SST(売上税・サービス税)とは
マレーシアのSST(Sales and Service Tax)は、2018年9月に旧GST(物品サービス税)に代わって導入された間接税制度です。名称が示すとおり、**売上税(Sales Tax)とサービス税(Service Tax)**の2種類から構成されており、それぞれ異なる法律・税率・登録要件が適用されます。
日本でいえば「消費税」に相当しますが、日本の消費税が単一税率(標準10%・軽減8%)で幅広い取引に一律適用されるのとは異なり、SSTは品目・業種ごとに税率と適用範囲が細かく分かれている点が大きな特徴です。
所管官庁はマレーシア王立税関局(Royal Malaysian Customs Department)であり、公式ポータル「MySST(mysst.customs.gov.my)」を通じて登録・申告・納付が一元管理されています。
税率・条件・費用(具体的な数字)
売上税(Sales Tax)
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 一般物品(製造品など) | 10% |
| 特定物品(一部食品・建材など) | 5% |
| 石油関連製品 | 別途規定 |
| 非課税物品(Schedule B該当品) | 0% |
- 課税対象:マレーシア国内で製造・販売される特定の物品、および輸入物品
- 登録義務が生じる売上高の閾値:年間売上RM500,000以上の製造業者(公式ガイドに基づく一般基準)
- 2025年の税率改定に伴い、一部品目の税率が変更されているため、最新のSchedule確認が必要
サービス税(Service Tax)
| サービス区分 | 税率 |
|---|---|
| 一般課税対象サービス | 8%(2024年3月改定) |
| 飲食・宿泊など特定サービス | 6% |
| デジタルサービス(海外事業者含む) | 8% |
- 課税対象:マレーシア国内で提供される特定のサービス(飲食、宿泊、専門職サービス、ITサービスなど)
- 登録閾値:年間課税売上RM500,000以上のサービス事業者
- 2025年拡大スコープ:サービス税の課税範囲が追加拡大(ヘルスケア、ITサービスなどが対象に追加)
非居住者向け:輸入サービス課税
海外(日本含む)からマレーシア向けにデジタルサービス・専門職サービスを提供する非居住事業者も、一定要件を超えると登録・納付義務が生じます(Non-Registrant: Imported Serviceとして別途申告)。
登録・申告の手順
MySSTポータル(mysst.customs.gov.my)を使ったSST登録・申告の流れは以下のとおりです。
ステップ1:自社の登録義務を確認する
- 売上税:製造業者として年間売上RM500,000超か確認
- サービス税:課税対象サービスを提供し年間売上RM500,000超か確認
- 2025年拡大スコープに自社業種が含まれるか確認
ステップ2:MySSTポータルで新規登録
- MySSTトップページ → “New Registration” を選択
- 売上税登録:「Sales Tax」セクションへ
- サービス税登録:「Service Tax」セクションへ
- 必要書類:会社登録証明書(SSM)、取締役/オーナーのICまたはパスポート、事業活動の説明書類
ステップ3:登録証明書の取得
- 登録承認後、登録番号が発行される
- 登録後はすべての課税取引でSST登録番号をインボイスに記載する義務あり
ステップ4:インボイス発行
- 課税取引ごとに税額を明示したSST対応インボイスを発行
- 日本の適格請求書(インボイス制度)に相当するが、フォーマット要件はマレーシア独自ルールに従う
ステップ5:申告・納付(2ヶ月ごと)
- SSTの申告・納付サイクルは2ヶ月(バイ・マンスリー)ごと
- MySSTポータルの"Return & Payment"から電子申告
- 申告期限:各課税期間終了後30日以内
- 日本の消費税(原則として年1回または年4回申告)とは異なり、頻度が高い点に注意
日本との違い・対比
| 項目 | マレーシア SST | 日本 消費税 |
|---|---|---|
| 制度の構造 | 売上税+サービス税の二本立て | 単一の消費税(国税+地方消費税) |
| 標準税率 | 売上税10%、サービス税8% | 標準税率10%(地方消費税2.2%含む) |
| 軽減税率 | 特定物品5%(品目指定) | 軽減税率8%(飲食料品・新聞など) |
| 課税方式 | 製造・販売段階での単段階課税(売上税)またはサービス提供時点課税 | 多段階課税(各取引段階で課税・仕入税額控除) |
| 仕入税額控除 | 売上税は基本的に仕入控除なし(製造業者レベルでの単段階課税) | あり(インボイス制度により管理) |
| 登録閾値 | 年間売上RM500,000超 | 前々年の課税売上高1,000万円超で課税事業者 |
| 申告頻度 | 2ヶ月ごと | 原則年1回(中間申告あり)、選択により年4回・月次も可 |
| デジタルサービス課税 | あり(非居住者も登録義務) | あり(リバースチャージ方式または国外事業者申告) |
| 免税制度 | Schedule A(製造業向け免税)、Schedule B(非課税物品)あり | 非課税取引・免税取引の区分あり |
| 所管官庁 | 王立税関局(Customs) | 国税庁(税務署) |
