シンガポールのEmployment Pass(EP)は2023年のCOMPASS導入で審査が大幅に厳格化。最低月給SGD 5,600、40ポイント以上のスコアが必要。年齢別の最低給与、落ちるパターン、日本人が有利なポイントを正直に解説。
この記事のポイント
- 2023年9月導入の**COMPASSフレームワーク(40ポイント以上)**がEP審査の核。給与・学歴・企業の多様性・業界スキル不足の4軸で評価される
- 最低月給は5,600 SGD(約694,875円) だが、年齢が上がるほど要求水準が急上昇。40代で12,000 SGD(約1,489,019円) 以上、50代以上は極めて厳しい
- 日本のtop-tier大学(旧帝大・早慶)はCOMPASSの学歴ポイントで有利。AI・サイバーセキュリティ等のShortage Occupation Listも加点要素
この記事はシンガポール人材開発省(MOM)の公式情報(2026年3月確認)に基づいています。
シンガポールEPとは
Employment Pass(EP)は、シンガポールで専門職・管理職・経営者として働くための就労ビザです。シンガポールの就労ビザの中で最も一般的で、日系企業の駐在員やIT企業のエンジニアの多くがこのビザを取得しています。
2023年9月に**COMPASS(Complementarity Assessment Framework)**が導入され、従来の「給与が足りれば通る」という単純な審査から、複数の評価軸を点数化するスコアリング制度に変わりました。
この変更により、同じ給与でも受かる人と落ちる人が明確に分かれるようになっています。
COMPASSフレームワーク — EP審査の核心
仕組み
COMPASSは以下の4つの基本要素(C1〜C4)と2つのボーナス要素で構成され、合計40ポイント以上で合格です。
| 要素 | 評価内容 | 最大ポイント |
|---|---|---|
| C1: 給与 | 同セクター・年齢帯のローカル人材比で上位か | 20点 |
| C2: 学歴 | top-tier大学かどうか | 20点 |
| C3: 企業の多様性 | 企業内の国籍多様性(同一国籍の偏りがないか) | 20点 |
| C4: ローカル雇用比率 | 企業が十分にシンガポール人を雇用しているか | 20点 |
| ボーナス1: Shortage Occupation List | スキル不足職種に該当するか | 20点 |
| ボーナス2: 戦略的経済優先事項 | 政府の優先事業に合致するか | 10点 |
各要素の配点基準
C1: 給与(0/10/20点)
- 20点: 同セクター・同年齢帯のローカルPMET(Professional, Manager, Executive, Technician)の上位10%以上の給与
- 10点: 上位35%以上
- 0点: 上位35%未満
C2: 学歴(0/10/20点)
- 20点: top-tier大学の学位保持者
- 10点: 学位保持者(top-tier以外)
- 0点: 学位なし
日本人に有利なポイント: MOMが認定するtop-tier大学に、以下の日本の大学が含まれています:
- 東京大学
- 京都大学
- 東京工業大学
- 大阪大学
- 東北大学
- 名古屋大学
- 早稲田大学
- 慶應義塾大学
これらの大学の卒業者は自動的にC2で20点を獲得できます。
C3: 企業の多様性(0/10/20点)
- 20点: 企業内のPMETで、申請者と同一国籍の比率が5%未満
- 10点: 同一国籍の比率が25%未満
- 0点: 25%以上
日本人の落とし穴: 日系企業のシンガポール拠点は、日本人駐在員の比率が高い傾向があります。日本人が多い企業ではC3で0点になるリスクがあります。
C4: ローカル雇用比率(0/10/20点)
- 20点: 同セクターの上位50%以上のローカルPMET雇用比率
- 10点: 上位75%以上
- 0点: 下位25%
年齢別の最低給与 — 残酷な現実
EPの最低月給は5,600 SGD(約694,875円) ですが、これは23歳の新卒の最低ラインです。年齢が上がるほど、MOMが期待する給与水準は上がります。
年齢別の現実的な最低月給
| 年齢帯 | 最低月給の目安 | COMPASS C1で10点を取れる目安 | 日本円換算(概算) |
|---|---|---|---|
| 23〜25歳 | 5,600 SGD(約694,875円) | 6,500 SGD(約806,552円) | 約70〜80万円 |
