ベトナム投資・法人設立とは
ベトナムへの外国直接投資(FDI)は近年急増しており、韓国だけでも2015年末時点で累計450億米ドル超の投資実績を持つ。日本企業・起業家にとっても、製造業・食品・小売・法務など多様なセクターでの参入機会が広がっている。
ベトナムへの投資拠点設立の法的根拠となるのが、**2020年6月17日に第14期国会第9回会議で可決された企業法(法律第59/2020/QH14号)**である。この法律は「外国投資家にとって有利な多くの新規定を含む」とベトナム投資ポータル(investvietnam.gov.vn)が公式に位置づけており、現在のベトナム法人設立の基本フレームワークとなっている。
法人形態・条件・費用(具体的な数字)
ベトナムで外国投資家が設立できる主な法人形態と概要は以下のとおり。
| 法人形態 | 概要 | 最低資本金 |
|---|---|---|
| 有限責任会社(LLC)1人社員 | 1法人または個人が100%出資 | 業種による(法定なし/業種別ライセンス要件あり) |
| 有限責任会社(LLC)複数社員 | 2名以上50名以下の社員 | 同上 |
| 株式会社(JSC) | 3名以上の株主、株式発行可 | 同上 |
| 支店・駐在員事務所 | 独立した法人格なし | 不要(ただし活動制限あり) |
- 投資登録証明書(IRC) と 企業登録証明書(ERC) の2段階取得が基本
- 工業団地(例:フオックドン工業団地)では、食品加工工場建設の投資ライセンスが単独で発行されるケースもある
- 法人設立後の届出期限:ベトナムでは設立登記日から原則30日以内に税務当局へ届出が必要
申請・登録の手順
ベトナムでの外国投資家による法人設立は、大きく以下のフローで進む。
STEP 1:投資形態・業種の確認
└ 外資規制業種か否か、出資比率制限の確認(業種により外資49%上限等)
STEP 2:投資登録証明書(IRC)の取得
└ 申請先:省・市レベルの計画投資局(DPI)または工業団地管理委員会
└ 標準審査期間:15営業日(国家安全保障関連は35営業日)
STEP 3:企業登録証明書(ERC)の取得
└ IRCと同時または直後に申請
└ 標準審査期間:3営業日
STEP 4:法人印鑑の作成・公告
└ 企業登録ポータル(dangkykinhdoanh.gov.vn)に印鑑情報を公告
STEP 5:税務登録・銀行口座開設
└ 法人税コード(MST)取得
└ 外国投資資本金の送金・資本金口座(DICA口座)開設
STEP 6:業種別ライセンスの取得(必要な場合)
└ 食品・金融・教育・医療等は追加ライセンス必須
STEP 7:事業開始
└ 電子インボイス登録・会計帳簿整備
日本との違い・対比(必須)
日本で法人を設立した経験がある起業家にとって、ベトナムの制度は多くの点で異なる。
法人形態の対比
| 項目 | 日本 | ベトナム |
|---|---|---|
| 代表的な形態 | 株式会社(KK)・合同会社(LLC) | 有限責任会社(LLC)・株式会社(JSC) |
| 最低資本金 | 法定なし(実務上1円可) | 法定なし(ただし業種別要件あり) |
| 設立登記期間 | 法務局受理後約1〜2週間 | IRC取得に約15営業日+ERC 3営業日 |
| 株式の譲渡制限 | 定款で制限可能(株式会社) | LLC:社員間の持分譲渡に制限あり |
| 外国人の出資比率 | 原則制限なし(一部業種除く) | 業種により49%・51%等の上限あり |
税務届出の対比
| 項目 | 日本 | ベトナム |
|---|---|---|
| 法人設立届出 | 設立登記日以後2ヶ月以内に税務署へ提出(国税庁:法人設立届出書 PDF 257KB) | 設立登記日から30日以内に税務当局へ |
| 届出方法 | e-Tax(電子申告)または書面(税務署窓口) | 電子ポータル経由(原則電子化) |
| 法人税率 | 一律23.2%(中小企業の軽減税率:19%) | 標準20%(優遇適用で最低10%) |
| 消費税相当 | 消費税10%(軽減税率8%) | 付加価値税(VAT)標準10%(一部5%・0%) |
ポイント: 日本では法人設立届出書を設立から2ヶ月以内に提出する必要があり、e-Taxソフトまたは書面で提出する(国税庁公式:C1-4 普通法人の設立の届出)。ベトナムも同様に期限があるが、30日以内と短いため注意が必要。
FTA活用の観点
