この記事のポイント
- シンガポールのEPは2023年9月からCOMPASS(ポイント制)が導入され、給与だけでなく多角的な評価基準で審査される
- 2025年1月以降、EP最低月額給与は5,600 SGD(約697,038円) (金融セクターは6,200 SGD(約771,720円) )
- COMPASS評価では40ポイント以上が必要で、給与・学歴・国籍多様性・スキルボーナスの4軸で審査
- 2026年3月時点の情報です。MOMは定期的に基準を改定しています
この記事は2026年3月時点のシンガポール人材省(MOM)の公式情報に基づいています。最新情報はMOM公式サイトで必ずご確認ください。
Employment Pass(EP)とは
Employment Pass(EP)は、シンガポールで専門職・管理職・経営幹部として就労する外国人向けの就労許可証です。シンガポールの就労ビザの中で最も一般的であり、日本人駐在員や現地採用者の多くがこのパスを取得しています。
EPの有効期間は初回が最長2年、更新時は最長3年です。
EP申請の基本条件
最低月額給与要件
| 対象者 | 最低月額給与 |
|---|---|
| 一般セクター | 5,600 SGD(約697,038円) |
| 金融セクター | 6,200 SGD(約771,720円) |
| 経験年数に応じた加算 | 年齢・経験に応じて段階的に上昇 |
給与要件は年齢とともに上昇します。例えば、40代半ばの申請者の場合、一般セクターでも10,700 SGD(約1,331,840円) 以上の月給が求められる場合があります。MOMの「Employment Pass Self-Assessment Tool(SAT)」で事前に確認できます。
その他の基本条件
- シンガポールで登録された企業からのジョブオファーがあること
- 大学卒業以上の学歴(著名大学であればボーナスポイント)
- 管理職、専門職、またはエグゼクティブの職位であること
COMPASS制度の詳細
COMPASSとは
COMPASS(Complementarity Assessment Framework)は、2023年9月に導入されたポイント制の評価フレームワークです。EP申請者はCOMPASSの4つの基本要素で評価され、合計40ポイント以上を獲得する必要があります。
評価基準
各要素について、基準を上回れば20ポイント、基準を満たせば10ポイント、基準以下は0ポイントが付与されます。
| 評価要素 | 内容 | 20ポイント | 10ポイント | 0ポイント |
|---|---|---|---|---|
| C1: 給与 | 同セクター・年齢層の現地給与との比較 | 90パーセンタイル以上 | 65パーセンタイル以上 | 65パーセンタイル未満 |
| C2: 学歴 | 学位・出身大学の評価 | 世界トップ大学 | 学位保持者 | 学位なし |
| C3: 国籍多様性 | 企業内の同一国籍者の割合 | 割合が低い | 中程度 | 割合が高い |
| C4: 現地雇用支援 | 企業のPMET(専門職・管理職等)における現地人比率 | 比率が高い | 中程度 | 比率が低い |
ボーナスポイント(各10ポイント)
基本要素に加え、以下の条件に該当すればボーナスポイントを獲得できます。
- スキルボーナス: MOMの「人材不足職業リスト(Shortage Occupation List)」に該当する職種
- 戦略的経済優先ボーナス: シンガポール経済開発庁(EDB)等との連携パートナーシップを持つ企業
COMPASS免除対象
以下の場合はCOMPASS審査が免除されます。
- 月額固定給与が22,500 SGD(約2,800,598円) 以上の場合
- 企業内転勤(1年以内の短期転勤)
- 1ヶ月以内の短期就労
申請手順
ステップ1: 雇用主による事前準備
- 企業がMOMのポータルサイト「myMOM Portal」にアカウントを作成
- 求人広告をMyCareersFuture.sgに14日間掲載(公正な採用プロセスの証明、一部免除あり)
- COMPASS自己評価ツールでポイントを事前確認
ステップ2: オンライン申請の提出
- 雇用主(または認定エージェント)がEP Onlineで申請
- 必要書類をアップロード: パスポート、学歴証明書、職歴証明書、写真等
- 申請手数料: 105 SGD(約13,069円)
ステップ3: 審査(3〜8週間)
- MOMによる審査。結果はEP Onlineで通知
- 追加書類の提出を求められる場合あり
- 承認後、In-Principle Approval(IPA)レターが発行される
