マレーシアの確定申告(e-Filing)とは
マレーシアの個人所得税申告は、**LHDN(Lembaga Hasil Dalam Negeri Malaysia/内国歳入庁)**が管轄しており、日本の国税庁に相当する機関です。申告はオンラインポータル「MyTax(mytax.hasil.gov.my)」を通じて行う「e-Filing」が主流となっています。
2025年度分(Year Assessment 2025)のe-Filingは2026年3月1日より受付開始されており、対象となるフォームは以下の通りです(LHDN公式情報より)。
申告フォームの種類と提出期限
| フォーム名 | 対象者 | 受付開始日 |
|---|---|---|
| Form BE | 雇用所得のある個人(居住者) | 2026年3月1日 |
| Form B | 事業所得のある個人(居住者) | 2026年3月1日(期限:2026年5月1日) |
| Form E | 雇用主(法人・個人事業主) | 2026年3月1日 |
| Form M | 非居住者個人 | 2026年3月1日 |
| Form P | パートナーシップ | 2026年3月1日 |
| Form TF / TP | 信託・遺産 | 2026年3月1日 |
重要な期限まとめ:
- Form BE(就労所得者):2026年3月1日受付開始
- Form B(事業所得者):提出期限は2026年5月1日
- 期限を過ぎると、税額の増額・法的手続き・**マレーシア出国禁止(Stoppage Order)**のリスクあり
申告・納税の手順(e-Filing)
LHDN公式サイトの情報をもとに、実際の申告フローを以下にまとめます。
STEP 1:MyTaxアカウントの準備
- MyTax(mytax.hasil.gov.my)にアクセス
- PINナンバーが必要な場合はMyTaxからオンラインで申請可能(公式:「PIN Number request is made easier! Just log in to MyTax.」)
STEP 2:必要書類の準備
- 雇用主から発行されたEA Form(源泉徴収票に相当)
- EPF(従業員退職積立基金)の拠出明細
- 医療費・教育費・保険料などの領収書(控除申請用)
- 銀行口座情報(還付はEFT=電子資金移動のみ)
STEP 3:e-Filingにログイン・フォーム選択
- MyTaxにログイン → 「e-Filing」を選択
- 自分の課税区分に応じたフォーム(Form BE / B など)を選択
STEP 4:所得・控除情報の入力
- 給与所得・配当所得・賃料収入・ロイヤルティなどを申告
- 子供控除・医療費・教育費・生命保険料などの控除項目を入力
STEP 5:税額確認・納付
- 計算された税額を確認
- 支払いはByrHASiLまたは指定銀行のオンラインバンキングで可能
STEP 6:申告完了・保管
- 申告完了後の受領番号を保存
- 「e-Lejar」機能で自分の納税口座をいつでも確認可能
日本との違い・対比
マレーシアと日本の申告制度は、仕組み・期限・税率の面で大きく異なります。
■ 確定申告制度の比較
| 項目 | マレーシア | 日本 |
|---|---|---|
| 申告管轄機関 | LHDN(内国歳入庁) | 国税庁 |
| 申告ポータル | MyTax(e-Filing) | e-Tax(国税電子申告) |
| 個人申告期限(就労所得) | 毎年3月(翌年3月) | 毎年2月16日〜3月15日 |
| 事業所得者の申告期限 | 毎年5月1日 | 毎年3月15日 |
| 課税対象の所得 | 雇用・事業・配当・賃料・ロイヤルティ・年金など | 給与・事業・不動産・利子・配当など(10種類) |
| 還付の受取方法 | EFT(電子資金移動)のみ | 振込・ゆうちょ口座など |
■ 法人税率の比較
マレーシアの法人税率とともに、日本の法人税率(国税庁 No.5759)を以下に対比します。
| 項目 | マレーシア | 日本(国税庁公式) |
|---|---|---|
| 中小企業の優遇税率 | 最初のRM150,000:17%、超過分:24% | 資本金1億円以下の法人:年800万円以下の部分 15%(令和7年4月1日以降は一部17%) |
| 一般法人税率 | 24% | 23.2% |
| 適用対象 | マレーシア居住法人 | 日本国内法人 |
出典:日本の法人税率は国税庁「No.5759 法人税の税率」(令和7年4月1日現在法令等)に基づきます。日本の中小法人(資本金1億円以下)の年800万円以下部分は15%、令和7年4月1日以降は17%となる予定です。
■ 消費税との対比
日本では標準税率10%(うち地方消費税2.2%)・軽減税率8%(うち地方消費税1.76%)(国税庁 No.6101)が課されています。一方、マレーシアでは消費税(GST)は2018年に廃止されており、現在は**SST(Sales and Services Tax)**が適用されています。SSTのサービス税率は一般的に6〜8%であり、日本の消費税のように全取引に一律に課税される制度とは異なります。