法人税との関係(参考)
日本では法人税の基本税率は23.2%(資本金1億円超の普通法人)、中小法人の年800万円以下の所得部分は15%(一部17%の経過措置あり)です(国税庁 No.5759)。マレーシアの法人税は標準24%ですが、SSTは法人税とは独立した間接税であり、両国ともに間接税(消費税/SST)と直接税(法人税)は別建てで管理されます。
日本人が注意すべきポイント
① 「仕入税額控除」の概念が売上税には存在しない
日本の消費税は多段階課税で、事業者は仕入れ時に支払ったSSTを控除できますが、マレーシアの売上税は製造業者段階での単段階課税が基本です。日本の感覚で「後で仕入れ分を取り戻せる」と思い込むと、コスト計算が狂います。サービス税は一部で仕入れ側に転嫁される構造ですが、日本の消費税とは税額控除の仕組みが異なります。
② 2025年のサービス税拡大スコープを見落とさない
2025年にヘルスケア・ITサービスなどに課税範囲が拡大されました。日本から進出したIT企業・コンサルティング会社などは、従来は課税対象外だったサービスが突然課税対象になるケースがあります。MySSTの"Expansion Of Service Tax Scope 2025"セクションで自社業種を必ず確認してください。
③ 申告サイクルが2ヶ月ごとで短い
日本の消費税は原則として年1回の確定申告ですが、SSTは2ヶ月に1回の申告・納付が義務です。経理体制が整っていない場合、期限超過・ペナルティのリスクが高まります。MySSTの"Penalties"セクションには遅延に対する罰則が明記されているため、早期に申告フローを整備してください。
④ 非居住者(日本法人)でも登録義務が生じる場合がある
日本からマレーシア向けにSaaS・デジタルコンテンツ・専門職サービスを提供している場合、マレーシアに法人がなくてもサービス税の登録・納付義務が発生する可能性があります。“Non-Registrant: Imported Service"の申告ルートが設けられており、見落としは脱税リスクにつながります。
⑤ 免税スケジュール(Schedule A/B/C)の活用
製造業者向けのSchedule Aによる原材料・機械の免税制度など、正しく活用すればコスト削減につながる仕組みがあります。日本の消費税には類似の「製造業向け原材料免税」という概念がないため、見落としやすいメリットです。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① MySST公式サイト(mysst.customs.gov.my)にアクセスし、“New Registration"ページを確認する
- ② 自社の年間課税売上がRM500,000を超えるか計算し、登録義務の有無を判断する
- ③ 2025年サービス税拡大スコープ(“Expansion Of Service Tax Scope 2025”)で自社業種が新規対象に含まれるか確認する
- ④ 売上税登録が必要な場合はSSM登録証・取締役パスポートコピーを準備し、MySSTで登録申請を行う
- ⑤ 申告サイクル(2ヶ月ごと)に対応した経理カレンダーを設定し、申告期限(課税期間終了後30日以内)を社内共有する
- ⑥ インボイスにSST登録番号・税額を明示する形式に請求書テンプレートを更新する
- ⑦ 日本からマレーシア向けにデジタルサービスを提供している場合、“Non-Registrant: Imported Service"の要件を確認する
- ⑧ MySSTの"Legislation & Guides → Industry Guides"で自社業種の最新ガイドをダウンロードして保管する
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下の点は、会社の規模・業種・取引形態によって判断が変わるため、一般情報だけでは結論が出ません:
- 「自社の製品はSchedule Aの免税対象物品に該当するか、それとも10%課税か」
- 「日本法人がマレーシア顧客にSaaSを提供している場合、Imported Serviceとして登録義務が生じる売上閾値に達しているか」
- 「2025年のサービス税拡大スコープで自社のITサービス・コンサルティング業務が新たに課税対象になったか」
- 「日本本社からマレーシア子会社へのサービス提供(グループ内取引)にSSTが課されるか」
- 「ペナルティを受けた場合の異議申し立て(Assessment Disputes)の手順と期限」
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【ブロック3: 次に読むべき関連記事テーマ】
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マレーシアのSSTを正しく申告するには、そもそも**マレーシア法人の設立形態(Sdn Bhd・支店・駐在員事務所の違い)**を理解することが前提になります。法人形態によって売上税・サービス税の登録義務や申告主体が変わるため、合わせて確認してください。
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この記事はマレーシア売上税・サービス税(SST)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。