📌 この記事の要点

ベトナムでの会社設立を完全解説。現地法人と駐在員事務所の違い、設立費用、必要書類、手続きのタイムライン、外資規制の注意点まで網羅。2026年最新の投資法・企業法に基づく情報。

この記事のポイント

📌 本記事はベトナム計画投資省(MPI)、投資法(2020年)、企業法(2020年)の公式情報(2026年4月確認)に基づいています。ベトナムの法制度は頻繁に改正されるため、最新情報は必ず公式サイトまたは現地専門家にご確認ください。


進出形態の比較:現地法人 vs 駐在員事務所 vs 支店

ベトナムに進出する際の法人形態は大きく3種類あります。目的に応じて適切な形態を選ぶことが重要です。

比較表

項目現地法人(LLC)駐在員事務所支店
営業活動可能不可限定的に可能
売上・契約可能不可本社名義で可能
法人格あり(独立法人)なし(親会社の延長)なし(親会社の延長)
設立費用3,000 USD(約0円8,000 USD(約0円1,500 USD(約0円3,000 USD(約0円3,000 USD(約0円6,000 USD(約0円
設立期間1.5〜3ヶ月2〜4週間1.5〜3ヶ月
法人税20%なし(課税対象外)20%
資本金要件業種によるなしなし
活動範囲全般連絡・調査・品質管理のみ許可された業務のみ
有効期間無期限(更新不要)5年(更新可能)5年(更新可能)
おすすめ本格的なビジネス展開市場調査・準備段階特定業種の限定営業

現地法人(LLC)

ベトナムで最も一般的な外国投資の形態です。独立した法人格を持ち、営業活動、契約締結、売上計上が可能です。

現地法人の種類:

法人形態出資者数外資上限特徴
1人有限責任会社(1-member LLC)1名(法人 or 個人)100%(業種による)最も一般的、意思決定が迅速
2人以上有限責任会社(Multi-member LLC)2〜50名100%(業種による)合弁事業に適用
株式会社(JSC)3名以上100%(業種による)将来のIPO・増資を見据える場合

日本の中小企業の場合、**1人有限責任会社(1-member LLC)**を選択するケースが最も多いです。日本の親会社が唯一の出資者となり、経営の意思決定が迅速に行えます。

駐在員事務所

営業活動は一切できませんが、以下の活動のみ許可されています。

許可される活動:

許可されない活動:

駐在員事務所は「ベトナム市場を知るための第一歩」として有効です。1〜2年の調査期間を経て現地法人に移行するパターンが一般的です。

支店

支店は親会社の名義で営業活動を行う形態ですが、ベトナムでは認められる業種が非常に限定的です(主に銀行、保険、法律事務所など)。一般的な製造業やサービス業では選択肢になりません。


現地法人(LLC)の設立手順

全体フロー

Step 1: 事前準備(2〜4週間)
    ↓
Step 2: IRC(投資登録証明書)申請・取得(15営業日)
    ↓
Step 3: ERC(企業登録証明書)申請・取得(3営業日)
    ↓
Step 4: 印鑑作成・届出(1〜2日)
    ↓
Step 5: 銀行口座開設(1〜2週間)
    ↓
Step 6: 税務登録・電子インボイス(1〜2週間)
    ↓
Step 7: 出資金の払込(90日以内)
    ↓
Step 8: 営業ライセンス取得(業種による)

Step 1:事前準備(2〜4週間)

この段階で以下を完了させます。

事業計画の策定

外資規制の確認

書類の準備(日本側)

書類内容備考
親会社の登記簿謄本直近3ヶ月以内のもの公証+アポスティーユ必要
親会社の定款-公証+アポスティーユ必要
直近2期分の財務諸表監査済みが望ましい公証+アポスティーユ必要
取締役会決議書ベトナム法人設立の決議公証+アポスティーユ必要
代表者のパスポートコピー有効期限6ヶ月以上公証必要
委任状代理人への委任公証+アポスティーユ必要

