マレーシアの法人税制度を完全解説。標準税率24%、中小企業の17%軽減税率、MIDA投資優遇制度(パイオニアステータス・ITA)、SST、日本との租税条約による二重課税回避まで2026年最新情報。
この記事のポイント
- マレーシアの法人税標準税率は24%。中小企業(SME)は課税所得RM15万まで15%、RM15万〜60万は**17%**の軽減税率
- **MIDA(投資開発庁)**の優遇制度で最大10年間の免税・投資控除(ITA)が利用可能
- **SST(売上税10%+サービス税8%)**は日本の消費税とは構造が異なる。GSTの再導入議論も継続中
- 日本とマレーシアの租税条約により、配当源泉税の上限は**0〜5%**に軽減
📌 この記事はLHDN(マレーシア内国歳入庁)、MIDA(投資開発庁)の公式情報(2026年3月22日確認)に基づいています。
マレーシア法人税の基本
税率構造
マレーシアの法人税(Corporate Income Tax)は、LHDN(Lembaga Hasil Dalam Negeri / 内国歳入庁)が管轄する連邦税です。
| 区分 | 課税所得 | 税率 |
|---|---|---|
| 大企業(標準) | 全額 | 24% |
| 中小企業(SME) | 最初のRM150,000 | 15% |
| 中小企業(SME) | RM150,001〜RM600,000 | 17% |
| 中小企業(SME) | RM600,001以上 | 24% |
SME(中小企業)の定義
以下の両方を満たす企業がSMEとして軽減税率の適用を受けられます。
- 払込資本金がRM250万以下
- 年間売上高がRM5,000万以下(2024年度から適用)
💡 日本との比較: 日本の法人税率は中小法人(所得800万円以下)で15%、大法人で23.2%ですが、地方税・事業税を含めた実効税率は約30%です。マレーシアは地方法人税がないため、表面税率≒実効税率であり、日本と比較して約6ポイント低い水準です。
課税所得の計算
課税対象
マレーシアの法人税は属地主義(Territorial Basis)を採用しています。原則としてマレーシア国内で発生した所得のみが課税対象です。
| 所得の種類 | 課税対象 |
|---|---|
| マレーシア国内の事業所得 | 課税 |
| マレーシア国内の投資所得 | 課税 |
| 海外からの送金所得 | 原則非課税(2024年改正で一部課税対象に) |
| 海外所得(未送金) | 非課税 |
⚠️ 2024年改正の重要点: 2024年1月から、海外からマレーシアに送金された所得(Foreign Source Income / FSI)が課税対象になりました。ただし、2026年末まではFSIの税率を**3%**とする経過措置が適用されています。
主な損金算入・損金不算入
損金算入可能:
- 事業運営に直接関連する費用
- 従業員の給与・福利厚生
- 減価償却費(税法上の率による)
- R&D費用(200%の特別控除あり)
- 訓練費用(人的資源開発基金への拠出)
損金不算入:
- 私的費用
- 法人税の未払い延滞金
- 違法行為に関連する罰金
- 接待費の50%(一部例外あり)
投資優遇制度
パイオニアステータス(Pioneer Status)
MIDAが認定する優遇制度で、特定の業種・活動に対して法人税の70〜100%免除が受けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 免除率 | 法定所得の70%(一般)〜100%(ハイテク等) |
| 期間 | 5年間(延長で最大10年) |
| 対象業種 | 製造業、農業加工、バイオテクノロジー、再生可能エネルギー等 |
| 申請先 | MIDA |
ITA(投資税額控除 / Investment Tax Allowance)
設備投資額に対して法人税を控除する制度。パイオニアステータスと択一。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除率 | 適格資本支出の60%(一般)〜100% |
| 期間 | 5年間 |
| 控除上限 | 法定所得の**70%**まで(残り30%には通常税率適用) |
再投資控除(Reinvestment Allowance / RA)
操業15年以上の製造業企業が工場の拡張・近代化に再投資する場合、適格資本支出の**60%**を控除可能。
ラブアン法人の税制
ラブアン島に設立した法人は、特別税制が適用されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引活動(Trading) | 監査済み純利益の3%、またはRM20,000の定額 |
| 非取引活動(Non-Trading) | 非課税 |
| ラブアン→本土の配当 | 非課税 |
詳しくはラブアン法人完全ガイド2026をご参照ください。
SST(売上税・サービス税)
マレーシアでは2018年にGST(物品サービス税6%)が廃止され、SST(Sales and Services Tax)が再導入されました。
売上税(Sales Tax)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準税率 | 10% |
| 軽減税率 | 5%(特定品目) |
| 非課税品目 | 食料品基本品目、医薬品等 |
| 登録義務 | 年間売上RM500,000超の製造業者 |
サービス税(Service Tax)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準税率 | 8%(2024年3月に6%→8%引上げ) |
| 据置き税率 | 6%(食品提供、通信、駐車場等) |
| 登録義務 | 年間売上RM500,000超の課税サービス提供者 |
日本の消費税との違い:
- 日本の消費税は全段階で課税(付加価値税方式)だが、SSTは単段階課税
- 売上税は製造段階のみ、サービス税はサービス提供段階のみ
- 仕入税額控除(Input Tax Credit)の仕組みがない
- 結果として、サプライチェーンが長いほど税の累積が起きやすい
