マレーシアの所得税申告(e-Filing)とは
マレーシアの所得税は、日本と同様に年1回の申告制度を採用しています。管轄機関は**マレーシア内国歳入庁(Lembaga Hasil Dalam Negeri Malaysia/LHDN、英語名:Inland Revenue Board of Malaysia/IRBM)**です。
公式サイト(https://www.hasil.gov.my/)および公式税務ポータル「MyTax」(https://mytax.hasil.gov.my/)を通じて、申告・納付・還付受取まで一元管理できます。
日本では税務署・e-Taxを使う確定申告に相当しますが、マレーシアではMyTaxというポータルに一本化されており、PIN番号さえ取得すればオンラインで完結します。
税率・条件・費用(具体的な数字)
■ 申告対象となる主な所得
マレーシアの所得税法上、以下の所得が課税対象となります(公式情報より):
- 給与所得(Employment income)
- 事業所得(Business income)
- 配当所得(Dividends)
- 賃料収入(Rents)
- ロイヤルティ(Royalties)
- 年金(Pensions)
- その他所得(Other income)
■ 2025年分(Year Assessment 2025)の申告期限
| 申告書類 | 対象者 | 申告開始日 | 提出期限 |
|---|---|---|---|
| Form BE | 給与所得者(居住者) | 2026年3月1日 | 2026年3月末日(e-Filing) |
| Form B | 事業所得者(居住者) | 2026年3月1日 | 2026年5月1日 |
| Form E | 法人(雇用主) | 2026年3月1日 | 規定期限内 |
| Form M | 非居住者個人 | 2026年3月1日 | 規定期限内 |
| Form BT/MT/P/TF/TP | 信託・組合等 | 2026年3月1日 | 規定期限内 |
📌 公式出典:LHDN公式サイト「Return Form (RF) Filing Programme For the year 2026」
■ 申告を怠った場合のリスク
LHDNの公式情報によると、未納・申告遅延の場合:
- **税額の増加(tax increase)**が課される
- **裁判所への訴追(court action)**の対象になる
- **出国停止命令(Stoppage Order/Section 104)**により、マレーシアからの出国が制限される
特に会社取締役(Company Directors)は、会社の未納税金についても個人責任を負い、Sec.104による出国停止の対象となる点に注意が必要です。
申請・登録の手順(e-Filing)
STEP 1:MyTaxへのアクセス・PIN番号取得
- https://mytax.hasil.gov.my/ にアクセス
- 初回利用者はPIN番号をMyTax上でリクエスト(公式情報:「PIN Number request is made easier! Just log in to MyTax.」)
- ICカード番号(MyKAD)またはパスポート番号で登録
🇯🇵 日本でいうe-Taxの「利用者識別番号」取得に相当します。
STEP 2:申告書類の選択
- 給与所得のみ → Form BE
- 事業・フリーランス収入あり → Form B
- 非居住者 → Form M
STEP 3:収入・控除情報の入力
- 雇用主から受け取った**EA Form(源泉徴収票)**の数字を入力
- 各種控除(子供・医療費・教育費・EPF拠出等)を申告
STEP 4:税額確認・納付
- 計算結果を確認し、追加納付がある場合はByrHASiLまたは提携銀行経由でオンライン決済
- 電子資金移転(EFT)で銀行口座への還付を受ける場合は、正確な口座番号の登録が必須
STEP 5:申告完了・e-Lejarで確認
- LHDN提供のe-Lejar(オンライン税務台帳)で、自分の納税状況をいつでも確認可能
日本との違い・対比
■ 申告制度の基本比較
| 項目 | マレーシア(LHDN) | 日本(国税庁) |
|---|---|---|
| 申告ポータル | MyTax(mytax.hasil.gov.my) | e-Tax(国税電子申告) |
| 給与所得者の申告期限 | 3月末日(e-Filing) | 3月15日 |
| 事業所得者の申告期限 | 5月1日 | 3月15日 |
| 源泉徴収制度 | MTD(Monthly Tax Deduction) | 源泉徴収+年末調整 |
| 還付方法 | EFT(銀行口座振込) | 銀行口座振込 |
| 税務台帳確認 | e-Lejar(オンライン) | 国税庁サイト・税務署 |
■ 法人税率の対比
| 項目 | マレーシア | 日本(国税庁No.5759より) |
|---|---|---|
| 中小法人(年800万円以下相当部分) | 17%(SME向け優遇あり) | 15%(資本金1億円以下の法人、年800万円以下の部分) |
| 一般法人税率 | 24% | 23.2%(令和4年4月1日以降開始事業年度) |
| 付加価値税(間接税) | SST(Sales & Service Tax)6〜10% | 消費税10%(標準税率)・8%(軽減税率) |
📌 日本の法人税率は国税庁公式情報(No.5759)より引用。マレーシアの法人税率はLHDN公式情報に基づきます。
