📌 この記事の要点

タイでの法人設立を徹底解説。DBD登記の7ステップ、外国人事業法(FBA)の制限業種と51/49ルール、BOI投資恩典による100%外資の方法、費用・期間・比較まで2026年最新情報。

この記事のポイント

出典:DBD(タイ商業開発局)、BOI(タイ投資委員会)、タイ歳入局 2026年3月時点

タイ法人設立の概要

タイは東南アジアで最も日系企業の進出実績が多い国の一つです。日本貿易振興機構(JETRO)によれば、タイに拠点を持つ日系企業は約6,000社にのぼります。タイで事業を行う場合、法人形態の選択とDBD(Department of Business Development/商業開発局)での登記が第一歩です。

主な法人形態3つ

タイで日本人が設立・利用できる法人形態は、主に以下の3種類です。

1. タイ有限会社(บริษัทจำกัด / Thai Limited Company)

最も一般的な法人形態です。タイ民商法典(Civil and Commercial Code)に基づき設立され、独立した法人格を持ちます。

項目内容
最低株主数3名(発起人として)
最低資本金法定上の最低額なし(ただしワークパーミット取得には外国人1名あたり2,000,000 THB(約9,690,800円
外資比率原則49%まで(FBA規制対象業種の場合)
法人税率20%(タイ歳入局)

2. 支店(Branch Office)

日本の本社がタイ国内に支店を設置する形態です。独立した法人格はなく、本社が全責任を負います。

3. 駐在員事務所(Representative Office)

市場調査や連絡業務のみを行う拠点です。営業活動・収益活動は一切禁止されています。

どの形態を選ぶべきか

判断基準タイ有限会社支店駐在員事務所
タイ国内での営業活動×
独立した法人格××
設立の容易さ
本社のリスク遮断×
収益活動×

実際にタイで事業展開するなら、タイ有限会社が最も一般的かつ実用的な選択肢です。以下では、タイ有限会社の設立手続きを中心に解説します。

外国人事業法(FBA)— 制限業種と51/49ルール

タイの外国人事業法(Foreign Business Act B.E. 2542 / 1999年)は、外国人(外国法人を含む)によるタイ国内での事業活動を規制しています。外資比率が50%超の企業は「外国人」とみなされ、規制対象業種でのビジネスに制限がかかります。

3つの制限リスト

FBAでは、規制業種を3つのリストに分類しています。

リスト1(List 1)— 外国人参入禁止業種

リスト2(List 2)— 国家安全保障・文化関連(内閣承認で参入可能)

リスト3(List 3)— タイ国民との競争力制限(商務省局長承認で参入可能)

51/49ルール(ノミニー株主構造)

FBA規制対象業種で事業を行う場合、タイ人株主が議決権の51%以上を保有する必要があります。これがいわゆる「51/49ルール」です。

実務上、多くの外資企業はタイ人パートナーまたは信頼できるタイ人を株主として迎え入れ、49%の外資持分で会社を設立します。ただし、名義貸し(ノミニー)は法律上禁止されており、発覚した場合は重い罰則(最大1,000,000 THB(約4,845,400円 の罰金および3年以下の懲役)が科されます。

注意: 実質的に外国人が支配する構造を名目上タイ人名義にする行為はFBA違反です。タイ人株主は実際に出資し、経営に関与する必要があります。

FBA規制を回避する合法的な方法

  1. BOI恩典の取得 — 対象業種で100%外資が認められる
  2. 外国人事業ライセンス(FBL)の取得 — 商務省から個別許可を取得
  3. 条約による特例 — 日タイ経済連携協定(JTEPA)などの優遇措置
  4. IEAT(タイ工業団地公社)指定区域での操業 — 一部業種で外資規制が緩和

BOI(投資委員会)の恩典と免除

BOI(Board of Investment)は、タイ政府の投資促進機関で、対象業種への投資に対して強力なインセンティブを提供しています。

主なBOI恩典

恩典内容詳細
100%外資保有FBAの51%ルール免除
法人税免除最大8年間(カテゴリにより3〜8年)
法人税減免免除期間後さらに5年間50%減額(一部カテゴリ)
機械輸入関税免除製造用機械の輸入関税免除
原材料輸入関税免除輸出用製品の原材料について最大5年間
外国人雇用枠拡大ワークパーミット手続きの簡素化
土地所有工業用地の外国人所有許可

BOI対象業種(2026年重点分野)

