この記事のポイント

📌 このページはシンガポール人材省(MOM)の公式情報(2026年3月20日確認)に基づいています。


Employment Pass(EP)とは

**Employment Pass(EP)**は、シンガポール人材省(Ministry of Manpower、MOM)が発行する、外国人の専門職(Professionals)・管理職(Managers)・経営幹部(Executives)・技術者(Technicians)向けの就労ビザです。

シンガポールで外国人が合法的に就労するための最上位の就労許可であり、日本でいう「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に相当します。ただし、審査方式・透明性・雇用主への義務付けが日本の制度と大きく異なります。

**2023年9月から導入されたCOMPASS(Complementarity Assessment Framework)**により、単純な給与基準だけでなく、企業の採用姿勢・多様性・戦略的優先度も複合的に評価されるようになりました。


申請の2段階審査:COMPASS(Complementarity Assessment Framework)

Stage 1:給与基準(最低月給要件)

職種・セクター最低月給
一般職種SGD 5,600/月以上
金融セクターSGD 5,600以上
不足スキルを持つ経験豊富なIT専門職(2023年9月〜)5年間の長期EP対象

※ 1 SGD ≈ 110円で換算:SGD 5,600 ≈ 約61万円/月

年齢別の給与水準の目安(参考):

Stage 1をクリアしただけでは不合格。必ずStage 2(COMPASS評価)に進みます。

Stage 2:COMPASSスコア評価(40点以上で合格)

COMPASSでは以下の6つの評価要素で採点され、合計40点以上が必要です。

C1:給与(Salary)—— 20点満点

C2:資格・学歴(Qualification)—— 20点満点

C3:多様性(Diversity)—— 20点満点

C4:地域本部・戦略的活動(Regional HQ / Strategic Activities)—— 20点満点

ボーナスポイント(Bonus Points)—— 最大20点加算


EP申請の手順(7ステップ)

ステップ1:MyCareersFutureへの求人掲載(Fair Consideration Framework)

雇用主はMyCareersFuture.sg(シンガポール政府公式求人ポータル)にポジションを最低14日間掲載し、すべての求職者(特にシンガポール人・永住権者)を公平に選考したことを証明する必要があります。

これを怠ると申請が却下されるリスクがあります。日本の採用プロセスにはない義務です。

ステップ2:Self-Assessment Tool(SAT)で事前診断

MOM公式の「Employment/S Pass Self-Assessment Tool」(https://www.mom.gov.sg/eservices/employment-s-pass-self-assessment-tool)を使い、申請前に合格可能性を無料でシミュレーションできます。

ステップ3:必要書類の準備

書類詳細
パスポートコピー有効期限6ヶ月以上
証明写真MOM指定のサイズ・背景(通常4×6cm)
学歴証明書大学卒業証書・成績証明書(英語版)
職歴証明過去の雇用契約書・在職証明書・推薦状
オファーレター給与・職種・開始日が明記されたもの
企業書類雇用主のACRA登録証・会社登記簿謄本

日本語の書類は英語訳が必須。大学の英語版卒業証明書を直接取り寄せるのが最速。翻訳が必要な場合はMOM認定の翻訳者による公証が必要。

ステップ4:Employment Pass eServiceからオンライン申請

雇用主(またはその代理人)がEmployment Pass eService(https://www.mom.gov.sg/eservices/employment-pass-eservice)にログインし、申請フォームを提出します。

申請手数料:SGD 105(ただし公式で最新料金を確認)

ステップ5:審査・追加書類要求

通常3〜8週間で審査が進みます。追加書類の提出を求められる場合もあります。

eServiceの「Check work pass and application status」機能で申請状況をリアルタイム確認できます。

ステップ6:In-Principle Approval(IPA)の受領

承認された場合、**IPA(内定承認書)**が発行されます。

重要:IPA有効期間は通常6ヶ月。この期間内にシンガポール入国し、EPカード取得を完了しなければ、IPAが失効して再申請が必要になります。日本での退職・引越しのスケジュールを逆算して計画が必須です。

ステップ7:シンガポール入国後のEPカード取得

シンガポール入国後、MOMオフィス(Bukit Merah)に出頭してEPカード(ICチップ入り)を受け取ります。生体情報(指紋)の登録が必要。

発行手数料:SGD 225(ただし公式で最新料金を確認)


EP申請に必要な書類チェックリスト

個人提出書類

雇用主が提出する書類

翻訳・認証


EP保持者の権利・制度

1. 就労の自由

EPを保有すると、ビザに記載された雇用主のもとで合法的に就労できます。

給与は最低月給基準を継続して満たす必要があります。給与が基準を下回った場合、MOMから指導を受ける可能性があります。

2. 家族帯同(Dependent’s Pass / Long-Term Visit Pass)

EP保持者の家族は以下の条件で帯同できます:

