Employment Pass(EP)とは
シンガポール人材省(MOM)が発行するEmployment Pass(EP)は、外国人の**専門職・管理職・経営幹部・技術者(Professionals, Managers, Executives and Technicians)**がシンガポールで合法的に就労するための就労ビザです。
日本でいう「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に相当しますが、審査の透明性・スコアリング方式・雇用主への義務付けなど、仕組みは大きく異なります。シンガポールへの転職・赴任・起業を検討している日本人にとって、EPの理解は最初の必須ステップです。
出典: シンガポール人材省(MOM)公式ページ(https://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/employment-pass)、最終更新2026年3月4日
税率・条件・費用(具体的な数字)
EPの申請・取得に関わる主な数字・条件を整理します。
● 最低月給要件(Stage 1)
| 条件 | 金額 |
|---|---|
| 一般職種の最低月給 | SGD 5,600/月以上 |
| 金融セクター | SGD 5,600以上(セクターによりさらに高い基準あり) |
| 不足スキルを持つ経験豊富なIT専門職(2023年9月〜) | 5年間の長期EPが取得可能 |
※SGD 1 = 約110円換算でSGD 5,600 = 約61.6万円/月
● COMPASS評価(Stage 2)
EPの審査は2段階制です。
- Stage 1:最低月給(SGD 5,600)のクリア
- Stage 2:**COMPASS(Complementarity Assessment Framework)**によるポイント審査
COMPASSでは以下の要素が評価されます:
- 候補者の月給(同業種・同職種の地場企業平均との比較)
- 候補者の学歴・資格
- 企業の多様性(シンガポール人・外国人比率)
- 企業の地場人材育成への貢献度
- 戦略的経済優先度(政府指定分野)
合格には合計40ポイント以上が必要です(各カテゴリー最大20ポイント)。
● 有効期間
| 区分 | 有効期間 |
|---|---|
| 通常EP | 最大2年間(初回) |
| 更新後EP | 最大3年間 |
| 不足スキルIT専門職EP(2023年9月〜) | 最大5年間 |
● 家族帯同
EPホルダーは配偶者・子供などの家族をシンガポールへ帯同できる場合があります(Dependant’s Pass等)。ただし帯同可能な家族の範囲や条件は別途審査があります。
申請・登録の手順
EPの申請は**雇用主(企業側)**が行うのが原則です。個人単独での申請はできません。
ステップ1:求人広告の掲載(Fair Considerationの義務)
雇用主はEP申請前に、MyCareersFuture(シンガポール政府公式求人ポータル)へ求人広告を掲載し、すべての求職者(シンガポール人を含む)を公平に検討したことを証明しなければなりません。これは**FCF(Fair Consideration Framework)**と呼ばれる義務で、外国人優遇採用の防止が目的です。
ステップ2:Self-Assessment Tool(SAT)で事前確認
MOM公式の「Employment/S Pass Self-Assessment Tool(SAT)」を使い、申請前に合格可能性を無料でセルフチェックできます。
ステップ3:必要書類の準備
主な必要書類:
- パスポートのコピー
- 最新の学歴証明書(大学卒業証書など)
- 職務経歴書・雇用契約書
- 企業登録書類(雇用主側)
- その他MOMが求める追加書類
ステップ4:Employment Pass eServiceで申請
雇用主がEmployment Pass eService(MOM公式オンラインシステム)にログインし、申請フォームを提出します。
ステップ5:審査・結果確認
申請後、eServiceまたは「Check work pass and application status」機能で審査状況を確認します。
ステップ6:却下された場合のアピール
却下された場合、一定条件下でアピール(異議申し立て)が可能です。アピールできる主体・タイミング・提出方法はMOM公式ページに明記されています。
ステップ7:更新・変更・キャンセル
- 更新:期限前にeServiceで申請
- 変更通知:会社名・住所・職種・パスポート情報・給与・居住地変更はMOMへ届出義務あり
- 取消:退職・帰国時にキャンセル手続きが必要
日本との違い・対比
対比表:シンガポールEP vs 日本の就労在留資格
| 比較項目 | シンガポール EP | 日本(技術・人文知識・国際業務) |
|---|---|---|
| 最低賃金要件 | 月給SGD 5,600以上(約62万円) | 法定最低賃金以上(業種・職種によるが明確な全国統一下限なし) |
| 審査方式 | 2段階(最低月給+COMPASSスコア) | 学歴・職歴・職務内容の適合性審査(ポイント制は高度人材向けのみ) |
| 申請主体 | 雇用主が申請(原則) | 雇用主または本人が申請可能 |