アポスティーユ(Apostille)とは: 日本の公文書の海外提出時に必要な証明。外務省で取得できます。2024年のハーグ条約加入により、ベトナムでもアポスティーユが利用可能になっています(※ベトナムのアポスティーユ運用状況は要確認)。

オフィスの確保


Step 2:IRC(投資登録証明書)の申請・取得

IRC(Investment Registration Certificate)は外国投資に必要な最初の許認可です。

申請先: 省レベルの計画投資局(DPI: Department of Planning and Investment)

提出書類:

  1. 投資プロジェクト登録申請書(所定様式)
  2. 投資家の法的地位を証明する書類(登記簿謄本等)
  3. 投資家の財務能力を証明する書類(財務諸表等)
  4. 投資プロジェクトの提案書(事業計画、投資額、実施スケジュール)
  5. オフィス賃貸契約書(または土地使用権の証明)

処理期間: 15営業日(書類に不備がなければ)

注意点:


Step 3:ERC(企業登録証明書)の申請・取得

ERC(Enterprise Registration Certificate)は法人としての正式な登録です。

申請先: 事業登記局(Business Registration Office)

提出書類:

  1. 企業登録申請書(所定様式)
  2. 定款(ベトナム語)
  3. 出資者リスト
  4. 法定代表者の任命書
  5. IRC(取得済みのもの)

処理期間: 3営業日

ERCの取得をもって法人が正式に成立します。ERC番号が法人の税番号(MST: Ma So Thue)としても使用されます。


Step 4:印鑑作成・届出

2020年企業法の改正により、印鑑のデザインは企業が自由に決定でき、当局への届出義務は廃止されました。ただし実務上は以下が必要です。


Step 5:銀行口座開設

必要なもの:

主要な銀行の選択肢:

銀行特徴
Vietcombankベトナム最大手、外資企業の利用実績豊富
BIDV政府系大手、工業団地内の対応に強い
MUFG(三菱UFJ)日系、日本語対応可能
SMBC(三井住友)日系、日本語対応可能
Mizuho(みずほ)日系、日本語対応可能

日系銀行はベトナムに支店を持っていますが、口座開設の最低預入額が現地銀行より高い傾向があります。日常的な送金には現地銀行、日本本社との資金移動には日系銀行を使い分けるのが一般的です。


Step 6:税務登録・電子インボイス

法人税:

VAT(付加価値税):

電子インボイス(e-Invoice):


Step 7:出資金の払込


Step 8:営業ライセンス取得(業種による)

一般的なサービス業・IT業はERCの取得で営業開始可能ですが、以下の業種は追加のライセンスが必要です。

業種必要なライセンス管轄
小売業小売営業ライセンス(ENT審査)商工省(MOIT)
飲食業食品安全証明書保健省
教育教育事業許可証教育訓練省
物流物流事業ライセンス商工省
建設建設事業許可証建設省
広告広告事業ライセンス文化体育観光省
人材紹介労働派遣許可証労働傷病兵社会省

小売業の**ENT(Economic Needs Test)**は、2店舗目以降の出店時に市場の需要を審査するものです。1店舗目は比較的スムーズに取得できますが、複数店舗展開を計画している場合は事前に戦略を立てる必要があります。


駐在員事務所の設立手順

現地法人に比べて手続きがシンプルで、2〜4週間程度で設立可能です。

設立フロー

Step 1: 書類準備(1〜2週間)
    ↓
Step 2: 商工省(MOIT)または地方の商工局(DOIT)に申請
    ↓
Step 3: 許可証取得(7営業日)
    ↓
Step 4: 印鑑作成・銀行口座開設

必要書類

書類備考
駐在員事務所設立申請書所定様式
親会社の登記簿謄本公証+アポスティーユ
親会社の定款公証+アポスティーユ
直近の財務報告書公証+アポスティーユ
駐在員事務所所長の任命書-
オフィス賃貸契約書-

費用目安

項目費用
政府申請料無料〜VND数十万
代行サービス1,500 USD(約0円3,000 USD(約0円
オフィス賃料(サービスオフィス)300 USD(約0円800 USD(約0円 /月
月間運営費(人件費含む)2,000 USD(約0円5,000 USD(約0円 /月

