SST(売上税・サービス税)とは
SST(Sales and Service Tax)は、マレーシアの連邦税務当局であるマレーシア王立税関局(Royal Malaysian Customs Department)が管轄する間接税制度です。公式ポータル「MySST(mysst.customs.gov.my)」を通じて登録・申告・納付が一元管理されています。
SSTは2本立ての構造を持っています:
- 売上税(Sales Tax):製造業者・輸入業者が課税対象物品を販売する際に課される税
- サービス税(Service Tax):特定のサービスを提供する事業者に課される税
この2税は、それぞれ別の法律(Sales Tax Act 2018 / Service Tax Act 2018)に基づいており、日本の消費税のように「全取引に一律適用」される性質とは異なります。
税率・条件・費用(具体的な数字)
売上税(Sales Tax)の税率
| 対象カテゴリ | 税率 |
|---|---|
| 一般課税対象物品 | 10% |
| 特定物品(食料品・建材等) | 5% |
| 石油関連製品 | 品目別の固定額 |
| 非課税物品(Schedule A・B・C) | 0%(免税) |
- 登録義務が発生する売上高の閾値:年間50万リンギット(約1,600万円相当)以上の課税対象物品の製造・輸入
サービス税(Service Tax)の税率
| サービス種別 | 税率 |
|---|---|
| 標準サービス(飲食・宿泊・専門サービス等) | 8%(2024年3月改定) |
| 特定サービス(通信・駐車場等) | 6% |
| デジタルサービス(海外プロバイダーによる提供) | 8% |
- サービス税の登録閾値:年間50万リンギット以上の課税対象サービスの提供
2025年の主な改正ポイント
MySSTの公式アナウンスメント(2025年公開)によると:
- サービス税の課税範囲拡大(Expansion Of Service Tax Scope 2025):新たなサービス分野が課税対象に追加
- 売上税税率変更の移行措置(Transition Of Sales Tax Rate Changes 2025):税率変更に伴うFAQが2025年6月16日付で公開
- 建設工事サービスに関するガイド(Guide On Construction Work Services)が2026年3月19日付で更新
申請・登録の手順
MySSTポータル(mysst.customs.gov.my)を通じてオンライン完結で登録できます。
STEP 1:課税対象かどうかを確認する
- 自社の取り扱い物品・サービスが課税対象(Sales Tax / Service Tax のScheduleに該当)かを確認
- 年間売上が登録閾値(50万リンギット)を超えているか確認
STEP 2:必要書類を準備する
- 法人登記書類(SSM登録証明)
- 事業内容を示す書類
- 代表者のパスポートまたはMyKad(IC)
STEP 3:MySSTポータルで新規登録(New Registration)
- 「Sales Tax」または「Service Tax」の該当区分を選択
- 「New Registration」メニューからオンライン申請フォームを入力・送信
STEP 4:登録承認を受ける
- 審査完了後、登録番号(SST Registration Number)が発行される
- 登録番号はすべての請求書(インボイス)に記載義務あり
STEP 5:請求書(Invoice)の発行
- SST登録事業者は、課税取引のインボイスに登録番号・税額を明記する義務あり
- 「Issuing Invoices」ガイドがMySSTに公開されている
STEP 6:定期申告・納付(Return & Payment)
- 申告サイクル:2ヶ月ごと(隔月)
- 各課税期間終了後 28日以内に申告・納付が必要
- 申告はMySSTポータル上でオンライン完結
STEP 7:記録保持
- 取引記録・インボイス等は 7年間の保存義務あり
日本との違い・対比(消費税との比較)
日本の消費税(国税庁:No.6101)との主な対比は以下のとおりです。
| 比較項目 | マレーシアSST | 日本の消費税 |
|---|---|---|
| 制度の構造 | 売上税・サービス税の2本立て | 単一の消費税(+地方消費税) |
| 税率 | 売上税5%・10%、サービス税6%・8% | 標準税率10%(地方含む)、軽減税率8% |
| 地方税の有無 | なし | あり(標準:国税7.8%+地方2.2%) |
| 課税の仕組み | 製造・輸入段階または特定サービス段階のみ課税(シングルステージ税) | 取引のすべての段階で課税(多段階課税) |
| 仕入税額控除 | 原則なし(シングルステージのため) | あり(インボイス制度により仕入税額控除) |
| 登録義務の閾値 | 年間50万リンギット以上 | 基準期間の課税売上高1,000万円超 |
| 申告周期 | 2ヶ月ごと(隔月) | 原則年1回(中間申告あり) |
| 申告期限 | 課税期間終了後28日以内 | 課税期間終了後2ヶ月以内 |
| 記録保存義務 | 7年間 | 7年間 |
| デジタルサービス課税 | あり(海外プロバイダーにも適用) | あり(リバースチャージ方式) |
日本でいう「消費税の仕入税額控除(インボイス制度)」に相当する仕組みは、マレーシアのSSTには原則として存在しません。 SSTは製造・輸入の段階、またはサービス提供の段階で一度だけ課税される「シングルステージ税」であるため、日本のように川上から川下まで税が積み上がる多段階課税とは根本的に異なります。