BOIの投資促進策は、タイの「新S曲線産業」を中心に設計されています。

詳しいBOI恩典の活用方法は、タイBOI投資恩典ガイドも参照してください。

BOI申請の流れ

  1. 事業計画書の準備(対象業種の確認)
  2. BOIへの投資申請書(Application Form)提出
  3. BOIによる審査(通常60〜90営業日)
  4. 恩典認可書(BOI Certificate)の発行
  5. 恩典条件の受諾(認可から6ヶ月以内)
  6. DBDでの法人登記
  7. BOI恩典に基づくワークパーミット申請

具体的な設立手続き — DBD登記の7ステップ

タイ有限会社をDBDに登記する具体的な手順は以下の通りです。

ステップ1: 社名予約(Name Reservation)

DBDのオンラインシステム(DBD e-Registration)で社名を予約します。3つまでの候補名を申請でき、承認まで通常1〜2営業日です。

ステップ2: 基本定款の登録(Memorandum of Association)

発起人3名以上の署名により基本定款を作成し、DBDに提出します。

記載事項:

登記手数料:資本金100,000 THB(約484,540円 ごとに50 THB(約242円 (最低500 THB(約2,423円 、最高25,000 THB(約121,135円

ステップ3: 設立総会の開催(Statutory Meeting)

基本定款登録後、発起人は設立総会を招集します。開催の14日前までに書面で通知が必要です。

設立総会で決議する事項:

ステップ4: 株式払込(Share Subscription)

全株式の25%以上を払い込みます。ワークパーミット取得が必要な場合は、外国人1名あたり最低資本金2,000,000 THB(約9,690,800円 の登録が求められます。

重要: 資本金は実際にタイの銀行口座に払い込む必要があります。

ステップ5: 会社登記(Company Registration)

設立総会から3ヶ月以内にDBDへ法人登記を申請します。

必要書類:

登記手数料:資本金100,000 THB(約484,540円 ごとに500 THB(約2,423円 (最低5,000 THB(約24,227円 、最高250,000 THB(約1,211,350円

ステップ6: 税務登録(Tax Registration)

法人登記完了後60日以内に、タイ歳入局(Revenue Department)で以下の登録を行います。

ステップ7: 社会保険登録

従業員を1名以上雇用する場合、雇用開始から30日以内に社会保険事務所への届出が必要です。雇用者負担は給与の5%(上限750 THB(約3,634円 /月)です。

設立スケジュールの目安

ステップ所要期間
社名予約1〜2営業日
基本定款登録1〜3営業日
設立総会通知期間含め約2週間
株式払込・銀行口座開設1〜2週間
会社登記1〜3営業日
税務登録1〜2週間
社会保険登録1週間
合計約4〜6週間

費用の内訳

タイ有限会社の設立にかかる費用の目安です(資本金2,000,000 THB(約9,690,800円 の場合)。

政府手数料

項目費用
社名予約無料(オンライン)
基本定款登録1,000 THB(約4,845円
会社登記10,000 THB(約48,454円
登記簿謄本200 THB(約969円
VAT登録無料
政府手数料合計11,200 THB(約54,268円

専門家費用(法律事務所・会計事務所)

サービス費用目安
法人設立代行20,000 THB(約96,908円50,000 THB(約242,270円
BOI申請代行(該当する場合)50,000 THB(約242,270円150,000 THB(約726,810円
月次会計・税務申告5,000 THB(約24,227円15,000 THB(約72,681円 /月
年次監査10,000 THB(約48,454円30,000 THB(約145,362円
ワークパーミット申請代行10,000 THB(約48,454円25,000 THB(約121,135円

日本人が知っておくべき注意点

1. ノミニー株主のリスク

51/49ルールを満たすためにタイ人名義の株主を立てる「ノミニー構造」は、法律上禁止されています。DBDは近年、実質的な外資支配の調査を強化しており、違反が発覚した場合のリスクは高いです。信頼できるタイ人ビジネスパートナーとの合弁か、BOI恩典の活用を検討してください。

2. ワークパーミットとの連動

タイで就労する外国人は、法人設立後にワークパーミット(労働許可証)を取得する必要があります。外国人1名につきタイ人従業員4名の雇用と、最低資本金2,000,000 THB(約9,690,800円 の登録が条件です。タイでの就労ビザについては、タイLTRビザ完全ガイドも参考になります。

3. 銀行口座開設の難しさ

法人銀行口座の開設には、取締役のビザ・ワークパーミット、登記簿謄本、VAT登録証などが必要で、銀行によって追加書類を求められることがあります。ASEAN各国の銀行口座事情についてはASEAN銀行口座比較ガイドをご確認ください。

4. 日本との制度の違い

項目タイ日本
最低資本金法定最低額なし(実務上2,000,000 THB(約9,690,800円1 JPY(約0円 から可能
最低株主数3名1名(合同会社・株式会社とも)
法人税率20%23.2%(法定実効税率約30%)
VAT/消費税7%10%
設立期間4〜6週間1〜2週間
外資規制あり(FBA)原則なし