費用の総まとめ

現地法人(LLC)の設立費用

費目金額備考
IRC申請料無料-
ERC申請料200,000 VND(約0円約1,200円
日本での書類準備(公証・アポスティーユ)5万〜10万円謄本・定款・決議書等
ベトナム語翻訳・公証500 USD(約0円1,000 USD(約0円書類のベトナム語翻訳
法律事務所・代行サービス2,000 USD(約0円5,000 USD(約0円IRC+ERC取得
印鑑作成300,000 VND(約0円500,000 VND(約0円-
銀行口座開設無料〜500 USD(約0円銀行による
電子インボイス初期設定2,000,000 VND(約0円5,000,000 VND(約0円年間費用
オフィス(サービスオフィス)300 USD(約0円1,500 USD(約0円 /月エリアによる
設立費用合計(代行利用)3,000 USD(約0円8,000 USD(約0円資本金は含まず

ランニングコスト(月額)

費目金額
オフィス賃料300 USD(約0円1,500 USD(約0円
会計・税務サービス200 USD(約0円500 USD(約0円
日本人駐在員の生活費2,000 USD(約0円4,000 USD(約0円
ベトナム人スタッフ(管理職クラス)800 USD(約0円2,000 USD(約0円
ベトナム人スタッフ(一般事務)300 USD(約0円600 USD(約0円
月間最低ランニングコスト2,000 USD(約0円5,000 USD(約0円

資本金の設定ガイド

法定最低資本金

業種カテゴリ最低資本金根拠法令
一般サービス業・IT規定なし-
不動産業20,000,000,000 VND(約0円 (約1.2億円)不動産事業法
銀行業3,000,000,000,000 VND(約0円 (約180億円)信用機関法
証券業300,000,000,000 VND(約0円 (約18億円)証券法
保険業300,000,000,000 VND(約0円 〜(種類による)保険事業法
教育(大学)1,000,000,000,000 VND(約0円教育法(※要最新確認)

実務上の資本金設定の目安

法定最低資本金がない業種でも、以下の観点から適切な額を設定する必要があります。

考慮すべきポイント:

  1. 事業計画との整合性: DPIは事業計画と資本金の整合性を審査する。明らかに不足していると判断されると修正を求められる
  2. ワークパーミットとの関係: 外国人労働者のワークパーミット取得時に会社の財務状況が審査される
  3. 取引先からの信用: 資本金が少なすぎると取引先(特に大手)からの信用が得にくい

業種別の推奨資本金(実務ベース):

業種推奨資本金
ITサービス・コンサルVND 5億〜10億(約30万〜60万円)
貿易・商社VND 10億〜20億(約60万〜120万円)
製造業(小規模)VND 20億〜50億(約120万〜300万円)
製造業(工場建設)VND 50億〜200億(約300万〜1,200万円)
飲食業VND 5億〜15億(約30万〜90万円)

※ 上記は実務上の目安であり、法定要件ではありません。DPIの判断基準は地域により異なります。


外資規制(ネガティブリスト)の確認方法

ベトナムの投資法(2020年)付属書IV「条件付き投資経営分野リスト」には、227の業種が記載されています。

条件付き業種の主な類型

制限の種類内容該当業種例
出資比率の上限外資の出資比率に上限あり通信(49%〜65%)、航空(34%)
合弁義務ベトナム企業との合弁が必須広告、映画配給
追加ライセンスERCに加えて営業ライセンスが必要小売、物流、教育、医療
経済需要テスト(ENT)市場の需要に基づく審査小売(2店舗目以降)
WTO約束の範囲内WTO加盟時の約束に基づく開放多くのサービス業

確認手順

  1. 投資法付属書IVを確認: 自社の事業が条件付きリストに含まれるか確認
  2. WTO約束表を確認: サービス業の場合、WTO加盟時のCommitment Scheduleで開放範囲を確認
  3. 関連省庁の個別規定を確認: 業種ごとに管轄省庁の個別法令がある場合がある
  4. 現地の法律事務所に相談: 解釈が複雑な場合、専門家への相談を推奨