日本人が注意すべきポイント
① 「消費税と同じ」という思い込みは危険
日本の消費税は「全事業者が全取引に適用する」多段階課税ですが、SSTは「特定の製造業者・サービス業者にのみ」課税されます。自社がSST登録義務を負うかどうかは、業種・売上規模・取り扱い物品・サービスの種類によって異なります。「売上があるから必ずSST登録が必要」ではありません。
② 2025年の課税範囲拡大を見逃しない
MySSTの公式アナウンスメントによると、2025年にサービス税の課税対象範囲が拡大されています。ITサービス・建設工事サービス・ヘルスケアサービスなど、従来は課税対象外だった分野も対象になった可能性があります。自社サービスが新たに課税対象になっていないか確認が必要です。
③ 輸入サービス(Non-Registrant:Imported Service)への対応
MySSTには「Non-Registrant:Imported Service」という申告区分が設けられています。SST登録事業者でない企業でも、海外からデジタルサービス等を輸入している場合は申告義務が生じる可能性があります。 日本本社からマレーシア子会社へのサービス提供や、海外SaaSツールの利用が該当するケースがあります。
④ 罰則(Penalties)の存在
登録義務の不履行・申告漏れ・納付遅延に対しては、SSTの法律(Sales Tax Act 2018 / Service Tax Act 2018)に基づく**罰則(Penalties)**が科されます。MySSTには「Penalties」専用のガイドセクションがあり、軽視できない水準の制裁が規定されています。
⑤ 申告は2ヶ月サイクル・28日以内
日本の消費税申告(年1回が原則)と異なり、SSTは2ヶ月ごとに申告・納付が必要です。経理・会計サイクルをマレーシア仕様に組み替える必要があります。
⑥ 免税(Exemption)スキームの活用
MySSTには製造業者向けの原材料・設備に関する**免税申請(Exemption:Schedule A・B・C)**が設けられています。製造業を営む日本人経営者はこの制度を積極的に確認し、コスト削減につなげることができます。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① MySSTポータル(mysst.customs.gov.my)にアクセスし、「About SST → Understanding SST」で自社の業種が課税対象かを確認する
- ② 過去12ヶ月の課税対象売上を集計し、登録閾値(年間50万リンギット)を超えているか判定する
- ③ 2025年のサービス税課税範囲拡大(Expansion Of Service Tax Scope 2025)のFAQ(2025年6月17日公開)を確認し、自社サービスが新たに対象になっていないかチェックする
- ④ 海外からのデジタルサービス・SaaSツールを利用している場合、「Non-Registrant:Imported Service」区分の申告義務がないか確認する
- ⑤ SST登録が必要と判断した場合、MySSTの「New Registration」から法人情報・代表者情報を入力して登録申請を行う
- ⑥ 登録完了後、既存の請求書テンプレートにSST登録番号・税額の記載欄を追加する
- ⑦ 経理担当者と連携し、2ヶ月ごと・課税期間終了後28日以内の申告・納付スケジュールをカレンダーに登録する
- ⑧ 取引記録・インボイスの7年間保存ルールを社内文書管理ポリシーに反映する
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下の論点は、自社の業種・取引形態・グループ構造によって結論が異なるため、一般情報だけでは判断が難しい領域です:
- 「自社が製造業者に該当するか、単なる流通業者に該当するか(SST登録義務の有無に直結)」
- 「日本本社からマレーシア子会社へ提供するサービスはサービス税の課税対象になるか」
- 「2025年の課税範囲拡大で自社のITサービス・コンサルティングサービスが新たに課税対象になったか」
- 「免税申請(Schedule A・B・C)を活用できる製造設備・原材料の具体的な判定基準」
- 「日本の消費税申告との二重負担が生じていないか、移転価格税制との関係は問題ないか」
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【ブロック3: 次に読むべき関連記事テーマ】
この記事を読んだ方にはこちらもおすすめです:
マレーシアで事業を行う場合、SSTと並んで法人税(Corporate Tax)の税率・申告スケジュールも必ず把握しておく必要があります。中小企業向けの優遇税率や、ラブアン法人を活用した節税スキームについて解説した記事もあわせてご覧ください。
また、マレーシアでビジネスを開始する最初のステップであるSdn Bhd(私有有限会社)の設立手順と費用—日本の株式会社・合同会社との比較を含む—についても詳しく解説しています。SSTの登録はSSM(会社登記)完了後に行うため、設立フローの全体像を把握しておくと実務がスムーズです。
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この記事はマレーシア売上税・サービス税(SST)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。