パスの種類対象者条件
Dependent’s Pass(DP)配偶者・21歳未満の未婚の子どもEP保持者の月給がSGD 6,000以上
Long-Term Visit Pass(LTVP)内縁の配偶者・21歳以上の子ども・障がい児・親EP保持者の月給がSGD 6,000以上(個別審査)

重要:配偶者がシンガポールで就労する場合、別途「Letter of Consent(LOC)」の申請が必須です。LOCはDP保持者が取得し、雇用主がMOMに申請します。

3. 永住権(PR)申請の資格

EP保持者は一定条件を満たすことで、永住権(Permanent Residency)申請が可能です。

PR申請の目安条件

PR取得後は強制貯蓄制度(CPF)への加入義務が発生します。給与の一部がCPFに積み立てられます。

4. 転職・雇用主変更時の手続き

転職の場合、新しい雇用主が新規EP申請を行う必要があります。既存のEPは自動的には引き継がれません。

転職先でのEP承認前に現職を辞めると、無就労状態でシンガポール滞在ができなくなるリスクがあります。タイミングの調整が重要です。


EP更新の手続きと期間

更新の条件

項目内容
更新申請開始時期EP有効期限の3ヶ月前から可能
更新手数料SGD 225(ただし公式で最新料金を確認)
更新時の審査COMPASS評価が再度適用される
給与確認最新の基準(SGD 5,600以上)を満たしているか再確認
有効期間(更新後)最長3年

更新時の注意点


日本の就労ビザとの完全比較

比較項目シンガポール EP日本(技術・人文知識・国際業務)
申請主体雇用主(原則本人は申請不可)雇用主または本人が申請可
最低給与基準月給SGD 5,600以上(約61万円、明確な数値基準)日本人と同等以上(明確な全国統一下限なし)
審査方式COMPASS:2段階(給与+ポイント制)在留資格該当性・上陸許可基準(ポイント制は高度人材のみ)
審査の透明性COMPASSで定量的スコア公開審査基準の大半が非公開
求人広告義務あり(MyCareersFuture掲載義務)なし
有効期間(初回)最大2年1年・3年・5年(複数選択肢)
長期ビザ特例IT不足スキル:最大5年高度専門職:最大5年(70点以上)
家族帯同別途DP/LTVP申請(給与条件あり)「家族滞在」在留資格(扶養条件)
副業・兼務Secondary Directorship制度(届出必須)原則として在留資格の範囲内のみ
更新の難易度給与+COMPASS基準を毎回確認比較的更新しやすい
永住権への道EP→PR申請(6ヶ月〜、通常2年以上)10年在留→永住申請(高度人材は1〜3年)
国家戦略外国人採用に現地採用優先義務外国人採用に日本人優先義務なし

S Pass・ONE Pass・EntrePassとの比較

シンガポールで外国人が就労するための主なビザを比較:

比較項目EP(Employment Pass)S Pass(技能職)ONE Pass(起業家)EntrePass(起業家)
対象者専門職・管理職・経営者技能職・中級技術者スタートアップの起業家シンガポール法人設立後の起業家
最低月給SGD 5,600以上SGD 2,650〜3,150なし(事業計画重視)なし(政府支援による)
申請主体雇用主雇用主本人(申請者が経営者)本人
初回有効期間最大2年最大2年最大1年最大2年
COMPASS審査ありあり(簡易版)なしなし
永住権申請可能(6ヶ月〜)可能(数年後)難しい難しい
家族帯同DP/LTVP申請可限定的限定的限定的
要件の透明性高い(COMPASSで明確)中程度低い(事業計画評価)低い(政府判断)

選択の目安


日本人が注意すべき7つのポイント

⚠️ 注意1:給与が高いだけでは通らない(COMPASS導入後の変化)

2023年以前のEPは最低月給のみが主要審査基準でしたが、COMPASS導入により給与+企業の採用姿勢+多様性+戦略性が複合評価されます。

月給SGD 5,600を超えていても、COMPASSで40点未満なら不合格になります。

⚠️ 注意2:日系企業のC3スコア(多様性)が不利になる

日系企業のシンガポール支社は日本人が集中しがちで、COMPASSのC3(企業内国籍多様性)スコアが低くなります。

日本人の割合が30%を超える企業では、追加のボーナスポイント(スキル不足職種等)がないと40点に到達しないケースがあります。

赴任前に必ず雇用主にCOMPASSスコアの試算を依頼してください

⚠️ 注意3:英語版卒業証明書は「大学から直接取り寄せ」が最速

日本語の書類を翻訳すると時間がかかります。英語版の卒業証明書・成績証明書を大学から直接取り寄せるのが最速(通常1〜2週間)。

MOM認定翻訳者による公証が必要な場合、さらに時間がかかります。

⚠️ 注意4:申請は雇用主しかできない(原則)