5. 会計・監査の義務

タイの全法人は、年次財務諸表の作成と公認会計士による監査が義務付けられています。日本の中小企業のように監査が任意ではないため、継続的な会計費用を見込んでおく必要があります。

ASEAN他国との法人設立比較

タイでの法人設立を検討する際、シンガポールやマレーシアとの比較も重要です。

比較項目タイシンガポールマレーシア
設立期間4〜6週間1〜3営業日3〜14営業日
最低資本金法定なし(実務上2,000,000 THB(約9,690,800円1 SGD(約124円1 MYR(約40円
外資100%所有条件付き(BOI/FBL)原則可能原則可能(一部業種制限)
法人税率20%17%24%
取締役の居住要件なし最低1名がシンガポール居住者最低2名がマレーシア居住者
最低株主数3名1名1名
年次監査全法人必須条件付き免除あり条件付き免除あり
政府手数料11,200 THB(約54,268円315 SGD(約39,087円1,010 MYR(約40,727円

シンガポールは設立のスピードと外資規制の少なさで優位ですが、人件費・オフィス賃料はタイの3〜5倍です。マレーシアはコスト面でタイに近いですが、イスラム金融やハラル産業に強みがあります。

各国の詳しい設立手続きは以下を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q1: タイで法人を設立するのに何週間かかりますか?

標準的なタイ有限会社の設立は4〜6週間です。社名予約から税務登録・社会保険登録まで含めた期間です。BOI申請を行う場合は、さらに60〜90営業日の審査期間が加わります。

Q2: 外国人100%でタイに会社を設立できますか?

BOI恩典の対象業種であれば、100%外資での設立が認められます。BOI対象外でも、外国人事業ライセンス(FBL)を取得すれば可能ですが、審査が厳格で取得までに数ヶ月を要します。それ以外の場合は、タイ人株主51%以上の保有が必要です。

Q3: タイの法人設立に最低いくら必要ですか?

法定上の最低資本金はありませんが、外国人がワークパーミットを取得するには1名あたり2,000,000 THB(約9,690,800円 の登録資本金が必要です。政府手数料(約11,200 THB(約54,268円 )と専門家費用(20,000 THB(約96,908円50,000 THB(約242,270円 )も加算されます。

Q4: ノミニー株主を使っても問題ありませんか?

名義貸し(ノミニー)は外国人事業法で明確に禁止されています。違反した場合、最大1,000,000 THB(約4,845,400円 の罰金および3年以下の懲役の対象となります。タイ人株主は実際に出資し、経営への関与が求められます。

Q5: BOI恩典の申請は法人設立前でもできますか?

はい、BOI申請は法人設立前に行うことが推奨されます。BOI認可後にDBDで法人登記を行う流れが一般的です。ただし、BOIの審査には60〜90営業日かかるため、スケジュールに余裕を持ってください。

Q6: タイの法人税率はいくらですか?

標準の法人税率は**20%**です(タイ歳入局)。BOI認定企業は3〜8年間の法人税免除、その後5年間の50%減額が適用される場合があります。中小企業(払込資本金5,000,000 THB(約24,227,000円 以下かつ年間売上30,000,000 THB(約145,362,000円 以下)は、純利益300,000 THB(約1,453,620円 まで免税、300,001 THB(約1,453,625円3,000,000 THB(約14,536,200円 は15%の軽減税率が適用されます。

Q7: 駐在員事務所と支店の違いは何ですか?

駐在員事務所は市場調査・連絡業務のみで収益活動は禁止です。支店はタイ国内で営業活動が可能ですが、本社が全責任を負い、外国人事業ライセンス(FBL)の取得が必須です。いずれも独立した法人格はありません。

まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと

自分で準備できること

専門家(法律事務所・会計事務所)に依頼すべきこと

次のステップ

  1. まず事業内容がBOI対象業種に該当するか確認する
  2. 該当する場合はBOI申請を先行、非該当なら51/49構造またはFBLを検討
  3. 信頼できるタイの法律事務所・会計事務所に相談(日系対応可能な事務所も多数あります)
  4. 設立と並行して、タイでの長期滞在ビザの取得も検討する(タイLTRビザガイドを参照)

最終確認日: 2026年3月23日 出典: DBD(タイ商業開発局)、BOI(タイ投資委員会)、タイ歳入局

タイ 法人設立 BOI 外国人事業法
※ この記事の情報は2026年3月23日時点のものです。最新情報は各国政府の公式サイトをご確認ください。当サイトは情報提供を目的としており、法的助言を行うものではありません。