■ 消費税との違い
日本の消費税(国税庁No.6101)は**標準税率10%(うち地方消費税2.2%)、軽減税率8%(うち地方消費税1.76%)**が全ての財・サービス取引に広く課税される「一般消費税型」です。
一方、マレーシアは日本型の消費税ではなく**SST(Sales and Service Tax)**を採用しており、課税対象・税率の構造が異なります。日本から進出する企業は、この税制の違いを価格設定・会計処理に反映させる必要があります。
日本人が注意すべきポイント
① 居住者・非居住者の区別が申告書類を左右する
マレーシア税法上、居住者(Resident)と非居住者(Non-Resident)では適用税率・控除が大きく異なります。一般的に暦年中に183日以上マレーシアに滞在した場合に居住者とみなされますが、在留日数のカウント方法や例外規定があります。
Form BEは居住者用、Form Mは非居住者用です。誤った申告書類を提出するとペナルティの対象になる可能性があります。
② MTD(Monthly Tax Deduction)は年末調整ではない
日本の給与所得者は年末調整で課税関係がほぼ完結しますが、マレーシアのMTD(月次税控除)はあくまで源泉徴収の仮払いです。追加納付・還付の確認のため、Form BEの申告は原則必要です。
③ CP38通知書への対応
CP38はLHDNが雇用主に発行する追加指示書で、MTDで控除しきれなかった税残額を従業員の給与から追加控除するよう命じるものです。日本にはない仕組みであり、給与明細に反映されたCP38控除を自分で認識していないケースが多く見られます。
④ 出国停止命令(Stoppage Order)のリスク
日本では税金未納でも直ちに出国が止まるケースは稀ですが、マレーシアではSection 104に基づく出国停止命令が個人・会社取締役双方に適用されます。短期出張でも空港で足止めされるリスクがあるため、未納税金の確認を怠ってはいけません。
⑤ 詐欺(Scam)に注意
LHDNはScam Alertとして公式に警告を発しています:
- 電話・SMS・メール・郵便で機密情報を要求されても応じない
- 不審な連絡を受けた場合はフィードバックフォームまたは**コンタクトセンター(03-8911 1000)**に確認する
LHDNは納税者に対してメール等で口座情報を要求することはありません。
⑥ グローバル最低税率(GMT)への対応
LHDNはGlobal Minimum Tax(GMT)を政策対応項目として掲げています。OECDが推進する法人税の最低税率15%ルールに基づくもので、マレーシア法人を設立している日本企業・富裕層は、日本の外国子会社合算税制(CFC税制)との兼ね合いも含めて影響を把握しておく必要があります。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① LHDN公式サイト(hasil.gov.my)にアクセスし、MyTax(mytax.hasil.gov.my)でアカウント・PIN番号を新規登録または確認する
- ② e-Lejarにログインし、自分の納税履歴・未納残高がゼロであることを確認する
- ③ 雇用主から**EA Form(源泉徴収票)**を2026年2月末日までに受け取り、数字を手元に揃える
- ④ 自分の申告区分を確認:給与所得のみ→Form BE(期限:2026年3月末日)、事業所得あり→Form B(期限:2026年5月1日)
- ⑤ e-Filingにログイン → 該当フォームを選択 → 収入・控除を入力 → 税額を確認
- ⑥ 追加納付がある場合はByrHASiLまたは提携銀行経由でオンライン決済を完了
- ⑦ 還付がある場合は正確な銀行口座番号をMyTaxに登録し、EFT還付を受ける設定を確認
- ⑧ 会社取締役は会社の未納税金残高もe-Lejarで確認し、出国停止リスクをゼロにする
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下のような疑問は、個人の状況によって答えが異なり、公式サイトだけでは判断が難しいケースです:
- 「自分のマレーシア在留日数は183日を超えているか、どの年度から居住者として申告すべきか」
- 「日本とマレーシアの租税条約は自分のリモートワーク・フリーランス収入のケースに適用されるか」
- 「**GMT(グローバル最低税率)**はマレーシアに設立した自分の法人にいつから・どのように影響するか」
- 「CP38控除と確定申告の二重払いリスク:自分の給与明細の処理は正しいか」
- 「デジタルノマドビザ(DE Rantau)取得者はForm BEとForm Mどちらで申告すべきか」
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【ブロック3: 次に読むべき関連記事テーマ】
この記事を読んだ方にはこちらもおすすめです:
マレーシアの税制をさらに深く理解したい方は、マレーシアSST(Sales and Service Tax)の仕組みと日本消費税との違いを解説した記事もご覧ください。日本の消費税10%・軽減税率8%とは設計思想が異なるSSTの課税範囲と申告義務を整理しています。
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この記事はマレーシア内国歳入庁(LHDN/IRB)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。