この記事のポイント
タイの有限会社(บริษัทจำกัด / Thai Limited Company)は、タイでビジネスを行う際の標準的な法人形態です。DBD(商務開発局)およびBOI(投資委員会)の公式情報に基づき、2026年3月時点の設立要件を解説します。
外国人事業法(FBA)により原則としてタイ人株主が51%以上を保有する必要がありますが、BOI恩典を取得すれば対象業種で100%外資が認められます。法人税は20%、BOI認定企業は3〜8年の免税期間があります。
タイの法人形態
有限会社(บริษัทจำกัด)
タイで最も一般的な法人形態です。最低3名の発起人(株主)が必要で、商務開発局(DBD)に登記します。
BOI認定企業
タイ投資委員会(BOI)が推進する対象業種に投資する場合、以下の恩典が受けられます。
- 100%外資保有の許可(FBAの51%ルール免除)
- 法人税3〜8年間免除
- 機械・原材料の輸入関税免除
- 外国人労働者のワークパーミット取得簡素化
対象業種はEV(電気自動車)、デジタルサービス、医療機器、スマート農業、バイオ技術、航空宇宙などです。
外国人事業ライセンス(FBL)
BOI対象外の業種でも、FBL(Foreign Business License)を取得すれば外資比率49%超が可能です。ただし、審査は厳格で取得まで数ヶ月かかります。
設立要件
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 株主(発起人) | 最低3名。個人・法人いずれも可 |
| 取締役 | 最低1名。国籍制限なし |
| 外資比率 | 原則49%以下(FBA適用事業)。BOI/FBLで例外あり |
| 最低登録資本金 | 法定最低なし。ただし外国人ワークパーミット取得にはTHB 200万(約2,000,000 THB(約9,994,000円、2026-03-11時点) )が目安 |
| 登記住所 | タイ国内の事業所住所 |
設立費用
| 費目 | 金額 | 円換算(目安) |
|---|---|---|
| DBD登録料 | THB 5,000〜15,000 | 約21,000〜63,000円 |
| 公証費用(MOA・定款) | THB 5,000〜10,000 | 約21,000〜42,000円 |
| 法律事務所手数料 | THB 30,000〜80,000 | 約126,000〜336,000円 |
| 会計事務所(年間) | THB 10,000〜30,000 | 約42,000〜126,000円 |
| BOI申請費用(該当時) | THB 5,000 | 約21,000円 |
※ 1 THB ≈ 4.2円(2026年3月時点)。出典:DBD公式料金。
初年度の目安総額: THB 50,000〜150,000(約21〜63万円)。BOI申請を含む場合はコンサルティング費用が追加されます。
設立手順
Step 1: 会社名の予約(1〜2日)
DBDのオンラインシステムで会社名を予約します。タイ語と英語の両方で登録が必要です。
Step 2: 定款の作成・登記(1〜2週間)
発起人会議を開催し、基本定款(Memorandum of Association)を作成・DBDに登記します。
Step 3: 株主総会・設立登記(1週間)
設立総会を開催し、取締役の選任、監査人の選任、定款の承認を行います。DBDに会社設立登記を申請します。
Step 4: 税務登録・許認可取得(1〜2週間)
Revenue Department(歳入局)での法人税登録、VAT登録(年間売上THB 180万超の場合)、業種別の許認可取得を行います。
合計所要期間: 約2〜4週間(BOI申請は別途1〜3ヶ月)
法人税制
| 項目 | 税率・内容 |
|---|---|
| 法人税 | 20%(純利益に対して) |
| VAT | 7%(登録義務:年間売上THB 180万超) |
| 配当源泉税 | 10%(国内個人株主) |
| BOI免税 | 3〜8年間法人税免除(業種・投資額による) |
中小企業の優遇
資本金THB 500万以下の中小企業は、純利益THB 30万以下が免税、THB 30万〜300万が15%の軽減税率が適用されます。
外資規制の実務
51%ルールの実態
FBAでは多くの業種で外国人持株比率を49%以下に制限しています。実務上は、信頼できるタイ人パートナーを株主にするか、タイ人が51%の議決権を持つ優先株構造を設計するケースがあります。
ただし、名義株主(Nominee)の利用はFBA違反であり、発覚した場合は刑事罰の対象となります。2024年以降、DBDの調査が強化されています。
BOI認定のメリット
BOI認定を受ければ51%ルールが免除されるだけでなく、法人税免除・関税免除・ワークパーミットの優遇など多くのメリットがあります。デジタルサービス、ソフトウェア開発、コンサルティングなどは比較的審査が通りやすい分野です。
日本人が知っておくべき注意点
ワークパーミットとの連動
タイで就労するには、会社がワークパーミットをスポンサーする必要があります。一般的に、登録資本金THB 200万以上、かつ外国人1名につきタイ人従業員4名の雇用が必要です。
日タイ租税条約
日本・タイ租税条約では配当源泉税が20%/15%と、ASEAN条約の中ではやや高めです。詳細は日本・タイ租税条約ガイドをご覧ください。
DTVビザとの使い分け
短期のリモートワークであればDTVビザで十分です。法人設立はタイ国内に顧客がいる場合やBOI恩典を活用する場合に検討しましょう。
ASEAN他国との比較
詳しい比較はASEAN法人設立比較ガイドをご覧ください。
| 項目 | タイ有限会社 | シンガポール Pte Ltd | マレーシア Sdn Bhd | ベトナム LLC |
|---|---|---|---|---|
| 法人税率 | 20% | 17%(実効8.5%) | 24% | 20% |
| 外資比率 | 49%(原則) | 100% | 100% | 100%(業種別) |
| BOI恩典 | ◎(3〜8年免税) | △(一部あり) | ○(MIDA) | ○(SEZ) |
| 設立期間 | 2〜4週間 | 1〜3日 | 1〜2週間 | 3〜4週間 |
よくある質問(FAQ)
Q1: 日本人1人でタイに会社を作れますか?
最低3名の株主が必要です。日本人1人の場合、残り2名のタイ人株主が必要です。BOI認定を受ければ100%外資で設立できますが、発起人は3名必要です。
Q2: バーチャルオフィスで登記できますか?
DBDは実際に事業活動が行われる住所での登記を求めています。バーチャルオフィスでの登記は認められない場合があります。サービスオフィス(実際のデスクスペースがあるもの)は通常認められます。
Q3: BOI認定はどのくらいの期間で取得できますか?
通常1〜3ヶ月です。申請書類が整っており、対象業種に明確に該当する場合は比較的スムーズです。デジタル・IT分野は審査が早い傾向があります。
Q4: タイで法人を作った場合、日本の税金はどうなりますか?
タイ法人の利益に対しては原則タイの法人税が課されます。日本に配当を送る場合は租税条約に基づく源泉税が発生します。日本のCFC税制については、タイの法人税率20%が基準20%以上のため、通常は合算課税の対象外です。
Q5: 会社清算(撤退)の手続きはどのくらいかかりますか?
通常6ヶ月〜1年程度かかります。税務調査(3〜5年分)が完了してからDBDでの清算登記となります。撤退は設立よりも時間とコストがかかるため、計画的に進める必要があります。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること: 事業計画の策定、BOI対象業種の確認、タイ人パートナーの候補探し
専門家に相談すべきこと: FBA規制の具体的な適用判断、BOI申請書類の作成、株主構造の設計、ワークパーミット申請
確認すべきこと: BOI恩典の対象業種か、名義株主を使わない合法的な外資構造が可能か、日本の租税条約の活用方法