この記事のポイント
- フィリピンでの法人設立はSEC(証券取引委員会)への登録が必要で、設立期間は約2〜4週間
- 外国資本100%で設立可能だが、Foreign Investment Negative Listによる業種制限あり
- 最低払込資本金は外資100%企業の場合200,000 USD(約31,897,920円) (小規模企業を除く)
本記事はフィリピンSEC、DTI(貿易産業省)の公式情報(2026年3月確認)に基づいています。
フィリピンの法人形態
株式会社(Stock Corporation)
最も一般的な法人形態です。株主は最低2名(改正会社法により1名でも可能に)で、取締役会による経営が行われます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 株主数 | 1名以上(One Person Corporation)〜15名 |
| 取締役 | 最低1名(OPCの場合)〜15名 |
| 最低資本金 | 内資企業は制限なし、外資企業は200,000 USD(約31,897,920円) |
| 外資比率 | ネガティブリスト外の業種は100%可能 |
One Person Corporation(OPC)
2019年の改正会社法で導入された1人株式会社です。個人が唯一の株主兼取締役となれますが、外国人の場合は一定の制限があります。
支店(Branch Office)
外国法人のフィリピン支店として設立します。本社と同一の法人格で、フィリピン国内で直接事業活動を行えます。最低送金資本金は200,000 USD(約31,897,920円) です。
駐在員事務所(Representative Office)
マーケティング・情報収集のみ可能で、収益活動は行えません。年間送金額は最低30,000 USD(約4,784,688円) です。
外資規制(Foreign Investment Negative List)
フィリピンの外資規制は、大統領令で定期的に更新される**Foreign Investment Negative List(FINL)**に基づきます。
リストA(憲法・法律による制限)
| 業種 | 外資上限 |
|---|---|
| マスメディア | 0%(完全禁止) |
| 小規模小売業(資本2,500,000 PHP(約7,535,500円) 未満) | 0% |
| 専門職(弁護士、会計士等) | 0% |
| 公共事業 | 40% |
| 教育機関 | 40% |
| 広告 | 30% |
リストB(安全保障・その他の理由による制限)
中小企業向け(払込資本200,000 USD(約31,897,920円) 未満)の業種では外資比率40%の制限があります。
SEC登録の手順
Step 1: 会社名の予約(1〜2営業日)
SEC Company Registration System(CRS)でオンライン申請します。希望する社名が既存企業と重複していないか確認されます。
Step 2: 定款・付属定款の作成
定款(Articles of Incorporation)と付属定款(By-Laws)を作成します。弁護士によるレビューを推奨します。
Step 3: SECへの登録申請(3〜5営業日)
SEC CRSからオンラインで提出します。必要書類は以下の通りです。
- 定款・付属定款
- 銀行発行の払込資本金証明書(Treasurer’s Affidavit)
- 取締役・役員の身分証明書
- 外資企業の場合:投資家の本国での登記簿謄本(公証・認証済み)
Step 4: BIR(内国歳入庁)登録(1〜2営業日)
税務登録番号(TIN)の取得、領収書・請求書の印刷許可を申請します。
Step 5: 地方自治体での事業許可取得(5〜10営業日)
事業所所在地の市区町村でBusiness Permit(Mayor’s Permit)を取得します。
Step 6: SSS・PhilHealth・Pag-IBIG登録
従業員の社会保険関連の登録を行います。
費用の目安
| 費目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| SEC登録料 | 2,000 PHP(約6,028円) 〜 | 資本金額に応じて変動 |
| 会社名予約 | 100 PHP(約301円) | オンライン申請 |
| BIR登録 | 500 PHP(約1,507円) | Documentary Stamp Tax含む |
| Business Permit | 5,000 PHP(約15,071円) 〜 | 地域・業種により異なる |
| 弁護士費用 | 50,000 PHP(約150,710円) 〜 | 定款作成・法務サポート |
| 会計士費用 | 20,000 PHP(約60,284円) 〜 | 設立時の会計処理 |
| 合計目安 | 100,000 PHP(約301,420円) 〜 | 専門家費用込み |
日本人が知っておくべき注意点
60/40ルール
憲法上、「国土」「天然資源」「公共事業」等の分野では、フィリピン人が60%以上の資本を保有する必要があります。不動産の土地所有もフィリピン人・フィリピン法人(60%以上フィリピン資本)に限定されます。
ダミー法(Anti-Dummy Law)
外資規制を回避するためにフィリピン人名義を使う「名義貸し」は、Anti-Dummy Law(共和国法第7042号)により厳しく罰せられます。罰則は禁固5〜15年です。
PEZA登録の検討
PEZA(Philippine Economic Zone Authority)に登録すると、法人税の4年〜8年間の免税、輸入設備の関税免除などの優遇措置を受けられます。IT-BPO、製造業で検討価値があります。
他のASEAN諸国との比較
| 項目 | フィリピン | シンガポール | ベトナム | タイ |
|---|---|---|---|---|
| 設立期間 | 2〜4週間 | 1〜2日 | 3〜5週間 | 4〜6週間 |
| 最低資本金(外資) | 200,000 USD(約31,897,920円) | 1 SGD(約124円) | なし(業種別) | 2,000,000 THB(約9,876,800円) |
| 法人税 | 25% | 17% | 20% | 20% |
| 外資100%可否 | 業種による | ほぼ全業種 | 業種による | 業種による |
よくある質問(FAQ)
Q1: 外国人1人でフィリピンに会社を設立できますか?
はい、One Person Corporation(OPC)制度を利用すれば、1人で法人を設立できます。ただし、外資100%の場合はネガティブリストの制限と最低資本金200,000 USD(約31,897,920円) の要件が適用されます。
Q2: バーチャルオフィスで登記できますか?
SEC登録には実際の事業所住所が必要です。コワーキングスペースの登記住所サービスを利用する場合は、当該施設がBusiness Permitを保有していることを確認してください。
Q3: 法人銀行口座の開設はどのくらいかかりますか?
SEC登録完了後、約1〜2週間です。BDO、BPI、Metrobankなどの主要銀行で開設可能です。外国人取締役のパスポート、SEC登録証、定款、BIR登録証が必要です。
Q4: 設立後に外資比率を変更できますか?
はい、SECへの定款変更届により外資比率の変更は可能です。ただし、変更後の比率がネガティブリストの制限内であることが必要です。
Q5: フィリピン法人の解散手続きはどのくらいかかりますか?
SEC、BIR、地方自治体への届出が必要で、通常6ヶ月〜1年程度かかります。税務調査の完了が前提となるため、未申告の税務があると更に時間がかかります。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- SECオンラインでの会社名予約と空き確認
- 事業計画の作成と法人形態の選定
- ネガティブリストでの業種確認
専門家に相談すべきこと:
- 定款・付属定款の起草と法務レビュー
- PEZA登録の適否判断と申請手続き
- 外資比率の設計と合弁パートナーの選定
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