この記事のポイント
シンガポールで外国人が就労するには、MOM(Ministry of Manpower)が発行する就労パスが必要です。主な就労パスはEP(Employment Pass)、S Pass、WP(Work Permit)の3種類で、それぞれ給与水準や資格要件が異なります。2023年9月に導入されたCOMPASS(EP向けのポイント評価システム)により、EP取得のハードルが大きく変わりました。本記事では各パスの条件を比較し、最適なパス選択をサポートします。
就労パスの比較一覧
主要3パスの比較表
| 項目 | EP | S Pass | WP |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 管理職・専門職 | 中技能労働者 | 技能労働者 |
| 最低月給 | 5,600 SGD(約694,875円) 〜 | 3,150 SGD(約390,867円) 〜 | 業種による |
| 年齢加算 | 年齢に応じて引き上げ | 年齢に応じて引き上げ | なし |
| 学歴要件 | 大学卒相当以上 | ディプロマ相当以上 | 業種による |
| COMPASS | 必要(40点以上) | 不要 | 不要 |
| 有効期間 | 初回2年、更新3年 | 初回2年、更新3年 | 最大2年 |
| 家族帯同(DP) | 月給 6,000 SGD(約744,509円) 以上 | 不可 | 不可 |
| 雇用主の外国人枠 | なし(COMPASSで調整) | 業種別の割当枠あり | 業種別の割当枠あり |
| PR申請資格 | あり | あり | なし |
金融セクターの最低給与(2026年)
金融セクターでは一般企業より高い最低給与が設定されています。
| パス種別 | 一般企業 | 金融セクター |
|---|---|---|
| EP | 5,600 SGD(約694,875円) | 6,200 SGD(約769,326円) |
| S Pass | 3,150 SGD(約390,867円) | 3,650 SGD(約452,910円) |
EP(Employment Pass)の詳細
COMPASS評価システム
2023年9月から導入されたCOMPASS(Complementarity Assessment Framework)は、EP申請者を4つの基本項目と2つのボーナス項目で評価するポイントシステムです。合計40点以上で合格となります。
| 評価項目 | 内容 | 配点 |
|---|---|---|
| C1: 給与 | 同業種・同年齢のローカル給与との比較 | 0/10/20点 |
| C2: 学歴 | 学位の有無と大学のランキング | 0/10/20点 |
| C3: 多様性 | 企業内の国籍の多様性 | 0/10/20点 |
| C4: 地元雇用比率 | 企業のローカル雇用の状況 | 0/10/20点 |
| ボーナスA | 技能不足リスト(Shortage Occupation List)の職種 | +10点 |
| ボーナスB | 戦略的経済優先事項への貢献 | +10点 |
EP申請の流れ
| ステップ | 内容 | 所要期間 |
|---|---|---|
| 1 | 雇用主がMOMオンラインでEP申請 | 即日 |
| 2 | MOMによる審査 | 3〜8週間 |
| 3 | IPA(In-Principle Approval)発行 | — |
| 4 | 入国後、EPカード発行手続き | 1〜2週間 |
EPの詳細についてはシンガポールEP完全ガイドも参照してください。
S Passの詳細
S Passの特徴
S Passは中技能レベルの外国人労働者向けパスです。EPよりも給与要件が低い一方、企業ごとの**外国人割当枠(quota)とLevy(外国人雇用税)**が適用されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最低月給 | 3,150 SGD(約390,867円) (2025年9月〜) |
| 割当枠 | サービス業:全従業員の10%、製造業:15% |
| Levy(月額) | 450 SGD(約55,838円) (割当枠内)、650 SGD(約80,655円) (枠超過) |
| 有効期間 | 初回2年、更新3年 |
EPとS Passの選択基準
| 基準 | EP推奨 | S Pass推奨 |
|---|---|---|
| 月給 | 5,600 SGD(約694,875円) 以上 | 3,150 SGD(約390,867円) 〜5,600 |
