マレーシア所得税(個人)とは
マレーシアの個人所得税は、LHDN(Lembaga Hasil Dalam Negeri Malaysia=内国歳入庁) が管轄する国家税制です。雇用所得・事業所得・配当・賃貸収入・ロイヤリティ・年金・その他の所得に課税されます。
申告は「Borang Nyata Cukai Pendapatan(BNCP)」と呼ばれる申告書(Return Form / RF)をe-Filing経由で提出するのが標準的な方法です。2026年からはオンラインポータル「MyTax(mytax.hasil.gov.my)」が申告・照会・支払いのゲートウェイとして統合されています。
税率・条件・費用(2025年度課税年度)
申告区分と提出期限
| 申告書 | 対象者 | 2026年提出開始日 |
|---|---|---|
| Form BE | 雇用所得のみの居住個人 | 2026年3月1日 |
| Form B | 事業所得を持つ居住個人 | 2026年5月1日 |
| Form E | 雇用主(法人・個人事業主) | 2026年3月1日 |
| Form M | 非居住個人 | 2026年3月1日 |
※ e-Filing対象フォームはE、BE、B、M、BT、MT、P、TF、TPです(LHDN公式情報より)。
源泉徴収(MTD/PCB)
- 給与所得者は毎月「Monthly Tax Deduction(MTD / PCB)」として源泉徴収される仕組みがあります。
- CP38通知は、MTDだけでは納税額が不足する場合に、雇用主に対して補完的な追加徴収を指示する通知です。
- 年間の過払い分は確定申告後に**EFT(電子送金)**で銀行口座へ還付されます。還付を受けるには有効・正確な銀行口座番号の登録が必須です。
注意すべき新情報(2026年3月18日付LHDN公告)
LHDNは2026年3月18日に公式声明を発表。2025年課税年度のForm BEにおいて、「Cukai ditanggung oleh majikan(Tax borne by employer=雇用主負担税)」欄を誤ってチェックしてしまい、還付が保留されている納税者が存在することが確認されています。
✅ 対処法:LHDNは「修正申告書(Pindaan Borang)の提出は不要」と明言しています。詳細はLHDN公式サイトの2026年3月18日付お知らせを参照してください。
申告・登録の手順(e-Filing)
以下は雇用所得のある居住者がForm BEを提出する標準フローです。
日本との違い・対比(必須)
個人所得税の申告制度:日本 vs マレーシア
| 比較項目 | 🇯🇵 日本 | 🇲🇾 マレーシア |
|---|---|---|
| 主管庁 | 国税庁(NTA) | LHDN / IRBM |
| 申告書名 | 確定申告書(A・B) | Form BE / Form B |
| 給与所得者の原則 | 年末調整で完結(申告不要) | MTD後も申告書提出が原則必要 |
| e-申告ポータル | e-Tax | MyTax / e-Filing |
| 申告期限(給与所得者) | 翌年2月16日〜3月15日 | 翌年3月1日開始(通常3月末まで) |
| 申告期限(事業所得者) | 翌年3月15日 | 翌年5月1日開始(通常6月末まで) |
| 還付方法 | 指定口座振込 | EFT(e-Lejar で確認) |
| 出国停止制度 | なし(原則) | あり(Section 104・未納時) |
法人税率の対比(参考)
日本の法人税率(国税庁 No.5759、令和7年4月1日現在)と比較すると:
| 区分 | 🇯🇵 日本(普通法人・資本金1億円以下) | 🇲🇾 マレーシア(中小企業) |
|---|---|---|
| 年800万円以下部分 | 15%(令和7年4月1日以降は17%へ改正予定) | 約15〜17%(中小企業向け優遇税率) |
| 年800万円超部分 | 23.2% | 24%(標準税率) |
※日本の法人税率は国税庁公式情報(No.5759)より引用。マレーシア法人税の詳細はLHDN公式サイトで確認のこと。
消費税・間接税の対比
| 項目 | 🇯🇵 日本(消費税) | 🇲🇾 マレーシア(SST) |
|---|---|---|
| 標準税率 | 10%(うち地方消費税2.2%) | 販売税6〜10% / サービス税8% |
| 軽減税率 | 8%(飲食料品等、うち地方消費税1.76%) | 一部品目で6%・0% |