日本の就労ビザと異なり、EP申請は本人が単独で申請できません。内定が決まった後、雇用主がEP eServiceから申請します。

中小企業・スタートアップが雇用主の場合、HR部門がCOMPASS・公平採用義務を理解していないリスクがあります。内定時に雇用主の理解度を確認してください。

⚠️ 注意5:IPAの6ヶ月有効期間を超過しないよう注意

IPA(内定承認書)受領後、6ヶ月以内にシンガポール入国・EPカード取得を完了する必要があります。

日本での退職・引越し・ビザ取得を計画する際は、この期間を厳守してください。超過すると再申請が必要になります。

⚠️ 注意6:転職時は新規EP申請が必須

転職時は新しい雇用主が新規EP申請を行う必要があります。既存のEPは自動的には引き継がれません。

転職先でEP承認前に現職を辞めると、無就労状態でシンガポール滞在ができなくなるリスク。タイミング調整が重要です。

⚠️ 注意7:給与・住所・職種変更はMOMへの報告義務

給与・住所・職種・パスポート・居住地・雇用主情報のいずれかが変わった場合、MOMへの通知義務があります。

日本では住所変更を役所に届けることに慣れていますが、シンガポールではビザ管轄機関(MOM)への別途通知が必須。怠ると法令違反のリスク。


よくある質問(FAQ)

Q1:月給SGD 5,600を少し下回る場合、申請はできますか?

A:いいえ。Stage 1(給与基準)をクリアしなければ、Stage 2(COMPASS評価)に進めません。

月給がSGD 5,600未満の場合は、S Pass(技能職向けビザ)の申請を検討してください。S Passの最低月給はセクターにより異なりますが、一般的にはSGD 2,650〜3,150です。

ただし、S Passでは永住権申請が難しくなります。


Q2:日系企業への赴任でEP取得が難しいと聞きましたが、何が理由ですか?

A:COMPASSのC3(多様性)スコアが低くなるためです。

日系企業のシンガポール支社は、日本本社からの駐在員が集中しやすく、同一国籍の外国人比率が高くなります。C3スコアが低いと、C1(給与)やC2(学歴)で高得点を取っても、全体で40点に到達しないケースがあります。

対策:赴任前に現地法人のCOMPASSスコア試算を雇用主に依頼し、現実的な承認可能性を確認してください。


Q3:UP取得後、配偶者もシンガポールで働きたい場合はどうしますか?

A:以下のステップで対応します:

  1. Dependent’s Pass(DP)申請:配偶者の帯同ビザ取得(EP保持者の月給がSGD 6,000以上が条件)
  2. Letter of Consent(LOC)申請:配偶者がシンガポールで就労するためのLOC取得(MOM申請、DP保持者が申請者)
  3. 配偶者自身の就職:別の企業で新規にEP申請するか、S Passで就職するか、個人事業主として就業

配偶者が企業に就職する場合は、その企業がEP/S Pass申請主体となります。


Q4:40代でEP申請するのは不利ですか?年齢により給与基準が上がるのですか?

A:部分的に不利です。理由は以下の通り:

対策:40代でEP取得を目指す場合は、以下のいずれかが有効:


Q5:EP取得から永住権(PR)申請まで、どのくらいの期間が必要ですか?

A:最短6ヶ月から、一般的には2年以上が目安です。

理由

PR申請に有利な条件


Q6:却下された場合、アピール(異議申し立て)はできますか?

A:はい。却下通知から3ヶ月以内にMOMへ書面でアピール(異議申し立て)できます。

アピール時のポイント

ただし、アピール成功率の詳細情報はMOMが公開していません。重要な場合は弁護士に相談してください。


Q7:シンガポールEP取得後、日本での税務はどうなりますか?二重課税を避ける方法は?

A:シンガポール・日本の租税条約により二重課税が回避されます。

基本的な流れ

  1. シンガポール:EP取得後、MOMに登録し「税務居住者」ステータスを取得
  2. 給与はシンガポール国内源泉なので、シンガポールで所得税を納付
  3. 日本:シンガポール納税分をクレジット(外国税額控除)として適用
  4. 日本での確定申告で「シンガポール源泉の給与」として申告

具体的対応

詳細は日本の税理士・シンガポールの税理士に相談を推奨。特に家族構成・不動産所有状況により対応が異なります。


まとめ:自分でできることvs専門家に相談すべきこと

✅ 自分でできること

以下のステップは個人で実施可能:

🤝 専門家に相談すべきこと

以下は個人の状況により異なるため、専門家の相談が推奨:


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本記事はシンガポール人材省(MOM)Employment Pass公式ページの情報(2026年3月20日確認)に基づいています。法律・税制は変更される可能性があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。

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※ この記事の情報は2026年3月20日時点のものです。最新情報は各国政府の公式サイトをご確認ください。当サイトは情報提供を目的としており、法的助言を行うものではありません。