| 職種 | 管理職・専門職 | 技術者・中間管理職 |
| 家族帯同 | 可能(月給6,000以上) | 不可 |
| PR申請 | 有利 | 可能だが不利 |
WP(Work Permit)の詳細
WPの概要
WPは技能労働者向けの最も基本的な就労パスです。建設、製造、サービス、海事の各セクターで広く利用されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象国籍 | セクターにより指定国あり |
| 給与要件 | 最低給与規定なし(業種による) |
| 年齢制限 | 18〜50歳(マレーシア人は58歳まで) |
| 有効期間 | 最大2年(更新可能) |
| Levy | 300 SGD(約37,225円) 〜950/月(業種・技能レベルによる) |
WPの制限
- シンガポール人との婚姻にはMOMの許可が必要
- 家族帯同不可
- PR申請不可
- 転職には新しいWPの取得が必要
その他の就労関連パス
ONE Pass
年収 300,000 SGD(約37,225,470円) 以上のトップ人材向けパスです。詳細はONE Pass完全ガイドを参照してください。
EntrePass
シンガポールで起業する外国人向けのパスです。EntrePassガイドで詳しく解説しています。
Dependent’s Pass(DP)
EP保持者の配偶者・子供向けの帯同パスです。DP保持者がシンガポールで就労するには、LOC(Letter of Consent)の取得が必要です。DPガイドを参照してください。
日本人が知っておくべき注意点
給与の年齢加算
EP・S Passの最低給与は年齢に応じて引き上げられます。例えば、40代のEP申請者は若年者よりも高い給与水準が求められます。MOMのSelf-Assessment Toolで事前に確認してください。
COMPASS対策
日本人がCOMPASSで高得点を得るためのポイント:
- C1(給与): 同業種・同年齢のローカル上位35%以上の給与で20点
- C2(学歴): 世界トップ大学(QSランキング等)卒業で20点
- C3(多様性): 日本人が少ない企業では有利、日本人が多い企業では不利
- C4(地元雇用): 企業のローカル雇用比率が高ければ有利
日本との租税条約
シンガポールと日本は租税条約を締結しています。就労パスの種類に関わらず、シンガポールでの給与所得はシンガポールで課税されます。詳細は日本・シンガポール租税条約ガイドを参照してください。
よくある質問(FAQ)
Q1: EPとS Pass、どちらが取りやすいですか?
S Passの方が給与要件が低いため、取得しやすいように見えますが、企業ごとの割当枠制限があるため、枠が埋まっている場合は申請できません。EPはCOMPASS評価で40点以上取れれば割当枠の制限はありません。
Q2: 就労パスを持ったまま副業はできますか?
EP・S Pass保持者は原則として申請した雇用主の下でのみ就労可能です。副業にはMOMの許可が必要です。ONE Passは複数企業での就労が認められています。
Q3: 就労パスが失効した場合、どのくらい滞在できますか?
就労パスの失効後は、Short-Term Visit Pass(30日間)に自動切替となり、その間に出国するか新しいパスを取得する必要があります。
Q4: 日本の運転免許証はシンガポールで使えますか?
EP・S Pass保持者は日本の運転免許証をシンガポールの免許に書き換えることができます。日本の運転免許の海外利用も参照してください。
Q5: 就労パスの申請費用はいくらですか?
EP・S Passの申請手数料は 105 SGD(約13,029円) 、発行手数料は 225 SGD(約27,919円) です(Multiple Journey Visaの場合)。費用は通常、雇用主が負担します。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- MOMのSelf-Assessment Toolでの事前評価
- COMPASS得点のシミュレーション
- 必要書類の準備
専門家に相談すべきこと:
- COMPASS対策と最適なパス選択(移民コンサルタント)
- 給与パッケージの設計(雇用主・人事コンサルタント)
- 会社設立とEP申請の組み合わせ(法人設立ガイド)
シンガポールの就労パス制度は頻繁に改定されるため、MOMの公式サイトで最新情報を確認してから申請してください。