が可能です。
Q4: 法人口座に最低いくら入れる必要がありますか?
法定の最低残高はありませんが、IRCに記載した出資額を期限内に払い込む必要があります。銀行によっては口座維持に最低残高を求める場合があります。
Q5: ベトナムの法人設立を自分で行うことは可能ですか?
法的には可能ですが、申請書類はベトナム語での作成が必要で、DPIとのやり取りもベトナム語が基本です。現地法律事務所(3,000 USD(約477,099円) 〜8,000 USD(約1,272,265円) 程度)への委託が現実的です。
Q6: 法人設立後、すぐに営業を開始できますか?
ERC取得後、銀行口座開設・税務登録・社会保険登録を完了してから営業開始が可能です。全ての手続き完了まで1〜2ヶ月が目安です。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
✅ 自分でできること
- 事業計画の策定、業種の外資規制チェック
- 必要書類(パスポート、無犯罪証明書等)の準備
- 事務所候補のリサーチ・内見
- 銀行口座の比較・選定
⚠️ 専門家に相談すべきこと
- IRC・ERC申請書類の作成(ベトナム語での法的文書)
- 定款のドラフト(ベトナム法に準拠した内容)
- 外資規制の詳細確認(条件付き業種の場合)
- 税務・移転価格のストラクチャー設計
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この記事の情報は2026年3月22日時点のものです。ベトナムの投資法・企業法は改正が頻繁に行われるため、最新情報はベトナム計画投資省(MPI)および企業登録ポータルでご確認ください。