- 日本:日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)等を通じASEAN市場へのアクセス可能
- ベトナム:EVFTA(EU・ベトナムFTA) により、水産・繊維のEU向け輸出で関税優遇。さらにACFTA(ASEAN・中国FTA)・AIFTA(ASEAN・インドFTA)・**VCFTA(ベトナム・チリFTA)**など複数のFTAが発効済み
日本人が注意すべきポイント
① 「外資規制業種」の確認を最初に行う
日本では外国人でも原則として株式会社・合同会社を自由に設立できるが(法務省:会社名の登記に関する規制参照)、ベトナムでは業種によって外資出資比率が49%・51%・65%等に制限されており、進出前の業種確認が不可欠。
② 「会社名」の登記規則が異なる
日本では平成14年の商業登記規則改正によりローマ字・アラビア数字・一部記号(「&」「’」「,」「-」「.」「・」など)が商号に使用可能になった(法務省公式情報)。ベトナムでも英語社名併記が一般的だが、ベトナム語の社名が法定登記名となり、日本語表記はそのまま登録できない点に注意。
③ 工業団地(KCN)経由の設立は手続き窓口が異なる
フオックドン工業団地のような指定工業団地では、計画投資局ではなく工業団地管理委員会がワンストップ窓口となる。手続きの迅速化が期待できる反面、窓口を間違えると申請が無効になるリスクがある。
④ EVFTAの「拡大原産地累積規定」を活用できる
EVFTAでは拡大原産地累積規定という革新的な制度が導入されており、ベトナムから日本企業がEUへ水産品・繊維製品を輸出する際の関税優遇に活用できる。日本のEPA(経済連携協定)にはない仕組みであり、製造業拠点をベトナムに置く戦略的意義がある。
⑤ 法律事務所の選定
ガタカ・ロー(Gattaca Law)のように「ベトナム有数のリーディング・ロー・ファーム」を目指す法律事務所がinvestvietnam.gov.vnのパートナーとして掲載されているが、日本法・ベトナム法双方に精通した法律事務所を選ぶことが実務上重要。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① investvietnam.gov.vn にアクセスし、「INVESTPROCEN」(投資手続きポータル)で自社の業種コードを確認する
- ② 外資出資比率制限リスト(ネガティブリスト)で進出予定業種の規制を確認する(計画投資省公式リスト参照)
- ③ 企業法59/2020/QH14の「外国投資家向け新規定」の概要をinvestvietnam.gov.vnの解説記事(日本語・英語)で確認する
- ④ EVFTA・ACFTA・VCFTAのうち自社の輸出先・仕入れ先に関係するFTAを1つ特定し、関税率表を確認する
- ⑤ 日本の国税庁「法人設立届出書(C1-4)」の提出期限(設立から2ヶ月以内)と、ベトナムの30日ルールを社内カレンダーに登録する
- ⑥ 設立予定地(ホーチミン市・ハノイ・カントー・ドンナイ・ザーライ等)の計画投資局または工業団地管理委員会の連絡先を取得する
- ⑦ 資本金送金のためのDICA口座開設に必要な書類リスト(IRCコピー・定款・取締役会議事録等)を整理する
以下は一般情報だけでは判断できず、個別の状況によって回答が異なる論点です。
- 「自分の進出業種はベトナムの外資規制ネガティブリストに該当するか、該当するとすれば出資比率上限は何%か」
- 「EVFTAの拡大原産地累積規定は自社の製品カテゴリ(HSコード)に適用されるか」
- 「ベトナム法人からの配当送金と、日本の外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の適用関係はどうなるか」
- 「日越租税条約上、ベトナムで支払った法人税を日本の法人税申告で外国税額控除できるか」
- 「工業団地立地の優遇税率(最低10%)の適用条件と、適用期間(通常10〜15年)が自社プロジェクトに当てはまるか」
情報源: 本記事はベトナム投資ポータル公式サイト(investvietnam.gov.vn)、日本国税庁公式情報(C1-4 普通法人の設立の届出)、および法務省公式情報(商号へのローマ字等使
この記事はベトナム投資ポータル(Invest Vietnam)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。