JETRO ハノイ・ホーチミンの窓口でも外資規制に関する無料相談が可能です。


日本人が知っておくべき注意点

1. 法定代表者の常駐義務

ベトナムの企業法では、法定代表者(Legal Representative)のうち最低1名はベトナムに常駐する必要があります。常駐者が30日以上国外に滞在する場合、他の者に代行権限を委任する必要があります。

2. ワークパーミットの事前取得

外国人がベトナムで就労するには、原則としてワークパーミット(労働許可証)の事前取得が必要です。

3. 移転価格税制

ベトナムは移転価格税制を厳格に適用しており、日本の親会社との取引価格が独立企業間価格(Arm’s Length Price)であることを証明する文書の作成・保管が義務付けられています。

4. 利益の国外送金

ベトナムの税法上、利益の国外送金は以下の条件を満たした場合に可能です。

利益送金には源泉税は課されませんが、送金手続きに1〜2週間を要する場合があります。

5. 個人所得税(駐在員向け)

ベトナムで183日以上滞在する場合、税務居住者として全世界所得に課税されます。

課税所得(年間)税率
VND 60百万以下5%
VND 60百万〜120百万10%
VND 120百万〜216百万15%
VND 216百万〜384百万20%
VND 384百万〜624百万25%
VND 624百万〜960百万30%
VND 960百万超35%

設立後の義務と年間スケジュール

時期義務
毎月VAT申告書の提出(翌月20日まで)
毎四半期法人税の予定納税(翌四半期末30日以内)
毎年年次財務報告書の提出(年度末から90日以内)
毎年法人税確定申告(年度末から90日以内)
毎年移転価格文書の更新・保管
毎年社会保険・健康保険の従業員登録更新

よくある質問(FAQ)

Q: ベトナムで会社設立にかかる費用はいくらですか? A: 政府手数料は実質無料〜数万円程度ですが、法律事務所や代行業者を利用した場合の総費用は3,000 USD(約0円8,000 USD(約0円 が目安です。

Q: ベトナムで外資100%の会社は設立できますか? A: 多くの業種で可能です。ただし、227の条件付き業種があり、出資比率の上限や合弁要件が設定されているものもあります。事前に投資法付属書IVで確認が必要です。

Q: 現地法人と駐在員事務所のどちらを選ぶべきですか? A: 営業活動を行いたいなら現地法人が必須です。駐在員事務所は市場調査・連絡業務のみが許可されています。進出初期のリスク軽減には駐在員事務所が有効です。

Q: ベトナムでの会社設立にどのくらいの期間がかかりますか? A: IRC取得に15営業日、ERC取得に3営業日が標準です。実務上は書類の準備・修正を含めて1.5〜3ヶ月かかるケースが一般的です。

Q: 資本金の最低額はいくらですか? A: 一般的なサービス業・IT業には法定最低資本金の規定がありません。ただし実務上はVND 5億〜10億(約30万〜60万円)の設定が推奨されます。不動産業や銀行業など、業種別の規定があるものもあります。

Q: 日本から遠隔で会社設立できますか? A: 可能です。委任状(公証+アポスティーユ付き)を用意すれば代理人による手続きが行えます。銀行口座開設やビザ申請では渡航が必要な場合もあります。

Q: 会社設立後、何ヶ月以内に資本金を払い込む必要がありますか? A: 原則として90日以内に払い込む必要があります。未払いの場合はIRCの取消しリスクがあります。


まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと

自分でできること

専門家に相談すべきこと

まず今日やるべきこと

  1. 自社の事業がベトナムの条件付き業種リストに該当するか確認 → [投資法付属書IV]
  2. JETROベトナム事務所に無料相談を予約JETRO ホーチミン
  3. 本サイトの関連記事で基礎知識を習得 → 下記関連記事を参照

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※ この記事の情報は2026年4月3日時点のものです。最新情報は各国政府の公式サイトをご確認ください。当サイトは情報提供を目的としており、法的助言を行うものではありません。