| 求人広告義務 | あり(MyCareersFuture掲載必須) | なし(採用プロセスへの介入なし) |
| 有効期間(初回) | 最大2年 | 最大5年(3年・1年もあり) |
| 長期ビザ特例 | IT不足スキル人材:最大5年 | 高度専門職:最大5年(高度人材ポイント制) |
| 家族帯同 | 別途Dependant’s Pass等が必要 | 「家族滞在」在留資格(別途申請) |
| 副業・兼務 | Secondary Directorship制度あり | 原則として在留資格の範囲内での就労のみ |
| 審査の透明性 | COMPASSで定量的スコア明示 | 審査基準は非公開部分が多い |
ポイント制の違い
日本でも高度人材ポイント制(高度専門職1号・2号)が存在し、70点以上で優遇措置が受けられます。しかしシンガポールのCOMPASSは一般EPすべてに適用される標準審査プロセスであり、対象範囲が大きく異なります。
日本人が注意すべきポイント
⚠️ 注意1:「給与が高ければOK」は過去の話
2023年以前のEPは最低月給のみが主な審査基準でしたが、現在は**COMPASSスコア(Stage 2)**が必須です。月給がSGD 5,600を超えていても、COMPASSで40点未満であれば不合格になります。日本から転職する場合、雇用主がCOMPASSの各項目を事前に確認・準備する必要があります。
⚠️ 注意2:申請は雇用主が行う
日本の就労ビザと異なり、EP申請は原則としてシンガポールの雇用主側の責任です。内定が決まっても雇用主がCOMPASSや書類要件を理解していないと申請が遅延・却下されるリスクがあります。特に中小企業・スタートアップに転職する際は注意が必要です。
⚠️ 注意3:MyCareersFutureへの広告掲載が雇用主の義務
雇用主がこのステップを省略・形式的にしか行わなかった場合、MOMから指摘を受ける可能性があります。日本人候補者側も、雇用主がFCF要件を正しく理解しているか事前確認することをおすすめします。
⚠️ 注意4:転職・退職時のキャンセル手続き
EPは退職・転職時に必ずキャンセルまたは新規申請が必要です。日本の在留資格変更とは異なり、雇用主が変わればEPも原則として新規申請となります。EP保有中に退職した場合の在留猶予期間にも注意が必要です。
⚠️ 注意5:IT専門職の5年EPは「不足スキル限定」
2023年9月から導入された5年EPは、すべてのIT専門職が対象ではなく、「スキルが不足している(in shortage)と認定された職種」に限定されます。自分の職種が対象かどうかはMOM公式情報で事前確認が必要です。
⚠️ 注意6:役員兼任(Secondary Directorship)は別途手続きが必要
EP保有者が別会社の取締役に就任する場合(兼業・兼任)、MOMへの届出と承認が必要です。日本では副業・兼業は雇用主の就業規則次第ですが、シンガポールではビザ上の法的手続きが伴います。
まとめ・次のアクション
【ブロック1: 自分でできるステップチェックリスト】
- ① MOM公式SATにアクセスし、Employment/S Pass Self-Assessment Toolで自分の月給・学歴・職種を入力して合格可能性を無料チェック
- ② 自分の月給がSGD 5,600以上かどうかを確認し、オファーレター・雇用契約書の給与条件を確認する
- ③ 雇用主(採用企業)に対し「MyCareersFuture への求人掲載は完了しているか」「COMPASSスコアの試算はしたか」を確認する
- ④ パスポート・卒業証書・職務経歴書など必要書類リストをMOM公式ページで確認し、不足書類を準備する
- ⑤ 自分がIT専門職の場合、2023年9月導入の5年EP対象職種に自分の職種が該当するかMOM公式情報で確認する
- ⑥ EP取得後に家族を帯同する予定がある場合、Dependant’s Passの申請要件を別途確認する
- ⑦ 転職・退職時には旧EPのキャンセル手続きと新規EP申請のタイミングを事前にスケジュール化する
【ブロック2: 自分では調べにくい・状況によって異なること】
以下の疑問は、個人の状況(職種・年収・企業規模・国籍・家族構成)によって答えが異なるため、一般的な情報だけでは判断が困難です:
- 「自分の職種のCOMPASSスコアは何点になるか?雇用企業の多様性スコアは影響しているか?」
- 「IT専門職の5年EP対象職種リストに、自分の具体的な業務内容は含まれるか?」
- 「シンガポールEP取得後の税務居住者ステータスと、日本の住民税・社会保険の二重負担はどう整理するか?」
- 「スタートアップや設立間もない企業がスポンサーになる場合、COMPASSの企業側スコアに不利はあるか?」
- 「副業・Secondary Directorshipとして別法人の取締役に就任する際の具体的な手続きフローは?」
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【ブロック3: 次に読むべき関連記事テーマ】
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この記事はシンガポール人材省(MOM)就労ビザ(EP)の公式情報を基に作成しています。法律・税制は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。