SST(売上税・サービス税)とは
SST(Sales and Service Tax)は、マレーシアの王立関税局(Royal Malaysian Customs Department)が管轄する間接税制度です。2018年9月にGST(物品サービス税)に代わって導入され、現在マレーシアの主要な間接税として機能しています。
SSTは以下の2つの独立した税から構成されています。
- 売上税(Sales Tax):製造業者・輸入業者が課税対象の物品を販売・輸入する際に課される税
- サービス税(Service Tax):特定のサービスを提供する事業者が課す税
2025年には「Expansion Of Service Tax Scope 2025」および「Transition Of Sales Tax Rate Changes 2025」として、対象範囲と税率の両面で重要な改定が行われました。これらに対応するFAQや公式ガイドが mysst.customs.gov.my に順次公開されています。
税率・条件・費用(具体的な数字)
公式サイト(mysst.customs.gov.my)に掲載されている情報をもとに整理します。
売上税(Sales Tax)
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 一般課税物品 | 10%(標準税率) |
| 特定物品(食料品・建材等) | 5% または 特定税額 |
| 非課税物品 | 0% |
- 2025年の税率変更(Transition Of Sales Tax Rate Changes 2025)により、一部物品の税率が改定されています。最新の対象リストは公式サイトのFAQ(2025年6月16日付)で確認が必要です。
- 登録義務が生じる売上高の閾値:年間RM 500,000(製造業者・輸入業者が対象)
サービス税(Service Tax)
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 一般サービス | 8%(2024年3月より従来の6%から引き上げ) |
| 飲食・宿泊等の特定サービス | 6% |
| デジタルサービス(非居住者提供分) | 8% |
- サービス税の登録義務閾値:対象サービスの年間売上がRM 500,000以上
- 「Service Tax (Rate Of Tax) (Amendment) Order 2026」(2026年3月17日付)によって、さらなる税率改定が予定されています。
免税・ゼロ税率
- Schedule A(免税物品リスト)・Schedule B・Schedule C3/C4(Trader向け)に該当する場合、申請により免税扱いを受けることが可能です。
- 免税申請はmysst.customs.gov.myのオンラインモジュールから実施します。
登録・申請の手順
mysst.customs.gov.myの公式モジュールを使って以下の流れで登録を進めます。
売上税・サービス税の新規登録フロー
mysst.customs.gov.my にアクセス
→ トップメニューの「New Registration」を選択登録区分を選択
- Sales Tax(売上税)登録 → 製造業者・輸入業者向け
- Service Tax(サービス税)登録 → 特定サービス提供者向け
- Non-Registrant: Imported Service → 海外から課税対象サービスを輸入する非登録事業者向け
必要情報を入力・書類アップロード
- 事業登録証明書(SSM登録番号など)
- 売上高証明書類(過去12か月分の財務データ)
- 代表者のID情報
Registration Status で審査状況を確認
→ メニュー「Registration Status」から進捗確認が可能承認後、SST番号を取得
→ 以降の取引で請求書(Invoice)にSST登録番号を記載する義務が生じますインボイス発行(Issuing Invoices)のルールに従い請求書を発行
→ 公式サイト「About SST → Issuing Invoices」セクションに詳細ガイドあり定期申告(Return & Payment)
→ 登録事業者は2か月ごとに申告・納付義務あり(mysst.customs.gov.myのReturn & Paymentモジュールを使用)免税申請が必要な場合はExemptionモジュールを活用
→ Schedule A / B / C3 / C4 の各申請フォームがオンラインで提供されています
日本との違い・対比(対比表)
日本の消費税(国税庁No.6101、令和7年4月1日現在)とマレーシアSSTを比較します。
| 項目 | マレーシア SST | 日本 消費税 |
|---|---|---|
| 制度の構造 | 売上税+サービス税の2本立て | 消費税(単一制度・地方消費税含む) |
| 標準税率 | 売上税10% / サービス税8% | 10%(うち地方消費税2.2%) |
| 軽減税率 | 売上税5%(特定物品) | 8%(飲食料品・新聞等、うち地方消費税1.76%) |
| 課税の方式 | シングルステージ税(製造・輸入段階のみ、または最終消費段階のみ) | 多段階課税(取引の各段階で課税・仕入税額控除あり) |
| 仕入税額控除 | なし(SSTはGSTと異なり控除制度がない) | あり(インボイス制度に基づく適格請求書等保存方式) |
| 登録義務の閾値 | 年間売上RM 500,000以上 | 基準期間の課税売上高1,000万円超 |
| 申告頻度 | 2か月ごと | 原則年1回(課税期間ごと)、中間申告あり |
| デジタルサービス課税 | あり(非居住者も対象・8%) | あり(国境を越えた役務提供・10%) |