ステップ4: EP発行手続き
- IPAレター発行後、シンガポールに入国
- EPサービスセンターで指紋登録・写真撮影
- EPカードの発行: 225 SGD(約28,006円)
- 通常、登録から4営業日以内にカードが届く
処理期間の目安
| ステップ | 所要期間 |
|---|---|
| MyCareersFuture求人掲載 | 14日間(必須) |
| 書類準備 | 1〜2週間 |
| MOM審査 | 3〜8週間(大半は3週間以内) |
| IPA発行〜EP取得 | 1〜2週間 |
| 合計 | 約6〜12週間 |
家族帯同(Dependant’s Pass: DP)
EP保持者は、月額固定給与が6,000 SGD(約746,826円) 以上であれば、配偶者と21歳未満の子どものDependant’s Pass(DP)を申請できます。
DPの主なルール
- DP保持者は原則として就労不可(別途Letter of Consent: LOCが必要)
- EP保持者の月額固定給与が12,000 SGD(約1,493,652円) 以上であれば、両親のLong Term Visit Pass(LTVP)も申請可能
- DP/LTVPの有効期間はEPの有効期間に連動する
DP申請の費用
- 申請手数料: 105 SGD(約13,069円) (1人あたり)
- カード発行手数料: 225 SGD(約28,006円) (1人あたり)
日本人がEP申請で注意すべき点
COMPASS C3(国籍多様性)への影響
シンガポールには多くの日本企業が進出しており、日本人社員の割合が高い企業ではC3のスコアが低くなる可能性があります。新たに日本人を採用する場合、他の要素で十分なポイントを確保する戦略が必要です。
学歴の認証
日本の大学の学位はMOMに認められていますが、学位証明書の英文翻訳が必要です。MOMが追加で学歴の真正性確認(verification)を行う場合があり、その際は数週間の追加期間が発生します。
更新時の注意
EP更新時にもCOMPASS基準が適用されます。更新時点での給与要件は初回申請時より引き上げられている可能性があるため、更新の6ヶ月前から条件を確認しておくことを推奨します。
よくある質問(FAQ)
Q1: EPの申請は自分でできますか、それとも会社を通じてですか?
EPの申請主体は雇用主(または認定エージェント)です。個人で直接申請することはできません。起業目的の場合はEntrePassという別のパスを検討してください。
Q2: EP申請が却下された場合、再申請は可能ですか?
可能です。却下理由を分析し、給与の引き上げ、職位の変更、追加書類の提出などで条件を改善した上で再申請できます。却下から再申請までに待機期間はありません。
Q3: EPとS Passの違いは何ですか?
EPは専門職・管理職向け(最低月給5,600 SGD(約697,038円) )、S Passは中程度のスキルレベルの職種向け(最低月給3,150 SGD(約392,084円) )です。S Passには企業ごとの発行枠(クオータ)と外国人雇用税が課されますが、EPにはこれらの制限がありません。
Q4: COMPASSのスコアが足りない場合の対策は?
給与の引き上げ(C1改善)、スキルボーナス対象職種への該当確認、企業の国籍多様性の向上(C3改善)が主な対策です。MOMの自己評価ツールで事前にシミュレーションし、足りない要素を特定することが重要です。
Q5: EPからPermanent Resident(PR)への切り替えは可能ですか?
可能です。EP保持者はシンガポールPRに申請できます。一般的にはEP取得後2年以上の滞在実績があると承認率が高まるとされています。申請はICA(移民検問庁)のe-PRシステムから行います。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- MOMのSAT(自己評価ツール)でのCOMPASSポイント事前確認
- 必要書類の準備(学歴証明書の英文翻訳、職歴証明書)
- EP制度の基本的な理解と雇用主との条件交渉
専門家に相談すべきこと:
- COMPASSスコアが基準ぎりぎりの場合の戦略立案
- 学歴が条件を満たさない場合の代替手段の検討
- 起業目的の場合のEntrePass vs EPの比較検討
- 企業のコンプライアンス対応(公正な雇用慣行ガイドラインへの適合)
シンガポールのEP制度はCOMPASS導入により透明性が高まりましたが、同時に申請の戦略性が求められるようになりました。事前のスコアシミュレーションと十分な書類準備が、スムーズな取得の鍵です。