タイのVAT(付加価値税)とは
タイの付加価値税(VAT:Value Added Tax)は、タイ国内での物品販売・サービス提供・輸入に対して課される間接税です。日本の消費税に相当する制度で、タイ歳入局(Revenue Department)が管轄しています。
タイのVATの最大の特徴は、法定税率は10%でありながら、現在は政府の措置により7%に引き下げられて運用されている点です。この7%の暫定税率は継続的に延長されており、2025年現在も適用中です。
日本の消費税が国税(7.8%)+地方消費税(2.2%)の合計10%(軽減税率8%)という二層構造であるのに対し、タイのVATは単一構造でシンプルです。
税率・条件・費用(具体的な数字)
現行税率
| 項目 | タイVAT | 日本の消費税(参考) |
|---|---|---|
| 標準税率 | 7%(暫定)※法定は10% | 10%(国税7.8%+地方消費税2.2%) |
| 軽減税率 | なし(一部ゼロ税率あり) | 8%(食品・新聞等) |
| ゼロ税率(0%) | 輸出品・国際輸送サービス等 | 輸出免税(概念は類似) |
| 免税(Exempt) | 医療・教育・金融等 | 非課税取引(医療・住宅家賃等) |
VAT登録義務の閾値
- 年間売上高が180万バーツ(約750万円相当)を超える事業者はVAT登録が義務
- 180万バーツ以下の小規模事業者は登録免除(任意登録も可能)
- 日本の消費税における免税事業者の基準(課税売上高1,000万円以下)と比較すると、タイの閾値は約750万円相当とやや低い水準
電子サービスへのVAT(VES:VAT for Electronic Service)
2021年9月より施行された制度で、タイ国外に拠点を置く非居住者がタイ国内の個人(非VAT登録者)に対してデジタルサービスを提供する場合に適用されます。
- 対象:動画配信・音楽配信・アプリ・クラウドサービス・オンライン広告等
- 登録義務発生条件:タイ国内の非登録者への年間売上が180万バーツ超
- 申告・納付:月次または四半期ごと
- 対象プラットフォーム:NetflixやGoogleのような電子プラットフォームも対象
申請・登録の手順
①通常のVAT登録(タイ国内事業者)
- 事業開始前または売上が180万バーツを超えた時点から30日以内に申請
- タイ歳入局の管轄税務署(Area Revenue Office)へ必要書類を提出
- 必要書類:法人登記証明書・定款・取締役のパスポート/IDカード・事業所の賃貸契約書等
- VAT登録証( Por.Por.20)の取得
- 税務ID(TIN)を取得し、月次でVAT申告(PP.30フォーム)を翌月15日までに提出
②電子サービス事業者のVAT登録(VES)
- タイ歳入局の公式VES専用ポータル(rd.go.th)にアクセス
- オンラインで登録申請(タイ国内に拠点不要・物理的な手続き不要)
- 登録完了後、四半期ごとにオンラインで申告・納付
- 申告期限:各四半期終了後の翌月末日
③観光客向けVAT還付(VAT Refund for Tourists)
- 対象:タイ非居住の外国人観光客
- 条件:1日2,000バーツ以上の購入・同一店舗での合計5,000バーツ以上の購入
- 「VAT Refund for Tourists」の表示がある加盟店で購入し、PP.10フォームを入手
- タイ出国時にスワンナプーム国際空港またはドンムアン国際空港のVAT還付窓口へ
- 現金還付(手数料控除あり)またはクレジットカード返金を選択
日本との違い・対比(必須)
| 比較項目 | タイVAT | 日本の消費税 |
|---|---|---|
| 標準税率 | 7%(暫定)/ 法定10% | 10%(国税+地方税) |
| 軽減税率 | なし(ゼロ税率は別途あり) | 8%(食品・新聞等) |
| 免税事業者の売上閾値 | 180万バーツ(約750万円) | 1,000万円 |
| 電子サービス課税 | 2021年9月から非居住者に適用 | 2015年から国外事業者申告納税方式 |
| インボイス制度 | TAX INVOICEが存在(法定記載事項あり) | 2023年10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始 |
| 申告サイクル | 原則月次(PP.30) | 原則年次(中間申告あり) |
| 観光客への還付 | 空港での即時還付制度あり | 輸出物品販売場(免税店)方式 |
| 地方税との関係 | VATのみ(地方消費税なし) | 国税+**地方消費税2.2%**の二層構造 |
法人税との組み合わせ(経営者視点)
日本の法人税は資本金1億円以下の中小企業で年800万円以下の所得に15%、超過部分に23.2%(国税庁No.5759より)。タイの法人税は原則20%。VATと法人税を組み合わせた実効税負担は、タイが日本より低くなるケースが多く、タイ法人設立を検討する日本企業にとって重要な比較ポイントとなります。
日本人が注意すべきポイント
⚠️ ポイント①:「電子サービス」はタイ国内顧客がいれば対象