詳しくはマレーシアSST完全ガイド2026をご参照ください。
源泉税
マレーシアから海外への支払いに対しては、源泉税(Withholding Tax)が課されます。
主な源泉税率
| 支払い内容 | 標準税率 | 日本との租税条約適用後 |
|---|---|---|
| ロイヤリティ | 10% | 10% |
| 利子 | 15% | 10% |
| 技術サービス料 | 10% | 0%(条件あり) |
| 配当 | なし(マレーシアは配当に源泉税なし) | 0% |
| 不動産譲渡益 | RPGT適用 | 条約による |
💡 マレーシアは配当に対する源泉税がゼロです。これは日本(20.315%)やシンガポール(0%・単層課税)、タイ(10%)と比較しても有利な点です。
確定申告と納税
申告期限
| 項目 | 期限 |
|---|---|
| 予定納税通知(CP204) | 事業年度開始前30日以内に提出 |
| 予定納税 | 毎月(12回分割) |
| 確定申告書(Form C) | 事業年度終了から7ヶ月以内 |
| e-Filing | LHDN MyTax ポータルで電子申告 |
予定納税(CP204)の注意点
マレーシアでは、事業年度開始前に予測課税所得を申告し、12回に分けて前払いする制度があります。実際の課税所得が予測を30%以上下回った場合はペナルティの対象外ですが、30%以上上回った場合は差額に対して10%のペナルティが課されます。
日本人が知っておくべき注意点
移転価格税制(Transfer Pricing)
マレーシアは移転価格税制を厳格に運用しています。日本の親会社との取引がある場合、独立企業間価格(arm’s length price)での取引が求められます。マレーシアの移転価格ガイドラインはOECDガイドラインに準拠しています。
日本・マレーシア租税条約
二重課税を避けるため、日本とマレーシアの間には租税条約が締結されています。
- 配当: マレーシアは源泉税ゼロ。日本側で外国税額控除は不要
- 利子: 10%(条約適用後)
- ロイヤリティ: 10%
- 事業所得: PE(恒久的施設)がなければ本国のみで課税
キャピタルゲイン課税
マレーシアでは一般的な株式譲渡益は非課税です(非上場株式の一部を除く)。ただし、不動産および不動産会社の株式譲渡には**RPGT(Real Property Gains Tax)**が適用されます。
| 保有期間 | 居住者 | 非居住者 |
|---|---|---|
| 3年以内 | 30% | 30% |
| 4年目 | 20% | 30% |
| 5年目 | 15% | 30% |
| 6年目以降 | 10% | 10% |
他のASEAN諸国との法人税比較
| 項目 | マレーシア | シンガポール | タイ | ベトナム | インドネシア |
|---|---|---|---|---|---|
| 標準税率 | 24% | 17% | 20% | 20% | 22% |
| SME軽減税率 | 15〜17% | 実質8.5%〜 | なし | なし | なし |
| 配当源泉税 | 0% | 0% | 10% | 0% | 0〜20% |
| キャピタルゲイン | 原則非課税 | 原則非課税 | 15〜20% | 20% | 22% |
| 間接税 | SST 8〜10% | GST 9% | VAT 7% | VAT 10% | VAT 11% |
| 投資優遇 | パイオニア等 | Pioneer等 | BOI恩典 | 優遇税率10% | Tax Holiday |
よくある質問(FAQ)
Q1: マレーシアで法人を設立したら、日本でも税金を払う必要がありますか?
マレーシア法人の所得に対してはマレーシアで法人税を納めます。日本の親会社が配当を受け取る場合は日本で課税されますが、外国税額控除により二重課税は調整されます。なお、タックスヘイブン対策税制(CFC税制)の適用がある場合は、マレーシア法人の所得が日本の親会社の所得に合算される可能性があります。
Q2: ラブアン法人の3%税率は今後も維持されますか?
2026年3月時点ではラブアン法人の3%税率は維持されていますが、OECDのBEPS2.0(グローバルミニマム税15%)の影響で将来的に見直される可能性が議論されています。
Q3: マレーシアの法人税は自分で申告できますか?
法的には可能ですが、予定納税(CP204)の計算や移転価格文書の作成は専門知識が必要です。現地の会計事務所への委託が一般的で、月額1,000 MYR(約40,324円) 〜3,000 MYR(約120,973円) 程度が相場です。
Q4: MIDAの投資優遇はどの業種で使えますか?
製造業、ハイテク産業、バイオテクノロジー、再生可能エネルギー、ハラル産業、観光業等が対象です。詳細はMIDAの公式サイトで業種別の優遇内容を確認してください。
Q5: 2024年のFSI課税でマレーシアの税制メリットは薄れましたか?
海外送金所得への課税は確かに変更点ですが、2026年末までの経過措置(3%税率)があり、また純粋な国内事業であれば影響はありません。ラブアン法人やマレーシア国内のみで事業を行う企業への影響は限定的です。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
✅ 自分でできること
- マレーシアの法人税率と日本の実効税率の比較
- MIDAの優遇制度の対象業種チェック
- SST登録義務の該当性判断(年間売上RM500,000基準)
⚠️ 専門家に相談すべきこと
- 移転価格文書の作成(日本の親会社との取引がある場合)
- パイオニアステータス/ITAの申請
- CFC税制(タックスヘイブン対策税制)の適用判断
- ラブアン法人設立のタックスストラクチャー設計
🔗 関連記事
- マレーシアSST完全ガイド2026 — 売上税10%・サービス税8%の詳細
- ラブアン法人完全ガイド2026 — 税率3%のオフショア法人
- マレーシアSdn Bhd設立ガイド2026 — 法人設立の具体的手順
この記事の情報は2026年3月22日時点のものです。マレーシアの税制は毎年の予算案(Budget)で改正される場合があるため、最新情報はLHDNおよびMIDAでご確認ください。