この記事のポイント

📌 本記事はマレーシア関税庁(Royal Malaysian Customs Department)の公式情報(2026年3月20日確認)に基づいています。


SSTとは:マレーシアの売上税・サービス税制度の全体像

制度の正式名称と導入背景

マレーシアのSST(Sales & Service Tax)は、**売上税(Sales Tax)サービス税(Service Tax)**の2つの間接税から構成される税制です。2018年9月1日にGST(Goods and Services Tax)に代わって導入されました。

公式には異なる2本立てですが、日本の消費税に相当する役割を果たします。ただし、構造・税率・対象品目・課税段階が大きく異なるため、日本の消費税制度と直接の比較は誤解を招きます。

2本立て構造の詳細

区分売上税サービス税
正式名Sales TaxService Tax
課税段階製造業者の製造・輸入時サービス提供者のサービス提供時
基本税率5% または 10%8%(2024年3月改定後)
軽減税率一部品目 5%飲食・宿泊・通信等 6%
対象製造品・輸入品課税対象サービス
登録義務年間RM500,000超年間RM500,000超(業種による)

公式サイト:MySSTポータル


売上税(Sales Tax)の詳細

税率と対象品目

基本税率:10%(標準品目の多くに適用)

軽減税率:5%(以下の品目例)

免税品(売上税が課税されない品目)

2025年改定:Transition of Sales Tax Rate Changes 2025

2025年から一部品目の税率が段階的に変更されます。詳細はMySSTポータルの「Latest Announcements」で確認してください。


サービス税(Service Tax)の詳細

基本税率と軽減税率

基本税率:8%(2024年3月1日より改定)

軽減税率:6%(以下のサービス)

2025-2026年の重要な拡大:Expansion of Service Tax Scope 2025

マレーシア政府は、サービス税の適用対象を大幅に拡大します:

2025年から新規対象化

2026年3月17日「Service Tax (Rate of Tax) (Amendment) Order 2026」発効

MySSTポータルでの操作ガイド

マレーシア関税庁公式の「MySSTポータル」(mysst.customs.gov.my)を通じてすべての手続きがオンラインで完結します。

主要機能:


登録・申告の実務フロー

ステップ1:自社が登録義務対象か判定

登録義務の判定基準

条件登録義務
年間売上高 RM500,000超(約1,700万円)強制登録
年間売上高 RM500,000未満登録不要(任意登録可能)
特定の課税対象サービス提供業種により異なる(要確認)

確認ステップ:

  1. 自社の年間売上高を把握
  2. 売上税対象商品を扱っているか確認(HS Codeで判定)
  3. サービス税対象サービスを提供しているか確認(2025-2026年の拡大対象を含める)
  4. MySSTポータルの「About SST」→「Understanding SST」で詳細確認

ステップ2:MySSTポータルで新規登録

New Registration フロー:

  1. MySSTポータルにアクセス
  2. 「New Registration」メニュー選択
  3. 売上税登録と サービス税登録を分けて申請(両方必要な場合は両申請)
  4. 必須情報入力:
    • ビジネス登録番号(SSM番号など)
    • 事業名・住所
    • 商品/サービスの分類(HS Code等)
    • 年間売上予測
  5. 申請書提出
  6. 関税庁による審査(通常2-4週間)
  7. 登録完了通知を受領
  8. SST登録番号を取得

非登録事業者の輸入デジタルサービス向け申請:

日本の親会社やSaaS企業からサービスを受ける場合:

ステップ3:インボイス・税理士要件

SST対応インボイスの必須項目:

マレーシアでもe-Invoice(電子インボイス)制度への段階的移行が進んでいます(2024-2026年)。詳細はMySSTポータルの「Issuing Invoices」ガイド参照。

ステップ4:定期申告・納付サイクル

申告期限・頻度:

MySSTポータルの「Return & Payment」での手続き:

  1. 申告期間の売上・仕入れを集計
  2. ポータルで申告フォーム記入
  3. 計算したSST納付額を入力
  4. 銀行振込またはオンライン決済で納付
  5. 納付証明書を保管

ステップ5:免税制度(Schedule A/B/C3・C4)

マレーシアのSST免税には複数の区分があります:

Schedule A:製造業向け免税

Schedule B:一般免税

Schedule C3・C4:事業者向け免税

免税申請フロー:

  1. MySSTポータルの「Exemption Status」メニュー
  2. 該当スケジュール選択
  3. 必須書類提出(事業登録証等)
  4. 関税庁による審査
  5. 免税証明書発行

日本の消費税制度との構造比較

制度的な根本的違い

比較項目マレーシア SST日本 消費税
制度構造売上税+サービス税(2本立て、独立)単一の消費税(国税+地方消費税)
標準税率サービス税8%、売上税5-10%10%(うち国税8%、地方消費税2%)
軽減税率特定サービス6%、一部商品5%8%(飲食料品・新聞等)
課税方式製造・輸入段階、またはサービス提供時各流通段階で課税(累積排除型)
仕入税額控除基本的になしあり(インボイス制度対応)

最大の構造的違い:仕入税額控除の有無

日本の消費税:

マレーシアのSST:

申告・納付のサイクル比較

項目マレーシア日本
申告頻度2ヶ月ごと原則年1回(消費税)
納付期限申告期限と同日申告期限から1ヶ月
記帳義務SST対応インボイス保管区分記載請求書または適格請求書保管
電子化e-Invoice段階的導入中インボイス制度(2023年10月-)

日本人が注意すべき7つのポイント

①:サービス税率が2024年に6%→8%に引き上げられた

マレーシアの多くの日本語情報では「サービス税6%」と記載されていますが、2024年3月1日付けで一般サービスの税率は8%に引き上げられています

特に以下のサービスを利用する企業は、コスト試算を見直す必要があります:

一方、飲食・宿泊・通信など特定業種は6%に据え置かれています。

②:2025-2026年の適用範囲拡大で新課税対象が急増

建設・医療・IT等が新規対象化することで、以下の業種は登録義務が生じる可能性があります:

建設工事サービス

医療・健康サービス

ITサービス

これらの業種に関わる企業は、年間売上RM500,000(約1,700万円)に達しなくても登録義務が発生する可能性があります。

③:「輸入デジタルサービス」への課税は非登録事業者にも適用

マレーシアの企業が日本の企業からサービスを受ける場合、SST登録がない場合でも「Non-Registrant: Imported Service」として申告義務が生じます

例:

これらは マレーシアのSST制度では「輸入サービス」とみなされ、買い手側がSSTを負担して申告する必要があります。

④:最新ガイドの多くがマレー語版のみ

2026年3月発行の建設・医療・ITサービスに関するガイドは、当初マレー語版のみの公開です:

英語版の公開を待つだけでなく、翻訳ツール(Google翻訳等)やマレーシア現地の税理士・会計士に確認することが現実的です。

⑤:日本の「インボイス制度」とは別物

2023年10月から日本で開始した「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)とマレーシアのSST インボイス要件はまったく別の制度です。

さらに、マレーシアではe-Invoice(電子インボイス)制度への段階的導入も進行中です(2024-2026年)。

日本のインボイス制度(2023年10月-):

マレーシアのSST対応インボイス:

両国での事業展開時は、両制度を混同せず、それぞれのガイドに従うことが重要です。

⑥:ペナルティ規定に注意

SSTの申告漏れ・納付遅延には以下のペナルティが科されます:

遅延ペナルティ:

その他のペナルティ:

これは日本の加算税・延滞税に相当する仕組みですが、マレーシアの方が月利が高いため、期限厳守が重要です。

詳細は MySSTポータルの「Penalties」セクションで確認できます。

⑦:免税制度の戦略的活用

自社の事業モデルが免税対象になる場合、申請することで大きなコスト削減につながります。

例:

これらの適用要件は複雑なため、税理士・会計士に事前相談が推奨されます。


FAQ(よくある質問)

Q1:自社が年間RM500,000(約1,700万円)を超えているか、どうやって確認しますか?

A1: 自社の会計帳簿から「売上高の合計」を確認してください。

を合計して RM500,000 と比較します。ただし、免税品目の売上は計上しない場合もあるため、会計士に相談して正確に判定することをおすすめします。

MySSTポータルの「Exemption Status」や「Find HS Code」で、自社の商品が売上税対象かどうか事前確認できます。

Q2:建設業です。2025-2026年の新規対象化で、自社は登録義務を負いますか?

A2: 建設工事サービスは2025年から サービス税の対象に追加されます。

年間売上高 RM500,000 以上であれば、2025年中に登録申請を完了する必要があります

具体的な「建設工事サービス」の定義(例:改装工事は含まれるか、単なるデザインサービスは含まれるか)については、2026年3月19日発行予定の「建設工事サービスガイド」で確認してください。不確実な場合は、税理士に事前相談してください。

Q3:日本の親会社からマレーシア拠点がサービス提供を受けます。SSTはどう適用されますか?