| 26〜30歳 | 6,500 SGD(約806,552円) | 8,000 SGD(約992,679円) | 約80〜100万円 |
| 31〜35歳 | 8,000 SGD(約992,679円) | 10,500 SGD(約1,302,891円) | 約100〜130万円 |
| 36〜40歳 | 10,500 SGD(約1,302,891円) | 13,000 SGD(約1,613,104円) | 約130〜160万円 |
| 41〜45歳 | 12,000 SGD(約1,489,019円) | 15,000 SGD(約1,861,274円) | 約150〜190万円 |
| 46〜50歳 | 14,000 SGD(約1,737,189円) | 18,000 SGD(約2,233,528円) | 約175〜225万円 |
| 50歳以上 | 16,000 SGD(約1,985,358円) 〜 | 20,000 SGD(約2,481,698円) 〜 | 約200万円〜 |
金融セクターはさらに高い: 金融業の最低月給は6,200 SGD(約769,326円) からスタートし、年齢別の基準も全体的に高くなります。
年齢と給与の残酷な関係
正直に言います。40代以上でEPを取得するのは、かなり厳しいです。
- 40代でSGD 10,000未満: COMPASSのC1で0点になる可能性が高い。他の要素(C2〜C4+ボーナス)で40点を稼がなければならない
- 50代以上: 月給20,000 SGD(約2,481,698円) 以上(年収3,000万円以上)でないと、C1で十分なポイントが取れない。役員・パートナークラスでないと現実的ではない
受かる人のパターン
パターン1: 20代〜30代前半・旧帝大/早慶卒・IT系
最も有利なパターンです。
- C1(給与): 月給SGD 8,000〜 → 10〜20点
- C2(学歴): top-tier大学 → 20点
- C3(多様性): 外資系・ローカル企業なら → 10〜20点
- C4(ローカル雇用): まともな企業なら → 10点
→ 合計50〜70点で余裕合格
パターン2: Shortage Occupation List該当者
MOMが指定するスキル不足職種に該当すると、ボーナス20点が加算されます。2026年時点の主な対象職種:
- AI・機械学習エンジニア
- データサイエンティスト
- サイバーセキュリティ専門家
- ブロックチェーン開発者
- 量子コンピューティング研究者
- 航空宇宙エンジニア
- FinTechスペシャリスト
この20点があると、他の要素が弱くても合格ラインに届く可能性が大幅に上がります。
パターン3: 大企業のシンガポール拠点への転籍
日系大手のシンガポール拠点(トヨタ、三菱、野村、みずほ等)は、ローカル雇用比率が高く、C4で10〜20点を取りやすい。ただし、日本人比率が高い場合はC3で不利になるため注意。
落ちるパターン
パターン1: 給与が年齢に対して低い
最も多い却下理由です。35歳で月給SGD 7,000だと、C1で0点になる可能性が高い。日本での給与水準をベースに交渉すると、シンガポールの相場に対して低くなりがちです。
パターン2: 企業のローカル雇用比率が低い
小規模なスタートアップや、外国人比率が極端に高い企業はC4で0点になります。スポンサー企業の選択はEP取得の成否を大きく左右します。
パターン3: 学歴認証が通らない
MOMは学歴を厳格に検証します。以下のケースで問題になります:
- 大学の英語名がMOMのデータベースと一致しない
- 卒業証明書の英文が不適切
- オンライン大学・通信制大学(一部認められない)
パターン4: 日系企業の日本人比率が高い
日系企業のシンガポール拠点に30人中10人が日本人だと、日本人比率33%。C3で0点になります。この場合、他の3要素で40点を取らなければなりません。
パターン5: 40代以上で一般的な管理職
40代の「普通の管理職」(月給SGD 10,000〜12,000)は、COMPASSで苦戦するケースが多い。年齢に対して給与が低いと判断され、C1で0点になります。
日本人が有利なポイント
- 学歴: 旧帝大・早慶はtop-tier認定。C2で20点を確保できる
- Shortage Occupation List: 日本のAI/データサイエンス/サイバーセキュリティ人材はシンガポールでも需要が高い
- 日系大手企業の信頼性: スポンサー企業の実績・財務状況もMOMの審査に影響する。Fortune 500企業は有利