日本人が注意すべきポイント
① 「居住者」と「非居住者」の判定
マレーシアでは暦年中の滞在日数が182日以上であれば税務上の「居住者(tax resident)」とみなされます。居住者と非居住者では適用税率・控除の内容が大きく異なります。Form BEは居住者用、Form Mは非居住者用です。日本の「住民税の住所判定」とは基準が異なるため、渡航1年目は特に注意が必要です。
② 出国禁止(Stoppage Order)は法人役員にも適用
LHDN公式情報によると、会社役員(Company directors)は自社の未納税額についても連帯責任を負い、未払いが続く場合はSection 104に基づく「Stoppage Order(出国禁止命令)」が発令されます。マレーシア法人の取締役を務める日本人経営者は特に注意が必要です。日本では個人と法人の納税義務は原則分離されているため、日本の感覚のままでいると見落としやすい落とし穴です。
③ 還付はEFTのみ・銀行口座の正確な登録が必須
LHDNは「銀行口座番号を正確に登録すること」を公式に注意喚起しています。日本のような書類郵送での還付は行われず、EFT(電子資金移動)のみです。マレーシアの現地銀行口座がない場合は早めに開設しておく必要があります。
④ CP38通知(追加源泉徴収)への対応
CP38通知とは、従業員の月次源泉徴収(MTD)で不足した税額を雇用主に追加徴収させる制度です。日本でいう「年末調整の不足分の追加徴収」に近い仕組みですが、雇用主経由で処理されるため、給与明細の税額が突然増加することがあります。
⑤ 詐欺・なりすましへの注意
LHDN公式サイトでは「SCAM ALERT」として、不審な電話・SMS・メール・郵便物には応答しないよう公式に警告しています。LHDNへの確認は公式フィードバックフォームまたはコンタクトセンター(03-8911 1000)を使用してください。
⑥ Public Ruling(公的裁定)への注目
2026年3月11日〜24日の間、LHDNは「小額資産特別手当(Special Allowance For Small Value Assets)」に関するPublic Rulingのパブリックコンサルテーションを実施中です(コメント提出先:kufeedback@hasil.gov.my)。事業者・経営者はこうした制度変更の情報も継続的に確認する必要があります。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① LHDN公式サイト(hasil.gov.my)またはMyTax(mytax.hasil.gov.my)にアクセスし、アカウントの有効性を確認。PINナンバーが必要な場合はMyTax上でオンライン申請
- ② 雇用主からEA Formを受領し、EPF拠出明細・医療費・教育費・保険料の領収書を一式準備
- ③ 自分が居住者(182日以上滞在)か非居住者かを確認し、使用するフォーム(Form BE / Form M)を判断
- ④ e-Filingにログインし、所得・控除情報を入力。ByrHASiLまたは指定銀行で税額を納付
- ⑤ **Form BE提出期限(2026年3月)・Form B提出期限(2026年5月1日)**をカレンダーに登録
- ⑥ 銀行口座番号をMyTaxに正確に登録し、還付(EFT)の受け取り準備を完了
- ⑦ e-Lejarで自分の納税口座を確認し、未納残高がないかチェック
- ⑧ マレーシア法人の取締役を兼任している場合は、会社の未納税額がないかを確認(Stoppage Order回避のため)
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下のような疑問は、個人の状況によって答えが異なります。
- 「自分の暦年中の滞在日数は182日を超えているか。渡航・出張が多い年はどう計算するか」
- 「日本とマレーシアの租税条約(二重課税防止条約)は自分のケースに適用されるか。日本での給与所得と二重申告になっていないか」
- 「マレーシアで受け取った配当所得・賃料収入は日本の確定申告でも申告義務があるか」
- 「デジタルノマド・MM2Hビザ保有者の税務上の居住者判定はどうなるか」
- 「マレーシア法人(Sdn Bhd)の取締役として給与を受け取る場合、Form BEとForm Bのどちらで申告すべきか」
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【ブロック3: 次に読むべき関連記事テーマ】
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この記事はマレーシア内国歳入庁(LHDN/IRB)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。