A3: マレーシア拠点の視点では、日本からの「輸入サービス」として考えられます。

マレーシア拠点がSST登録済みの場合:

登録がない場合:

詳細は MySSTポータルの「Non-Registrant: Imported Service」ガイドを参照。二重課税リスク(マレーシア SST + 日本消費税)がないか、国際租税条約の観点から税理士に確認することをおすすめします。

Q4:マレーシアで医療クリニックを開業します。登録義務はありますか?

A4: はい。医療サービスは2025-2026年から サービス税の対象に追加されます。

年間診療料収入(患者からの診療費)がRM500,000を超える場合、登録義務が生じます。

ただし、医療サービスは特殊な免税規定があるかもしれません。2026年3月9日発行予定の「医療サービスガイド」で詳細確認、または マレーシアの医療業界団体・税理士に相談してください。

Q5:飲食店です。サービス税は6%で据え置きと聞きました。申告は不要ですか?

A5: 申告は必要です。税率が6%に据え置かれるだけで、登録・申告義務は変わりません。

年間売上高 RM500,000 超であれば登録必須。毎月の売上(食事・飲料提供)にサービス税6%を加算してお客様に請求し、2ヶ月ごとに申告・納付します。

Q6:e-Invoice(電子インボイス)への対応はいつまでに完了する必要がありますか?

A6: マレーシアのe-Invoice導入スケジュールは段階的です(2024-2026年)。

詳細タイムラインは MySSTポータルの「Latest Announcements」で確認できます。

現在のところ、従来のインボイス形式(紙または PDF)での申告は受け付けられていますが、2026年内に電子化への移行が求められる可能性があります。現地の会計ソフト(例:Xero、QuickBooks Malaysia対応版)等への早期導入を検討してください。


「自分でできること」vs「専門家に相談すべきこと」

✅ 自分でできるステップチェックリスト

以下の項目は、オーナー・経営者自身で実施できます:

🤝 専門家に相談すべきこと

以下の項目は、税理士・会計士やマレーシアの専門機関に相談することをおすすめします:

税務・法務:

実務・システム:

定期サポート:


内部リンク・関連記事

マレーシアでのビジネス展開を検討している方は、以下の記事もあわせてご覧ください:


まとめ:SSTコンプライアンス実行ロードマップ

フェーズ1(今月中):状況把握と初期判定

  1. 自社の年間売上高がRM500,000を超えているか確認
  2. MySSTポータルで商品・サービス分類を調査
  3. 登録義務の有無を初期判定
  4. 必要に応じて会計士・税理士に相談予約

フェーズ2(1-2ヶ月以内):登録手続き完了

  1. MySSTポータルで「New Registration」申請
  2. 関税庁による審査(2-4週間)
  3. SST登録番号取得
  4. インボイステンプレート更新
  5. 会計システムへの SST機能組み込み

フェーズ3(登録完了後):定期申告体制構築

  1. 2ヶ月ごとの申告・納付スケジュール確定
  2. 申告期限(期間終了後20日以内)の厳守体制確立
  3. インボイス・領収書の保管ルール統一
  4. ペナルティリスク(月利10%)の認識共有

フェーズ4(2025-2026年):改定対応

  1. 2025年のサービス税適用範囲拡大に対応
  2. 2026年3月17日の税率改定(Amendment Order)を確認
  3. e-Invoice導入スケジュールの把握と準備
  4. 最新ガイド発行時に内容確認(マレー語版・英語版)

公式リソース・問い合わせ先

リソースURL / 電話用途
MySSTポータルhttps://mysst.customs.gov.my/オンライン登録・申告・ガイド確認
関税庁ホットライン1300-888-500一般質問・登録状況確認
メールサポートccc@customs.gov.my文書での質問・相談
関税庁本局Jalan Sultan Salahuddin, 50000 Kuala Lumpur対面相談・複雑な問題

本記事は マレーシア売上税・サービス税(SST)公式ポータル の2026年3月20日時点の公開情報に基づいており、今後の制度変更により内容が変わる可能性があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

マレーシア SST 売上税 サービス税 消費税
※ この記事の情報は2026年3月20日時点のものです。最新情報は各国政府の公式サイトをご確認ください。当サイトは情報提供を目的としており、法的助言を行うものではありません。