| 複数税率 | あり(物品により5%・10%・特定税額) | あり(10%・8%の2段階) |
最も大きな構造的違い:仕入税額控除がない
日本の消費税はすべての取引段階で課税されますが、前段階の税額を控除できる仕入税額控除が存在するため、最終的に消費者が1回分の税を負担する仕組みです(令和5年10月からインボイス制度導入)。
一方、マレーシアのSSTはシングルステージ税です。売上税は製造・輸入の段階でのみ課税され、その後の流通・小売段階では原則として再課税されません。サービス税も特定サービスの最終提供段階でのみ課税されます。このため仕入税額控除という概念が存在せず、日本のインボイス制度に相当するような制度もありません。
日本人が注意すべきポイント
① 「GSTとSSTは別物」という認識を持つ
2018年以前のマレーシアはGST(6%の付加価値税型)でした。「マレーシアの税はGST」という情報はすでに古く、現在はSSTが適用されています。日本人経営者が古い情報をもとに事業計画を立てるケースが見受けられます。
② サービス税8%への引き上げ(2024年)を見落としない
2024年3月以前のサービス税は6%でしたが、**現在は8%**に引き上げられています。古い会計システムや見積書の税率設定が更新されていない場合、申告漏れや過少申告につながるリスクがあります。
③ 日本法人がマレーシアでサービスを提供・受領する場合の課税
マレーシア国内の事業者が海外(日本を含む)からデジタルサービスを輸入する場合、「Non-Registrant: Imported Service」の申告義務が生じる可能性があります。mysst.customs.gov.myに専用の申告モジュールが用意されており、登録事業者でなくても申告が必要なケースがあります。
④ 建設業・IT・医療分野は2025〜2026年の新ガイドを確認
- 「Guide On Construction Work Services」(2026年3月18日付)
- 「Panduan Perkhidmatan Teknologi Maklumat(ITサービスガイド)」(2026年2月27日付)
- 「Panduan Perkhidmatan Kesihatan(医療サービスガイド)」(2026年3月9日付)
これらの分野は2025〜2026年のサービス税拡張対象に含まれており、新たにサービス税の登録義務が生じる業種が増加しています。自社の業種が新たに課税対象になっていないか、最新ガイドで確認することが不可欠です。
⑤ 2か月ごとの申告サイクルを日本と混同しない
日本の消費税は原則年1回(課税期間ごと)の申告ですが、マレーシアのSSTは2か月ごとの定期申告が必要です。申告漏れはペナルティ(Penalties)の対象となり、公式サイトにもペナルティの規定が明記されています。日本式のペースで税務カレンダーを組むと申告遅延が発生するため注意が必要です。
⑥ 免税スケジュール(Schedule A/B/C)の申請は事前に行う
マレーシアSSTでは、製造業者間の特定取引や輸出向け物品について免税申請が可能です。ただし、この免税は自動適用ではなく事前申請が必要です。日本の消費税における輸出免税(自動的にゼロ税率)とは異なる点に注意してください。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① mysst.customs.gov.my にアクセス → 「About SST → What Is SST」「Understanding SST」を読んで制度の全体像を把握する
- ② 自社の売上高・サービス区分を確認 → 年間売上がRM 500,000を超えているか、または超える見込みがあるかをチェック
- ③ 登録区分を判定 → Sales Tax(製造・輸入)/ Service Tax(特定サービス)/ Imported Service(海外サービス輸入)のいずれに該当するか確認
- ④ 2025〜2026年の拡張対象ガイドを確認 → 自社業種(建設・IT・医療等)が新たにサービス税対象になっていないかを最新ガイドで確認
- ⑤ 免税申請の要否を確認 → Schedule A / B / C3 / C4 の対象に該当する取引があれば、mysst.customs.gov.myのExemptionモジュールから申請
- ⑥ 会計システムの税率を最新化 → サービス税を8%(一部6%)、売上税を10%(一部5%)に設定されているか確認・更新
- ⑦ 2か月ごとの申告スケジュールをカレンダーに設定 → Return & Paymentモジュールで申告期限を確認し、社内の経理サイクルを調整
- ⑧ 疑問点はmysst.customs.gov.myのFAQまたはホットライン(1300-888-500)に問い合わせ → 英語・マレー語対応
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下のような個別判断が必要な疑問は、公式FAQだけでは解決が難しいケースがあります:
- 「自社のビジネスモデルは売上税・サービス税のどちらに該当するのか、または両方か」
- 「日本親会社からマレーシア子会社へのサービス提供はImported Serviceの申告対象になるか」
- 「建設・IT・医療分野での2025年拡張対象に自社が含まれるかどうかの具体的な判定」
- 「免税スケジュール(Schedule C3/C4)の申請条件を自
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この記事はマレーシア売上税・サービス税(SST)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。