- 若さ: 20代〜30代前半は最低給与のハードルが低い。若いうちに渡星するのが圧倒的に有利
日本人が不利なポイント
- 日系企業の日本人比率: C3(多様性)で減点されるリスク
- 日本の給与水準: シンガポールと比較して低い場合が多く、C1で不利になりやすい
- 英語力の壁: EP自体に英語要件はないが、面接や業務で英語力が不足していると、企業がオファーを出しにくい
COMPASS点数シミュレーション
ケース1: 28歳・東大卒・AIエンジニア・外資系企業(月給SGD 9,000)
| 要素 | ポイント | 理由 |
|---|---|---|
| C1: 給与 | 20点 | 28歳でSGD 9,000は上位層 |
| C2: 学歴 | 20点 | 東大はtop-tier |
| C3: 多様性 | 20点 | 外資系で日本人比率低い |
| C4: ローカル雇用 | 10点 | 一般的な外資系水準 |
| ボーナス: SOL | 20点 | AIエンジニアは対象 |
| 合計 | 90点 | 余裕合格 |
ケース2: 42歳・MARCH卒・営業マネージャー・日系企業(月給SGD 11,000)
| 要素 | ポイント | 理由 |
|---|---|---|
| C1: 給与 | 0点 | 42歳でSGD 11,000は低め |
| C2: 学歴 | 10点 | MARCH=top-tier外の学位 |
| C3: 多様性 | 0点 | 日系企業で日本人比率高い |
| C4: ローカル雇用 | 10点 | 日系大手なら標準的 |
| ボーナス: SOL | 0点 | 営業は対象外 |
| 合計 | 20点 | 不合格 |
このケースの対策: 給与をSGD 15,000以上に交渉する(C1で10点)、日本人比率の低い企業を選ぶ(C3で10点)で合計40点に到達可能。
よくある質問(FAQ)
Q1: EPの申請は自分でできますか?
いいえ。 EPは雇用主(シンガポール企業)が申請するものです。個人では申請できません。まずシンガポールでの就職先を確保する必要があります。
Q2: COMPASSの点数は事前に確認できますか?
はい。 MOMが提供する**Self-Assessment Tool(SAT)**で事前にCOMPASSの点数をシミュレーションできます。申請前に必ず確認しましょう。
Q3: EPが却下された場合、再申請できますか?
はい。 ただし、同じ条件で再申請しても結果は変わりません。給与交渉、企業変更、追加資格の取得など、COMPASSスコアを改善する具体的な変更が必要です。
Q4: EP保持者の配偶者はシンガポールで働けますか?
月給6,000 SGD(約744,509円) 以上のEP保持者の配偶者は、Dependant’s Passを取得してシンガポールに滞在できます。ただし、配偶者が就労するにはLetter of Consent(LOC)が必要で、これにも雇用主からの申請が必要です。
Q5: EPの更新は初回より簡単ですか?
2023年9月以降、更新時にもCOMPASSが適用されます。初回と同じ基準で再評価されるため、「一度取れたら安泰」ではありません。特に年齢が上がって給与が据え置きだと、更新で落ちるリスクがあります。
Q6: 日本の大学がtop-tierリストに含まれているか確認する方法は?
MOMの公式サイトでtop-tierの大学リストは公開されていませんが、SAT(Self-Assessment Tool)に大学名を入力すると、top-tier認定されているかどうかが確認できます。
Q7: COMPASSが免除されるケースはありますか?
はい。 月給22,500 SGD(約2,791,910円) 以上の場合、COMPASSは免除されます。また、1ヶ月未満の短期EP、企業内転勤者(Intra-Corporate Transferee)の一部も免除対象です。
まとめ
自分でできること
- MOMのSelf-Assessment ToolでCOMPASSスコアをシミュレーションする
- 自分の大学がtop-tier認定されているか確認する
- Shortage Occupation Listに自分の職種が含まれるか確認する
- シンガポールでの給与相場を調査し、年齢に対して十分な水準で交渉する
専門家に相談すべきこと
- COMPASSスコアが40点ギリギリの場合の対策(企業選定、給与交渉の戦略)
- EP却下後の再申請戦略
- シンガポールの税務(個人所得税、日星租税条約、CPF制度)
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