この記事のポイント
- インドネシアで外国人が設立できる法人は主にPT PMA(外資法人)、日本人が現地パートナーと組むならPT PMDN(内資法人)、営業活動不可だが市場調査に適した駐在員事務所(KPPA) の3種類
- PT PMAの最低投資額は10,000,000,000 IDR(約93,820,000円) (約1億円)、払込資本金は2,500,000,000 IDR(約23,455,000円) 以上が原則
- 2024年施行のオムニバス法(雇用創出法)により、ネガティブリスト(投資規制業種リスト)が大幅に緩和された
この記事はBKPM(インドネシア投資調整庁)およびOSS(Online Single Submission)の公式情報(2026年3月確認)に基づいています。
インドネシアの法人種別の概要
インドネシアで事業を展開する外国企業・個人には、大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれの特徴を理解したうえで、事業規模・業種・予算に合った形態を選ぶことが重要です。
3種類の法人形態の比較表
| 項目 | PT PMA(外資法人) | PT PMDN(内資法人) | 駐在員事務所(KPPA) |
|---|---|---|---|
| 外資比率 | 最大100%(業種による) | 0%(全額インドネシア資本) | 外国本社の出先 |
| 最低投資額 | IDR 100億(約1億円) | 制限なし | 制限なし |
| 最低払込資本金 | IDR 25億(約2,500万円) | IDR 5,000万(約50万円) | なし |
| 営業活動 | 可能 | 可能 | 不可 |
| 収益活動 | 可能 | 可能 | 不可 |
| 設立期間 | 1〜3ヶ月 | 2〜4週間 | 2〜4週間 |
| 外国人雇用 | 可能(RPTKA必要) | 制限あり | 最大3名 |
PT PMA(外資法人)の詳細
設立要件
PT PMA(Penanaman Modal Asing)は、外国人が直接出資・経営できる法人形態です。日本企業のインドネシア進出で最も一般的な形態です。
基本要件:
- 最低投資額:10,000,000,000 IDR(約93,820,000円) (土地・建物を除く)
- 最低払込資本金:2,500,000,000 IDR(約23,455,000円)
- 取締役1名以上、コミサリス(監査役)1名以上
- OSSシステムでのNIB(事業者番号)取得が必須
ネガティブリスト(投資規制業種)
2021年施行の大統領令2021年第10号(オムニバス法関連)により、従来のネガティブリストは「優先リスト」と「条件付き開放リスト」に再編されました。
- 完全開放:製造業、IT、コンサルティングなど多くの業種で外資100%が可能
- 条件付き:小売業(外資比率67%まで)、建設業(外資比率67%まで)など
- 外資禁止:アルコール製造、カジノ、一部の天然資源採掘
設立手続き
- 会社名の予約(AHU Onlineで申請)
- 定款の公証人認証
- 法務人権省への登記
- OSSでのNIB取得
- 事業許可(業種別ライセンス)取得
- 税務登録(NPWP)取得
- BPJS(社会保険)登録
PT PMDN(内資法人)の詳細
PT PMDN(Penanaman Modal Dalam Negeri)は、インドネシア国籍者のみが出資する法人です。日本人がインドネシア人配偶者と共同で事業を行う場合などに利用されます。
メリットとリスク
メリット:
- 最低資本金が50,000,000 IDR(約469,100円) と低い
- ネガティブリストの制限を受けない
- 設立手続きがPT PMAより簡素
リスク:
- 外国人は株主になれない(ノミニー契約は違法リスクあり)
- 経営権の保護が法的に弱い
- 紛争時に外国人の立場が不利
駐在員事務所(KPPA)の詳細
KPPA(Kantor Perwakilan Perusahaan Asing)は、外国企業の市場調査・連絡事務所として機能します。
- 営業活動・収益活動は一切不可
- 外国人スタッフは最大3名まで
- 設立は比較的容易で、BKPMへの届出で完了
- 有効期間は3年(更新可能)
日本人が知っておくべき注意点
日本の制度との違い
- インドネシアには「合同会社(LLC)」に相当する形態がない。全て「PT(Perseroan Terbatas = 有限責任会社)」
- 最低資本金が日本(1円起業可能)と比べて格段に高い
- 外国人取締役は必ずKITAS(一時滞在許可)が必要
ノミニー問題
インドネシア人名義で会社を設立し、裏で外国人が経営する「ノミニー契約」は法的に無効です。発覚した場合、会社の閉鎖や刑事罰の対象となります。
オムニバス法の影響
2020年成立・2024年改正のオムニバス法(雇用創出法)により、投資規制が大幅に緩和されました。特にIT、製造業、教育分野での外資開放が進んでいます。
他の選択肢との比較
近隣国での法人設立と比較すると、インドネシアのPT PMAは最低資本金が高い一方、市場規模(人口2.8億人)は圧倒的です。
| 比較項目 | インドネシア PT PMA | マレーシア Sdn Bhd | シンガポール Pte Ltd |
|---|---|---|---|
| 最低資本金 | IDR 25億(約2,500万円) | MYR 1(約35円) | SGD 1(約113円) |
| 設立期間 | 1〜3ヶ月 | 2〜4週間 | 1〜3日 |
| 法人税率 | 22% | 24% | 17% |
| 市場人口 | 2.8億人 | 3,300万人 | 600万人 |
詳しい比較は ASEAN各国の法人設立比較ガイド をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. PT PMAは1人でも設立できますか?
いいえ。インドネシア会社法では、PT(有限責任会社)の設立には最低2名の株主が必要です。ただし、2名とも外国人・外国法人で構いません。日本の親会社と個人の2名での設立が一般的です。
Q2. PT PMAの設立費用はいくらですか?
公証人費用、政府手数料、代行業者費用を含めて、30,000,000 IDR(約281,460円) 〜80,000,000 IDR(約750,560円) (約30〜80万円)が目安です。これに加えて最低払込資本金2,500,000,000 IDR(約23,455,000円) が必要です。
Q3. 駐在員事務所から PT PMA への変更はできますか?
直接の「変更」はできません。PT PMAを新規設立し、駐在員事務所を閉鎖する手続きが必要です。移行期間は通常2〜3ヶ月です。
Q4. どの業種でも外資100%が可能ですか?
いいえ。オムニバス法により多くの業種が開放されましたが、小売業、建設業、通信業などは外資比率に上限があります。最新のネガティブリスト(大統領令2021年第10号)を必ず確認してください。
Q5. インドネシアの法人設立に現地渡航は必要ですか?
OSSシステムの導入により一部の手続きはオンライン化されていますが、公証人による定款認証、銀行口座開設、KITAS取得には現地渡航が必要です。通常2〜3回の渡航が必要です。
まとめ:自分でできること vs 専門家に相談すべきこと
自分でできること:
- 事業計画の策定と法人形態の選択
- OSSポータルでの情報収集
- ネガティブリストでの業種確認
専門家に相談すべきこと:
- 具体的な定款作成と公証人手続き
- 税務戦略(移転価格、PE認定リスク)
- 労働許可(RPTKA・IMTA)の取得
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