この記事のポイント
- インドネシアの雇用契約はPKWT(有期雇用) とPKWTT(無期雇用) の2種類。オムニバス法によりPKWTの上限が最長5年に延長
- 解雇には労使紛争解決機関(PHI)の承認が必要な場合があり、退職金は最大9ヶ月分の給与
- 2026年の最低賃金はジャカルタで月額5,396,760 IDR(約50,632円) (約5.4万円)
この記事はインドネシア労働省および雇用創出法(UU Cipta Kerja)の公式情報(2026年3月確認)に基づいています。
インドネシア労働法の概要
インドネシアの労働法は、2003年労働法(UU No.13/2003)を基盤とし、2020年の雇用創出法(オムニバス法 / UU No.11/2020)および2023年の改正政令(PP No.35/2021の改正版)で大幅に改正されました。日本と比べて労働者保護が手厚く、解雇が極めて困難な点が最大の特徴です。
雇用契約の種類
PKWT(有期雇用契約)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Perjanjian Kerja Waktu Tertentu |
| 最長期間 | 5年(オムニバス法により延長) |
| 延長 | 契約満了後の更新は1回まで |
| 対象業務 | 一時的な業務、季節業務、新製品・新事業 |
| 試用期間 | 設定不可 |
| 契約終了時 | 補償金(uang kompensasi)の支払い義務あり |
PKWTT(無期雇用契約)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Perjanjian Kerja Waktu Tidak Tertentu |
| 期間 | 無期限 |
| 試用期間 | 最大3ヶ月 |
| 解雇 | 厳格な法的手続きが必要 |
| 退職金 | 法定退職金の支払い義務あり |
最低賃金制度
インドネシアの最低賃金は州ごとに異なり、毎年改定されます。
2026年の主要都市の最低賃金
| 州・都市 | 月額最低賃金(IDR) | 日本円換算 |
|---|---|---|
| ジャカルタ特別州 | 5,396,760 IDR(約50,632円) | 約5.4万円 |
| 西ジャワ州(カラワン) | 5,530,000 IDR(約51,882円) | 約5.5万円 |
| 東ジャワ州(スラバヤ) | 4,975,000 IDR(約46,675円) | 約5.0万円 |
| バリ州 | 3,100,000 IDR(約29,084円) | 約3.1万円 |
| 中部ジャワ州 | 2,450,000 IDR(約22,986円) | 約2.5万円 |
最低賃金の算定方法
オムニバス法により、最低賃金の年間上昇率は以下の計算式で決定されます:
上昇率 = 経済成長率 × インフレ率 × 一定係数
これにより、以前のような大幅な引き上げ(年10〜20%)は抑制されています。
労働時間と休暇
法定労働時間
| パターン | 1日あたり | 週あたり | 備考 |
|---|---|---|---|
| 6日勤務 | 7時間 | 40時間 | 土曜半日を含む |
| 5日勤務 | 8時間 | 40時間 | 一般的なオフィス |
残業規制
- 残業は1日最大4時間、週最大18時間
- 残業手当:最初の1時間は時給の1.5倍、以降は2倍
- 残業には書面による従業員の同意が必要
年次有給休暇
- 勤続1年以上で年12日間の有給休暇
- 連続6年勤務後に長期休暇(2ヶ月)の権利あり(就業規則による)
祝日・休日
インドネシアの国民の祝日は年間16日前後。イスラム暦に基づく祝日は毎年日付が変わります。
解雇規制と退職金
解雇の手続き
インドネシアで従業員を解雇するのは、日本以上に困難です。
- まず労使協議を行い、合意による解約を試みる
- 合意できない場合、労使紛争解決機関(PHI) に調停を申し立て
- PHIの決定に不服の場合は産業関係裁判所に提訴
法定退職金(Uang Pesangon)
| 勤続年数 | 退職金(月給の何ヶ月分) |
|---|---|
| 1年未満 | 1ヶ月分 |
| 1〜2年 | 2ヶ月分 |
| 2〜3年 | 3ヶ月分 |
| 3〜4年 | 4ヶ月分 |
| 4〜5年 | 5ヶ月分 |
| 5〜6年 | 6ヶ月分 |
| 6〜7年 | 7ヶ月分 |
| 7〜8年 | 8ヶ月分 |
| 8年以上 | 9ヶ月分 |
会社都合の解雇では、この退職金に加えて勤続功労金(UPMK) と権利補償金が上乗せされます。
日本人が知っておくべき注意点
日本の労働法との違い
- 解雇予告手当:日本は30日前の予告で足りるが、インドネシアはPHIの承認が必要
- 退職金:日本は法定義務ではないが、インドネシアは法定義務
- 有期雇用:日本は3年(専門職5年)が上限、インドネシアは5年
- 試用期間:日本の慣行(3〜6ヶ月)は認められるが、インドネシアのPKWTでは試用期間を設けられない
外国人の雇用
日本人をインドネシアで雇用する場合、RPTKA(外国人雇用計画書) の承認とIMTA(外国人雇用許可)が必要です。また、外国人1名につきインドネシア人の雇用が求められる「1対1ルール」があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. インドネシアで従業員を即日解雇できますか?
原則としてできません。犯罪行為や重大な就業規則違反であっても、労使協議と法的手続きが必要です。実務的には「合意退職(mutual agreement)」の形で退職金を上乗せして合意する方法が一般的です。
Q2. THR(レバランボーナス)とは何ですか?
THR(Tunjangan Hari Raya)は、イスラム暦のレバラン(断食明け大祭)前に支払う法定ボーナスです。勤続1年以上の従業員には月給1ヶ月分、1年未満の場合は勤続月数に応じた按分額を支払う義務があります。
Q3. インドネシアの社会保険制度は?
BPJS Ketenagakerjaan(労働社会保障)とBPJS Kesehatan(健康保険)への加入が義務です。雇用主負担は給与の約10〜12%、従業員負担は約3〜4%です。
Q4. リモートワーク(在宅勤務)の法的規定はありますか?
2024年時点でリモートワークに特化した法律はありませんが、就業規則(Peraturan Perusahaan)で規定することが可能です。労働時間と残業の管理義務は在宅勤務でも適用されます。
Q5. 労働組合は一般的ですか?
はい。インドネシアでは労働組合の結成が法的に保護されており、特に製造業では労働組合の影響力が強いです。ストライキも合法で、事前通告(7日前)を条件に認められています。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- 労働法の基本的な理解と就業規則の素案作成
- 最低賃金の確認と給与体系の設計
- BPJS(社会保険)の加入手続き
専門家に相談すべきこと:
- 就業規則(Peraturan Perusahaan)の作成と労働省への届出
- 解雇手続きと退職金の計算
- 外国人雇用許可(RPTKA/IMTA)の取得
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