| 方式 | 多段階課税・インボイス制度 | 製造・輸入段階の一段階課税 |
※日本の消費税率は国税庁公式情報(No.6101、令和7年4月1日現在)より引用。
日本人が注意すべきポイント
① 「居住者」判定が税額を大きく左右する
マレーシアでは183日ルールが基本:暦年中に183日以上マレーシアに滞在すれば「居住者(Resident)」として扱われ、累進税率が適用されます。183日未満の場合は非居住者扱いとなり、より高い一律税率が適用されます。
日本の「1月1日現在の住所地で課税」という考え方とは異なるため、転職・転勤・短期渡航など滞在日数が変動する方は特に注意が必要です。
② 「Tax borne by employer(雇用主税負担)」欄の誤チェックに注意
2026年3月18日のLHDN公告が示す通り、このチェックを誤って入れると還付金が受け取れない事態になります。Form BE記入時には各欄の意味を必ず確認してください。なお、LHDNは修正申告書の提出不要と公式に述べているため、この公告の最新情報を確認することが重要です。
③ 会社取締役は未納税の連帯責任を負う
LHDNの公式情報では「会社取締役は会社の未納税残高を支払う責任がある」と明記されています。未納の場合、**出国停止令(Stoppage Order / Section 104)**が発令され、マレーシアからの出国が制限されます。日本の制度にはない強制力のある措置であるため、経営者・取締役には特に重要なポイントです。
④ 還付口座の登録は必須・最新状態を維持する
日本の確定申告でも還付先口座を記入しますが、マレーシアではEFTによる直接振込が唯一の還付手段です。口座情報が古い・誤っている場合は還付が遅延または不受理になります。口座変更後は速やかにMyTaxで更新してください。
⑤ スキャム(詐欺)に注意
LHDNは公式に「疑わしい電話・SMS・メール・手紙に返答しないこと」「機密情報を第三者に開示しないこと」を呼びかけています。不審な連絡を受けた場合は、LHDNフィードバックフォームまたはコンタクトセンター(03-8911 1000)に直接確認してください。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① hasil.gov.my または mytax.hasil.gov.my にアクセス → MyTaxアカウントの有無を確認、未登録ならPINナンバーをオンライン申請
- ② 給与明細・EPF明細・EA Form(雇用主発行)を手元に準備する
- ③ e-Filingにログイン → 雇用所得のみの場合は「Form BE」、事業所得がある場合は「Form B」を選択
- ④ 「Tax borne by employer」欄を誤チェックしていないか確認。誤チェックした場合はLHDNの2026年3月18日公告を参照(修正申告書は不要)
- ⑤ 控除項目を漏れなく入力(医療費・教育費・子供控除など)し、税額を確認
- ⑥ Form BEは2026年3月末まで、Form Bは2026年6月末までに提出・納付を完了させる
- ⑦ ByrHASiLまたは指定銀行の電子チャネルで未納税額を納付し、e-Lejarで還付状況を確認する
- ⑧ MyTaxに登録する銀行口座番号が最新・正確であることを確認する
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下は個人の状況によって答えが変わるため、一般的な記事だけでは判断が難しい論点です:
- 「自分の2025年の在留日数は183日を超えているか、また年をまたぐ移動がある場合の居住者判定はどうなるか」
- 「日本とマレーシアの租税条約(二重課税防止条約)は自分の所得区分(給与・配当・ロイヤリティ等)に具体的にどう適用されるか」
- 「日本に残した不動産賃料・日本株の配当は、マレーシアの申告書でどう扱うべきか」
- 「会社取締役を兼務している場合、自分個人とマレーシア法人の未納税リスクはどのように連動するか」
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【ブロック3: 次に読むべき関連記事テーマ】
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この記事はマレーシア内国歳入庁(LHDN/IRB)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。