日本からSaaSやデジタルコンテンツをタイ人個人向けに販売している場合、日本にいてもVES登録義務が発生する可能性があります。年間180万バーツ(約750万円)という閾値は、B2C向けデジタルサービスを展開する中小企業でも到達しうる水準です。
⚠️ ポイント②:インボイス(TAX INVOICE)の管理
タイでは仕入税額控除を受けるためにTAX INVOICEの保存が必須。日本の2023年10月開始のインボイス制度と考え方は類似していますが、タイでは以前から厳格に運用されています。TAX INVOICEと通常の領収書(Receipt)は別物であり、混同すると仕入税額控除が否認されます。
⚠️ ポイント③:月次申告の負担
日本では消費税申告は年1回(中間申告除く)が基本ですが、タイでは毎月15日までに前月分を申告・納付する義務があります。経営者・起業家はキャッシュフロー管理と経理体制の整備を事前に計画してください。
⚠️ ポイント④:7%は「暫定」である点
タイのVAT7%は政府の政令により維持されている暫定税率であり、法定税率は10%です。政策変更により10%に戻る可能性があり、長期的な事業計画・価格設定にはこのリスクを織り込む必要があります。
⚠️ ポイント⑤:Top-up Tax(グローバルミニマム課税)の動向
タイ歳入局は2024年末に「Top-up Tax(Emergency Decree on Top-up Tax, B.E. 2567)」を公布しました。これはOECDのグローバルミニマム税(最低法人税率15%)に対応する制度で、年間連結売上7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループが対象です。タイ子会社を持つ日本の大企業グループは、VATとは別にこの新制度の影響を確認する必要があります。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① タイ歳入局公式サイト(rd.go.th/english)にアクセスし、VATセクション・VESセクションを確認する
- ② 自社のタイ国内向け売上(物品・サービス・電子サービス)を集計し、年間180万バーツ(約750万円)を超えるか確認する
- ③ 電子サービス提供者の場合、VES(VAT for Electronic Service)の登録要件に該当するかチェックリストで確認する
- ④ タイ法人がある場合、経理担当者と毎月15日のVAT申告スケジュール(PP.30)を共有・カレンダー登録する
- ⑤ タイの仕入業者から受領している請求書がTAX INVOICE(正式なVAT請求書)かどうかを確認し、通常Receiptと分類整理する
- ⑥ 連結売上が7.5億ユーロ以上の企業グループに属する場合、Top-up Tax(グローバルミニマム課税)の影響を確認する
- ⑦ タイ渡航予定がある場合、VAT還付対象店舗(「VAT Refund for Tourists」表示)での購入時にPP.10フォームの取得を忘れずに行い、空港出国前に還付窓口へ
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下は、個別の事業形態・取引構造・在留状況によって判断が異なるため、一般情報だけでは結論が出しにくい論点です:
- 「自分のデジタルサービスの顧客がタイ国内の個人か法人かを区別する方法と、VES登録の要否」
- 「タイ法人と日本親会社間のサービス料・ロイヤルティ支払いにVATが課されるか(移転価格とVATの交差点)」
- 「タイ非居住者として観光ビザ滞在中に現地でサービス収入を得た場合のVAT・所得税の扱い」
- 「Top-up Tax(B.E. 2567)が自社グループのタイ子会社に与える具体的な税負担増加額の試算」
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【ブロック3: 次に読むべき関連記事テーマ】
この記事を読んだ方にはこちらもおすすめ:
タイで会社を設立する日本人向けガイドでは、VAT登録と同時に必要となる法人設立手続き・BOI恩典・外国事業法(FBA)の壁を詳しく解説しています。タイ法人の設立を検討中の起業家・経営者に特に役立つ内容です。
また、タイの個人所得税と日本との租税条約に関する記事では、タイに長期滞在する就労者・経営者が直面する「居住者判定(183日ルール)」と、日本・タイ間の二重課税を防ぐ条約の活用法を具体的な税率数字とともに紹介しています。
さらに、グローバルミニマム課税(Top-up Tax)とタイ進出日本企業への影響では、2024年末に公布されたEmergency Decree on Top-up Taxの詳細と、対象となる多国籍企業グループが今すぐ取るべき対応策を解説しています。
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この記事はタイ歳入局(Revenue Department)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。